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元魔王の剣  作者: 鵙来 蜜柑
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盗賊クルト

「見えてきたな。……護衛が十二人か。予想より少し多いな」


「そうですね。でもちょっと多いくらいなら変わらないですよ」


 森の拓けた街道から馬車が三台。その周りを守るように数人の武装した人間が歩いている。

 ……なんで歩いているんだろ? 馬車に乗って移動した方が早いんじゃないの?


「まあな。よし、全員構え!」


「はい!」


「……射て!」


 もう! 早いよ! まだ考えがまとまってないのに!

 一先ずは守らなきゃ。


(“アクアウォール”!)


 馬車と盗賊達の間に水の壁が噴き出す。

 盗賊達が放った矢を数十本巻き込んでいく。

 それでも放たれた矢が多すぎて全体の一割も防げていない!

 ダメだ、1個じゃ足りないんだ!


(“アクアウォール”!)

(“アクアウォール”!)


 よし、これで矢は全部落とせたかな。


「は?」


「え? なに?」


 あ、クルト達が混乱してる。

 あ、馬車の護衛の人間も混乱してる。

 それはそうだよね。いきなり水の壁が出てきて矢を防いじゃったらそうなるよね。


「ご、護衛に魔法使いがいたんだろう……」


「魔法ってあんなに凄いものなんですか!?」


「あんな大魔法……もう使えないはずだ! 射て! どんどん射て!!」


 また馬車の左右と前方から矢が降り注ぐ。

 守れるって分かったから、同じ方法で大丈夫だよね?


(“アクアウォール”!)

(“アクアウォール”!)

(“アクアウォール”!)


「どうなっているんだ! なんだあの魔法は!」


「矢が……矢がもうありません!」


「くそっ! どうする……お頭は!?」


「わかりません! あっ、特攻部隊が向かって行きました」


「馬鹿か、あいつらは! 矢で冒険者達が怪我してる前提の特攻だろうが! 無傷の冒険者に向かって行って俺達が勝てるわけないだろ!」


 二十人位の盗賊が馬車へ向かって走っていく。

 馬車の護衛している人間達も、それを見て陣形を整えた。

 それでも護衛の中から八人だけが盗賊に対応するみたい。

 八人対二十人…

 クルトは、盗賊達は勝てないって言ってるけど……この人数差で?

 本当に?

 でも怪我はしちゃうだろうし……

 もうちょっと僕も手伝おう。


(“アクアショット”!)


 複数の水の玉がクルトを中心にして生まれる。


「ク、クルトさん? クルトさんの周りに水の玉がいっぱい出来てますが……」


「は!? なんだこれ!」


 いっけーー!


「ク、クルトさん? 水の玉が特攻部隊に向かって行きますが……」


「あぁ!? あぁ……向かって行ったな」


「特攻部隊に命中です! ほとんど吹っ飛びました」


「あぁ、吹っ飛んだな……」


「冒険者達は棒立ちです! 今ならどんな攻撃でも当たりそうですね」


「あぁ、そうだな。で、誰がどんな攻撃をするんだ?」


「わかりません! 矢はもうありませんし、俺達が行っても返り討ちにあうだけでしょう」


「よくわかってるじゃねえか」


「あ、お頭が逃げ出しました! 俺達はどうしますか、クルトさん」


「俺達は……無理だろうな。ほら、正気に戻った冒険者達がこっちへ向かってくるぞ」


 馬車の護衛をしてた人間の内、吹っ飛んだ盗賊を縛ってる人間、護衛を続けてる人間、そしてこっちへ向かってくる人間に別れてる。

 こっちへ来てるのは五人だけかな? かなり強張った顔してるけど、大丈夫かな?


「おい! あんたたちは何者だ!」


「俺達は……」


「待て! 後ろに居る奴ら……あっちで倒れてる盗賊達とほとんど同じ格好だぞ?」


「お前達もあの盗賊の仲間か?」


 近付いてきたときは顔が強張ってるくらいで、不安そうにしてた護衛の人間達だったけど、盗賊達の姿を見てすぐに剣が抜けるように構えてる。

 このままだとここで戦闘になっちゃいそう。

 でも……これはどうすればいいんだろ?

