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朝はノッチと一緒に山に登り、エルビュを摘んでくる。
その後、僕は村へ行った。とりあえずハタ屋の仕事はひと段落したから、村でできる仕事はないかと探しに行くことにした。ついでに、一人暮らし用に必要なものがあったら揃えたいと思っている。今のところ必要なのは鍋。だけど食事はハタさんととってるからなくても良い。むしろ、ハタさんに「一緒に食事しましょう」と言うと喜んでもらえる。
この村の食事は、穀物を調理するのは女性の仕事で、おかず、つまり鍋は男性が作る。だから、僕とハタさんが一緒に食事の準備をして一緒に食べるのはごく一般的な食事風景だと思う。ハタさんは仕事が忙しいのもあって、放っておくとお焼きみたいなものを食べるだけだから、しばらくは一緒に食事をした方がよさそうだと思った。
あとできれば、靴、サンダルが欲しいところだ。
サンダルはひとつ、ハタさんからもらったものがあるけれど、実はちょっと小さい。僕の足のサイズはそんなに大きくないけれど、さすがに女性よりは大きいからね。それに、登山用の靴も欲しい。僕が履いてきたスニーカーでも十分なんだけど、ハタさんが登山の時に履いている靴はたぶん防水になっていると思われる。
どちらにしろ革製品だから、特殊な感じではある。
そんなことを考えながら歩いていると、前によくお世話になったヤマさんの畑に出た。
「おー、ミツヒコ!」
「ヤマさん、おはようございます」
「服、作ったんだな。誰だかわからなかったよ」
そういえば、ヤマさんの畑で仕事をしたときにズボンを破いちゃったから、新しいのを作ることにしたんだもんな。ヤマさん、気にしていたのかもしれない。でも僕の服が新しくなったのを見て、安心したようだった。
久しぶりなのもあって、その日の午前中はヤマさんの畑を耕すことにした。収穫も大変だけど、やっぱり畑を耕す仕事が一番大変だと思う。そんなことで、午前中で仕事は終わりになった。
「あの、僕、サンダルも欲しいのですが、どこで手に入りますか?」
今日の報酬をもらうときに、ヤマさんに聞いてみた。
「サンダル? ああー、そうだな、カワさんのところで作ってるけど、今はどうかな」
「カワさんって?」
「ノムさんちのそばに住んでる人だ。ただ、ポワルドゥルキャロットのカールバーンが来てからじゃないと作れないと思うぞ?」
「ポワ、なんですか?」
「ポワルドゥルキャロットのカールバーンだよ。あー、つまりポワルドゥルキャロットっていう、砂漠の向こうの赤毛の一族が商品を売りに来るんだ」
行商みたいな感じだろうか。
「そうなんですか。どんなものを売りに来るんですか?」
「なんでもあるよ。みんなポワルドゥルキャロットが来るのを楽しみにしているんだ。特に人気があるのが動物関係。肉とか革とか装飾品とかだ。海の肉もある。海の物で人気があるのがo/ ̄ ̄~ >゜))))彡だな。(∇〃)。o〇○や⊂(-(工)☆)⊃もあるから、とりあえず手に入れといてあとで加工すれば良いし保存も効く。ま、つまり世界中を周って珍しい物を持ってきてくれるってわけだ」
久しぶりに知らない単語が出てきたぞ。さすがに海関係のものは知らないからなあ。でも、海あるんだな。
「いつ、来るんですか?」
「前は年に1回は来ていたんだが、最近はなかなか来ないんだよ。そうだな、2年に1回かそこらだ。前に来たのはいつだったかなあ。砂漠の民がのさばっているから、ポワルドゥルキャロットがこっちまで来られないんだ。だいたいあいつら、余所の領地で略奪をするんだって、ポワルドゥルキャロットが来なけりゃどこの村だって貧しくなるんだから、結果的に自分たちの首を絞めてるってわからないのかね」
「砂漠の民ですか?」
「そうそう。あいつらホント、働かないくせに、人の邪魔ばっかりしやがる。恵んでもらいたいならせめて邪魔しなけりゃいいものを」
砂漠の民はかなりたちが悪いことがわかった。
世界中(?)を周って売り買いをするポワルドゥルキャロットの人たちがいるから、物流があって世界は潤う。それをせき止めているのが砂漠の民らしい。
略奪をするだけでは何も生み出さない。
ラクをしているようでも、略奪行為のためにはそれなりに武装したりするはずだし、その動力を略奪というマイナスの行為に向けるんじゃなくて、生産性のある行為に向ければ丸く収まるのになあ、なんて思った。
とりあえず、カワさんの家を教えてもらい、サンダルができるかどうか、聞くだけ聞きにいくことにした。