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異世界転移していたらしい僕の執事ライフ  作者: marron
村の一員になりたい
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 ハタ屋の仕事にだんだん慣れてくると、仕事が面白くなってきた。僕はもともと執事になるつもりだったけれど、執事の仕事は人に仕える仕事だから、こうやって言われたことをこなして、わかるようになったら自分から動けるようになるっているのはすごく楽しい。それに、できるようになってくると、その仕事を任されるのは嬉しい。

 ハタさんは僕に仕事を任せるのもうまかった。

 朝起きたらやること、ハタさんが織りに入ったらやることなんかは、言われなくてもできるようになった。

 ノッチが来ない時は、もっと新しい難しい仕事も教えてくれて、毎日がすごく充実していた。

「そこのボビン、とって。それよ」

 言葉がわからないこともあったけれど、ハタさんはそういうこともわかってくれて、僕がわかるまで教えてくれた。

 うん、ボビンってのはコレだな。

「これですか?」

「そう、それの1番から5番まで」

「えーっと……」

 数字は覚えたけれど、文字は知らない。ていうか、この村で字を使うことってあんまりないから、たぶん字を読めない人もいるんじゃないかな。

 僕がまごまごしていたらハタさんが近くに寄ってきた。

「数字、教えておくわ。ここが1、ここから順に20まで。次の列が21から40までよ」

 ざーっと並んでいるボビンの側面には字が書いてある。どうやらこれが数字らしい。見慣れない、ちょっと顔文字みたいな記号が並んでいる。

「もとに戻す時に必要だから、覚えてね」

「あ、はい」

 実はこういうのを覚えるのは得意だ。僕は言語習得が苦にならない、それどころかむしろ新しい言語を知ることは喜びでもある。文字も覚えてしまえば習得がさらに加速するから、これは嬉しい。

 とりあえず1番から5番のボビンをハタさんに言われたところに運んだ。どんな言語でも、だいたい1~5くらいの数字は簡単な字が多い。僕はすぐに覚えた。

「ボビンに糸を巻く作業を教えるから、こっちを見てちょうだい。こうして、こう……」

 あー、ボビンってこのためにあるのか! でっかいから気付かなかったけれど、ミシンで使うボビンと同じ形だ。なるほど。と感心しながら、その日も新しい作業を覚えた。

 それに数字も覚えられた。

 1のボビンには1の機械から糸を巻く。巻き終えたら、向こうの1の穴に通す。同じような作業をいくつもするわけだけど、それにはすべて数字がかかわってくる。1から40を覚えてしまえば、あとは位が上がってもその応用だ。日本語の数字の使い方と似ている。

 ちなみに、イタリア語の数字は11から16がちょっと変則になっているから気を付けないとならない。(フランス語なんてもっと複雑で、80のことを4×20って言うんだ。語学のことになるともっと語りたいけど、本編に関係ないからこれ以上語らない)

 ボビンは3万くらいまで桁があるらしいけれど、途中から色分けされていたりして、この辺はあとでもう一度見直して覚えないとならない。だんだんと覚える仕事も複雑になってきた。

 こういう仕事はノッチがいるときにはできないから、今日はかなり色々覚えられて嬉しかった。


「ミツヒコはもう数字を覚えたの? あなた賢いわねえ」

 仕事のあと、ハタさんが感心してくれた。

「覚えたっていっても、まだ完璧じゃないです。書く順番とかわからないので」

「書く順番? 面白いこと言うわねえ」

 そうか? 面白いかな。だって書き順がわかっていた方が、覚えやすいじゃないか。

「ほかの字も知りたいです。機会があったら教えてください」

「ほかの字? 私だって、ほとんど知らないわよ?」

「そうなんですか?」

 そうか。ハタさんは仕事の都合上数字が必要だから知っているだけで、必要ないことは知らないのか。学校とかないのかな。

「そういうのは、((((* ̄ー ̄*)†~とかφ(・_・”)しかしらないのよ」

「それってなんですか?((((* ̄ー ̄*)†~って?」

「向こうの少し離れたところに、大きな建物があるのは知ってる?」

「いいえ」

「そう? そこに、ここを治めている人がいるのよ。そこにいるのが((((* ̄ー ̄*)†~とかφ(・_・”)で、φ(・_・”)は星を見たり、何か難しい研究とかしているのよ」

 治めている人ってことは、領主とかそういう感じかな。

 星の研究ってことは、学者とか博士とかそういう感じのようだ。

「そうなんですかー。じゃあ、文字はあることはあるんですね」

「ええ、でも庶民は使わないわねー」

 確かに、通貨も見たことないし、文字が読み書きできる必要はなさそうだ。

 それはそれでどうかと思うけど、この村の人たちは豊かな生活をしていると思う。きっといい領主がいるんだろうな。




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