 盗賊は捕まったほうがいいと思うけど、今ここで戦闘になったら……僕は鞘から抜かれちゃうよね? ちゃんと耐えられるかな……

 耐えられないと、護衛の人間達を斬っちゃうんじゃ……


「待ってくれ! まずは話を聞いてくれ」


「クルトさん……」


「お前らはちょっと黙ってろ」


 僕の持ち主であるクルトが、護衛達に向かって大声でアピールした後に、盗賊仲間に小声で話してる。


「俺の名前はクルト。確かに盗賊団に入っていた」


「やはり!」


「待て待て! だけど、あんた達も見ただろ? 俺の魔法を」


「あ、あぁ。あれはあんたの魔法だったのか?」


「そうだ。生活に苦しくてな……盗賊団に入ったのはいいが、馬車を襲うって聞いて。それはマズイと思い、盗賊団を裏切ってあんた達を助けたんだ」


「ふむ、その話が本当なら俺達はあんたに助けられたことになる。だが……」


「だが?」


「あれだけの魔法が使えるのに、生活が苦しかったのか?」


「そっ……それは……」


「それに、後ろに居るやつら。お前の話を聞いて驚いているぞ? そいつらはただの盗賊ってことでいいんだな?」


「ま、待ってくれ!」


「じゃあ待ってやる代わりに、さっきの魔法に付いて教えてくれ。あれはなんだったんだ?」


「あの魔法か? あれは……そうだな……」


「魔法についても知らなそうだな……こいつらも捕えろ!」


 クルトが誤魔化そうとしてたけど、護衛の人間達の方が上手だったみたい。


「くそっ、ダメか……わかった、降参する」


「ふんっ、盗賊風情が。助かりたければ嘘も平気で吐きやがる。とりあえず武器を投げろ。後ろの奴らもだ!」


 痛っ! クルトが僕を投げた!

 もっと優しく扱ってくれてもいいのに。


 盗賊達を縛った後に護衛の一人がクルトに話しかけてる。


「さっきの魔法について知ってることをすべて話せ」


「話したら命は助けてくれるか?」


「それは知らん。お前達の命がどうなるか俺の判断でどうこう出来る話じゃない」


「なら何も言わん」


「ほう……情報を取る為なら拷問くらいしてもいいんだがな」


「……くそっ。俺達も何もわからない。水の玉がいきなり生まれて飛んで行ったんだ」


「本当か?」


「それはあんたが判断してくれ。これ以上話すことは無いし、わかることもない」


「……もういい。行くぞ。マリー、落ちてる武器を拾ってから来てくれ」


「はーい! 盗賊達の方はよろしくね」


「おう! それにしてもさっきの魔法ななんだったんだ? こっちの方向から飛んできたと思ったんだが……」

 

 護衛の人間達がクルトを縛って馬車の方へ連れて行く。

 マリーと呼ばれた人間だけ残って、盗賊団が投げ捨てた武器を回収してる。


 僕の事も拾ってくれたけど、他の武器と一緒に馬車に積み込まれちゃった。

 僕の上に大量の剣や弓を置いてったせいで、重いんだけど…


 動いたりしちゃダメだよね? どかすためには魔法使うことになるし…

 さすがにばれちゃうよね……


 馬車の中からじゃ外の様子が分からないけど……盗賊団のほとんどが捕まって、馬車のほうは無傷で済んだみたい。

 とりあえずは一安心かな?


 馬車の外では、大量の盗賊を捕まえたせいか、まだ混乱が治まって無いみたいだけど。これからどうなるんだろ?

 馬車で移動してるみたいだし、大きな街とか行くのかな?

 初めて会った人間が盗賊だったのは残念だけど、これから人間がいっぱい居る場所に行けるなら、それは楽しみ!

 早く馬車、出発しないかな~。


先日、メッセージを送ってくれた方がいました! すっごい嬉しいです!

返信ができない設定をされていた様なので、ここでお礼を。

ありがとうございました。ご指摘頂いた点を考慮しながら書いていきたいと思います!

今後も頑張りますので、よろしくお願いします!

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