テッド村へ向けて出発
気付けばもう明け方。
グリュエールに連れられて冒険者ギルド前に来ている。
昨夜のグリュエールは怖かった……
“アイテムボックス”に興奮したグリュエールが色々詰め込んで実験をしてたんだ。
カップに淹れた温かいお茶を“アイテムボックス”に入れて僕を振り回したり、容量がとか言いながら、その辺に落ちてた空き瓶やよくわからない魔道具をどんどん詰め込んで……
でもそのおかげで、“アイテムボックス”の中に入れたら、入れた状態で固定されていることがわかった。まるで時が止まったかのように。
温かいお茶は温かいままだったし、どんなに振り回されても零れることもなかった。
あれだけ色々してて、何もわからないで終わってたら悲しいから……
少しでも新しいことがわかって良かったよ。
一の鐘が鳴る前には、マリーもモーティマも冒険者ギルド前にやって来た。
二人の荷物も“アイテムボックス”の中に入れたし、馬車も既に用意されてるから、もう後は出発するだけ!
グリュエールが御者台に座って準備をしていたら、一の鐘が鳴った。
「では、よろしくお願いします」
「はいよー」
グリュエールがギルド長と軽く挨拶をして、馬車を動かす。
御者台には、グリュエールとマリーが交代で座ることになってる。僕はずっと御者台。
馬車を運転してる人と一緒に周りを警戒する役!
責任重大だね!
王都の門を抜けたら、街道を進む。
途中で何個も町や村を通るみたいだけど、なるべく急いでテッド村まで行きたいから、そこへ寄るかどうかはその時に決めるみたい。
「おい、グリュエール。ウルの実験するとか言ってたが、これからどうすんだ?」
「そうだね。モンスターが近くにいるときにウルを抜いてどうなるのか見てみたいけど、王都の近くじゃモンスターなんてそうそう出ないだろうし……
まあモンスターが出るまではのんびり進むだけかな」
御者台と荷台の間には、窓が付いてるから会話するのに支障はない。
王都を出てすぐにモーティマがグリュエールに予定を確認してる。
モンスターは当分出て来ないんだ……
でも油断しちゃダメだね! 僕はしっかりと警戒だ!
「王都から南っていうと、今日はシャリル村までか?」
「そうだね。特に問題がなければ陽が落ちる前にシャリル村に着けるはずだから、今日はそこまでかな。
夜の道を進む程急いでる訳でもないし、村があるならわざわざ野宿なんてしたくないからね」
「そうだな。後は……なんかあるか?」
モーティマが一人で考え込んでる。
モーティマなんか落ち着きがないように見えるけど……
「モーティマさん、どうしたの? なにか心配事?」
「いや……なんでもねえ」
「そう? ならいいだけど……」
モーティマがなんかおかしいような……
あ! もしかして!
「モーティマはダンジョンでマリーと一緒に帰ってきたとき、パーティ組んだの久しぶりって言ってたよね?
皆で旅に出るのも久しぶりなの?」
「……ああ、久しