結婚できない男 Case 1
空気が澄み切り、良く冷えた朝
男は、アラームよりも少し早く目が覚めた。
身体を起こし、あたりを見渡す。
まだ、外は暗いようでカーテン越しからの太陽はまだ顔を出していない。
男は枕元においたメガネを手に取り、ベットからでる。
いくら築5年といえども、一晩ですっかり外気にさらされた部屋のなかは肌寒く、クロゼットから上着を出さねばならないほどであった。
まだ、寝ぼけた頭を掻きながらキッチンに向かう。
綺麗に掃除されたキッチンは、男の背丈にちょうど合っており、男も気に入って使っている。
男は、お湯を沸かしながら、朝ごはんの支度を始める。
材料は既に冷蔵庫に用意してあるからさほど時間はかからない。
朝ごはんを食べ終え、身支度をして家をでる。
黒で揃えられた家具は、標準サイズより少し小さめのものを買ったため、部屋を広々と使って身支度することが出来る。
昨日の夜、磨いておいた革靴に足を入れ、戸締りをする。
家を出る時間は、誤差2分以内になっている。
毎日、同じ時間の電車に乗るためだ。
駅から自宅は少し離れているため、誤差2分まで修正できる。
コートを羽織り、外に出てみるとようやく空が明るくなり始めたようだ。
白い息を弾ませて足をすすめる。
途中のコンビニで新聞を買えるように、コートのポケットには小銭を既に準備中だ。