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ついにポワルドゥルキャロットのカールバーンがやってきた。
僕がお城に来てから6日目、そう、少し予定より遅れてやってきたのだ。彼らがやってくると、村の方が急に活気が出たように感じた。お城からはよく見えないけれど彼らがやってきたことはすぐにわかった。
ポワルドゥルキャロットのカールバーンは、基本的に動物に乗って移動し、村のはずれにテントを張るらしい。ただし、彼らの長はこのお城に留まるそうだ。
村の方から浮足立つような空気を感じていると、お城に続く坂道をラクダのような動物に乗って隊商が上ってくるのが見えた。
「お見えだ!」
お城の中もいつもよりずっとざわめいていて、みんなそれぞれの持ち場の準備をしながら、彼らが上がってくるのを待っていた。
そして彼らが到着すると、デュデュ自ら出迎えに出ていた。
僕は足を洗う係だから、出迎えには出ない。玄関にあがる手前に「足洗い場」を設けてもらい、そこで待機だ。さて、どんな人たちがやってくるだろうか。
僕以外のお城の人たちはみんな、出迎えに行ってしまった。
まだ外門から入ったところで、わいわいと楽しそうに話しているのが聞こえる。デュデュと向こうの長は親戚同士らしいから、積もる話もあるだろう。
それに隊商のたくさんの荷物を降ろしたり、動物を動物小屋に連れて行ったりもするし、玄関にはなかなかやってこない。
まだかな。
僕も見たいな。
まだかな。
いい加減しびれをきらして、僕も外を見に行こうと立ち上がったところで、デュデュが数人のポワルドゥルキャロットの人たちを連れてこちらへやってきた。おっと、やっと来た。
「ようこそいらっしゃいました」
僕は習ったばかりのあいさつの言葉をゆっくりと発音しながら、頭を下げた。
どやどやと3人のオジサンがかわるがわる僕を見る。なんと赤毛の人たちだ。デュデュの親戚って言ってたけど、明らかに人種が違う。
「ああ、よかったらこちらで足を洗ってみませんか。気持ちが良いですよ」
デュデュが僕のことを紹介してくれた。
ポワルドゥルキャロットの人たちはにこやかにうなずいて、僕の前に座った。よかった。洗わせてくれるみたいだ。文化の違う人たちだし、足を触られるのが嫌な場合もあると思っていたけれど、大丈夫そうだった。
さっそく僕はいつものように足を洗う。
「遠くから、お疲れさまでした。旅はいかがでしたか?」
習ったばかりの敬語はちょっとぎこちないけれど、彼らは気にしないようだ。
「旅は我らの生き方。良い道もあれば困難もあるものだ」
うん、急に哲学的だなあ。でも、そういう挨拶らしい。そのあとは、道中どんなことがあったのか、少しずつ教えてくれた。足を洗う時間はそんなにかからないから、大した話はできないけれど、敬語を覚えたての僕にはちょうどよかった。
ポワルドゥルキャロットの人たちはひっきりなしに出入りしていて、僕の「足洗い場」にも、常に誰かが足を洗いに来ていた。
ポワルドゥルキャロットというのは、赤毛の一族という意味らしい。確かに赤毛の人が多い。中には茶色い髪の毛の人もいるけれど、だいたい赤毛でそばかすがある人たちだ。デュデュの村の人たちより肌が白っぽく感じられた。
お城に来るのは、ポワルドゥルキャロットの中でも長に近い人たちで、わりと年寄りが多い。それでも彼らは隊商だから、ここでも売り買いをしているようだった。
ちなみに、僕が足を洗うと、みんなチップをくれた。硬貨だ。
「これ、なんですか?」
最初にもらった時はそれが何だかわからなくて、思わず聞いてしまった。
「ああ、アジョだよ。私たちの持ってきたもので欲しいものがあったら、これで交換すると良い。アジョでできてるからそれなりに価値はあるよ」
「それはありがとうございます」
どうやら、お金のように使えるものだということがわかった。アジョというのがわからないけれど、価値があるということだから、支払いをしてくれたらしい。
僕は物の価値や風習がわからないから、これをもらって良いのかわからなかったんだけど、どの人も足を洗うと同じものをくれるから、どうやら問題ないと思う。
僕が足を洗うと、彼らは硬貨を一枚くれる。なんだかすごく嬉しかった。あ、でもこれは純粋にチップであって、本来僕はお城に勤めているから、お城からお給料をもらえることになっている。
もしかしてチップをもらえるこの仕事は、かなり美味しいのではないだろうか。ポワルドゥルキャロットの人たちも知ることができたし、良いポジションにいる気がしてきたぞ。




