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異世界転移していたらしい僕の執事ライフ  作者: marron
ポワルドゥルキャロットのカールバーン
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 メッロは宝飾品の並べてあるテントから急いで出てきた。こんな人混みにいても美しさで輝いてみえる。僕赤面していないかな。

「メッロはこちらで宝飾品の販売をされているのですか?」

 お城で覚えた敬語で話すようにすると、ノッチが少し驚いた顔をしていた。

「そうなの。見ていかない? それとも買うもの決めてるのなら、少し案内しましょうか?」

「それは助かります。実は、この布を売りに来たのです」

 ハタさんからもらった布をメッロに見せると、メッロはすごく目を開けて大げさに驚いて見せた。

「まあ、エルビュの布じゃない。しかも薄織ね。素敵だわ」

 どうやらこの村のエルビュ(という素材)の布は、カールバーンで人気があるのだろう。メッロは僕の手に乗せたそれを食い入るように見ている。

「ノッチが織った布だよね」

「うん」

 ノッチが恥ずかしそうに頷くのを見て、メッロはノッチに気付いた。

「あら、あなたが織ったの? 小さいのに、すごいわ。あ、これを売るならこっちのテントよ。ついていらして」

 メッロはすぐにテントに案内してくれた。

 布を扱っているお店はいくつかあるようだけど、布だけを取り扱っているところと、衣服を取り扱っているところがあって、知らないと迷ってしまいそうだ。メッロに会えてよかった。

 テントの人に布を見せると、快く買い取ってくれた。四角いお金が2つと、丸いお金が5つ。思ったよりも高く売れた気がする。

「この方は、お城で長のお世話をされる方よ。もっと高く買ってさしあげて」

 それなのに、メッロがそんなことを言うもんだから、さらに丸いお金をふたつと、小さいお金を8つももらってしまった。

「あ、ありがとうございます。メッロも、すみません」

 なんだか急にお金持ちになった気がするぞ。

「良いのよ。ね、このあと何か買うか決めてらっしゃる? 一緒に行きましょうよ」

 メッロの笑顔がまぶしい。こんなふうに誘われてつい舞い上がりそうになったんだけど・・・ノッチが急にギュってしがみついてきた。僕のこと、取られると思ったのだろうか。

「えっと・・・実はそんなに時間がなくて。お誘いは嬉しいのですが、先にノッチとの買い物を済ませたいので」

 こういう時にどうやって断ったらいいのか、難しいぞ? ちょっとしどろもどろになってしまったけれど、メッロはわかってくれたみたいだ。

「そう? じゃあ、またお城でね」

「はい、失礼します」

 ほー、すぐに引いてくれた。

 ホッとしてノッチを見ると、すごい形相でメッロのことを睨んでいた。もしや、僕の言葉より、ノッチの視線で引いてくれたのだろうか。だとしたら申し訳ないけど、まあ、仕方がないか。


 メッロと別れて、僕とノッチは音楽が鳴る方へ歩いて行った。

 そちらへ向かいがてら、いろんなテントを覗いてみる。僕は漬物用に壺やそれっぽい入れ物が欲しいと思って探していた。大小さまざまな壺があちこちにある。あれは何だろう、やっぱり陶器かな。

 ふと見ると、かなり手頃な大きさの壺を見つけた。口が広くて丈夫そうなやつ。

「すみません、これ、四角いお金ふたつで買えますか?」

 いまいち値段がわからないから、こう聞くしかない。テントの人はニコニコして頷いた。

「四角いお金一つで大丈夫ですよ。こちらになさいますか?」

「はい」

 そう言って、四角いお金をひとつ手渡すと、壺を渡してくれた。それからおつりをもらった。

「よかったら、これ、サービスするわよ」

 さらに、小さな陶器の瓶をふたつと、麻袋のような巾着をもらった。

「え、良いんですか?」

「ええ、どうぞ」

「ありがとうございます」

 そんなやり取りをして、テントを出た。出てきてから気付いたけれど、もしかすると買うときに値段の交渉とかをするものなのかもしれない。だけど僕が向こうの言い値で買ったから、おまけをくれたんじゃないだろうか。そんな気がした。

 でもまあ、ちょうどよかった。麻袋の方は、お財布にぴったりだ。

 手元には四角いお金が1個、丸いお金(500円玉くらいの大きさで金色)が12個。小さいお金(50円玉くらいの大きさで、ちょっとおはじきみたいなやつ)がなんと31個もあった。なぜなら、お城のチップで小さいお金をもらっていたから、ここに来た時から結構持っていたんだ。

 それらを全部麻袋に入れて、デバルドの懐にしまった。


 ノッチと手をつないで歩いて行くと、テントの群れを抜け出た。少し広場のようになっているところに、屋台の食べ物屋が並んでいる。簡単な机といすが出ていて、村の人やポワルドゥルキャロットの人たちが何かを食べているようだった。

 シンガポールのホーカーのような雰囲気だ。雑然としていて、少しエスニックな香りがする。

「ノッチ、何か食べよう」

「わあい。あのねえ、あたし、あれが良い」

 ノッチが指したほうには、子どもたちがカラフルなリンゴみたいなものを持っている姿があった。

「いいね、行ってみよう」

 屋台に近づくと、少し甘い香ばしい匂いがした。

「それふたつください」

「ふたつね。2アジョだよ」

 アジョって何だっけ。あ、小さいお金だっけ?

「これですか?」

「そうそう。はい、毎度あり」

 アジョは小さいお金。当たっていた。

 カラフル焼きリンゴ(勝手に命名)をふたつ受け取って、ひとつをノッチに渡して、もうひとつは僕が食べた。

「美味しい」

「おいしいね!」

 バナナ味のメレンゲにアーモンドチョコレートクリームをトッピングしたみたいな、濃厚な味がした。これはすごく美味しい。

 これひとつで、1アジョ。安い。

 すごく美味しいから、オンブリカルにお土産に持って帰りたいと思ったけれど、棒に刺さっているから無理だ。彼へのお土産は何にしようかなあ。



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