伝説級
「おそらくですが……ゴブリンキングがいます」
「……は?」
「えっ? ゴブリンキング?」
「ゴブリンキング? キングって名の付くモンスターっていえば、オークキングじゃねえのか?」
アンヌの言葉にグリュエールが固まった。
マリーとモーティマはゴブリンキングってモンスターに聞きおぼえがないみたい。
「オークキングではなく、ゴブリンキングらしいです。わたしもそんなモンスター知りませんでしたが、ジェイドがゴブリンキングだろうと……そちらの方は知ってるようですが」
アンヌがそういってグリュエールへ視線を向ける。
ゴブリンキング……? 僕も聞いたことないよ。
「ああ、知っている……っていうのもおこがましいかな。文献で読んだことがある程度だよ。実際に見たことは無い」
「ジェイドも言っていました。こいつは伝説級だぞ……と」
「んなこと言っても、所詮ゴブリンだろ? ゴブリンくらいなら俺でも一発で倒せるぞ」
「わたしも詳しく聞いてないので、よくわかりませんが……ゴブリンであってゴブリンでない。すべてのゴブリンを統べる王だとか」
へー……
伝説級……
ゴブリンを統べる王……
ちょっとカッコいい! なんて言ったら怒られちゃいそうな雰囲気だよね……
「そうだね、更に文献には率いるゴブリンすべてが数段強くなるとか書いてあったよ」
「数段ってどんくらいだよ?」
そうだよね。強くなってるって言われても、モーティマの言う通りどれくらい強いかわからないもんね。
「少なくとも、オークよりは上なんだろうね」
「はあ!? ゴブリンがか!?」
グリュエールの言葉にモーティマが驚いてる。
確かに、あの小さいゴブリンがオークより強いって言われても信じられないよ!
「あたい達だって、普通のゴブリンならやられない自信あるさ! でもあいつらは普通じゃなかった……まさかゴブリンに押し負けるなんて考えてもいなかったんだよ……」
「もし本当にゴブリンキングだとしたら……マズイかもね。ゴブリンキングは知能も高いらしいし。
どうしてゴブリンキングだと思ったんだい?」
「やたらとでかいゴブリンがいたんだよ。格好も偉そうでさ。その辺のゴブリンもかなり強くて……それでジェイドが言ったんだ。ゴブリンキングかもしれないって。ねっ、アンヌ」
「そうですね。わたし達はここへ来たばかりなんですが、元々ここの調査チームを護衛していた冒険者がいまして、その人達と引き継ぎをした後に周辺を確認していたんです。
そしたらゴブリンが森の奥からゾロゾロと大量に……」
「それであたいが村へ避難を呼びかけたんだよ。他のメンバーがゴブリンを抑えている間に、村へ行って避難させるのと、戦える人を連れて戻ったら……」
「その時にはわたし達はもう、ゴブリンに囲まれていました。ゴブリン一匹がなかなか倒せなくて苦戦している間に、退路も断たれていて……アンヌ達がなんとか退路を作ってくれて、そこから退こうとしたときに現れたんです。巨大なゴブリンが」
「……まだかなり距離があったのに、あいつが腕を一振りしたらアックスの腕が飛んでいったんだ。たぶん魔法を使ったんだろうけど、あんなに離れてて当てられるなんて思いもしなかったよ……」
「ジェイドはそのあと殿を一人で……それであんなに傷だらけになってしまったんです……」
「なるほどね……普通のゴブリンはどれくらい強くなっていたんだい?」
「そうですね……攻撃が当たれば普通に傷を負っていたので、頑丈になっているわけではありません。ただ……盾と剣を装備していました。盾の使い方も上手くて、受け止めるだけじゃなく、受け流したりと……」
「受け流す……そんな技術まであって、あの数ってわけかい」
「そうなります……」
「ゴブリンが普段は使えないような盾の使い方をして、強力な魔法を使う巨大ゴブリン……確かに文献に書いてあったものに近いし、ゴブリンキングだって判断も間違っていないかもしれないね」
ゴブリンがそんなに強くなるんだ……
盾を使ってるってくらいなら、僕の魔法で吹き飛ばせると思うんだけど……
でも今ゴブリン達は村の中にいるからダメなんだっけ。
建物も全部吹き飛ばしちゃうもんね。
うーん……
どうするんだろ。




