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 僕のダチョウに荷物を載せて、ハタさんたちと僕はハタ屋に向かった。このダチョウも働き者だよね。せっかくだから、自宅にある物を少しダチョウに積んで持って帰ろうと思う。

 まあ、荷物と言ってもそんなにないんだけどね。漬物ができてるからその壺と、小分けにした瓶をいくつか、だけだ。

 ハタ屋でハタさんと別れて自宅へ行き、それからノリーナさんとノッチと一緒にカワさんのところへ報酬を届けに行った。

「ミツヒコさーん!」

 と、元気に現れたカワさんだったが、ノリーナさんとノッチがいるのを見て、いつも通りの静かな人に戻った。なんだろう、この人時々すごく快活を通り越して元気になるけど、ほかの人の前では静かな人だよね。

「先日の革製品の報酬をお持ちしました。デュデュが留守にしていて申し訳ありませんでした」

「あの、いえ。わざわざお届けくださってありがとうございます。あの、どうも」

 まだなにか言いたそうだったけど、僕たちは挨拶をしてノッチを家に送って行った。

 それから久しぶりにノムさんに挨拶をして、すぐにお城へ戻った。僕はまだ仕事があるんだ。もう夕方になってしまったから、もしかするとポワルドゥルキャロットの人たちはお城にあがってしまったかもしれない。

 そんな風に思いながら、ダチョウに乗って帰って行った。上り坂もダチョウに乗れば楽ちんだ。村の人たちはここを歩いてくるんだから大変だよな。

 お城についてダチョウを返し、それからお城に戻ると、玄関ホールにポワルドゥルキャロットの長とその家族がみんなして僕を待っていた。

「ミツヒコ、おかえりなさい」

「遅れまして、すみません」

「ミツヒコに足を洗ってもらわないと、なんだか気持ち悪くてね。疲れていると思うけど、少し休んでからでいいから、足を洗ってもらえないかね」

「あ、はい。すぐに準備いたします」

 ということで、僕は本来の足を洗う仕事が今日もできた。


 夜になってデュデュの部屋に行ったとき、デュデュがなにやら指折り数えていた。

「明日のご予定を教えていただけますか?」

「明日? 明日は休みの日だが・・・ミツヒコ、君がここに来てから何日経つ?」

 お休みの日があるのか。

「ここに来て、今日で12日が過ぎました」

「だよなあ。ミツヒコ、言い忘れていたが、城では、いやこの村では5日働いたら1日休みとなる。つまり明日はその休みの日だ」

「お城中全員お休みするんですか? でも、デュデュは仕事がありますよね?」

「もちろん、私は毎日が休みの日のようで毎日がなんとなく仕事の日であるが、使用人たちにとって、休日は給料日なのだよ。しかし、君はここに来てから12日が経つというのに、まだ一度も給料を渡していない。すっかり忘れていた」

「はあ」

「しかし、君と同じ仕事をしている者はほかにいないから」そう言いながら、デュデュは胸を指さした。これは僕と同じ色のネクタイをしている人がいないという意味だ。「交代要員がいないんだ。さて、どうしたものか」

 なるほど。ほかの職種の人たちは、たぶん交代制になっているんだろう。休日がかぶらないように、二つか三つのグループに分けて休日をずらしているのではないだろうか。そうしないと、デュデュやお客さんの食事だけでも大変困ったことになってしまうから。

「足を洗う仕事でしたら、大した仕事量ではないですから、お休みはなくてもかまいません。僕もデュデュと同じで毎日がなんとなく仕事の日で」

 それを聞いてデュデュは笑った。

「ミツヒコは足を洗う仕事だけでなく、こうして私の部屋に来て私の仕事を少しずつ和らげてくれるだろう。玄関での出迎えや取り次ぎ、次の日の確認に使用人たちへの伝達ひとつひとつを細やかにこなしてくれている。ほんの数日ミツヒコがここに居てくれただけで、私はとても助かっているのだよ」

 出過ぎたことをしたような気もしていたけれど、デュデュはこんなに感謝してくれていたなんて、感激だった。

「あの、僕はそういう執務をする職業人になるための勉強をしていたんです」

「ああ、だからこんなに気が利くんだね。しかし、こうなるとミツヒコがいないと私が困るという図式が」

「すみません」

「いやいや、謝らないでくれ。ミツヒコの休日をどうするか考えるから。しかし、しばらくの間はミツヒコに休みがなくなってしまうが」

「かまいません。さっきも言いましたが、毎日がなんとなく仕事の日なので」

「そう言ってくれると助かるよ。まあ、ポワルドゥルキャロットのカールバーンが帰ったら少し落ち着くから、それまでしばらくは頼むとしよう」

「かしこまりました」



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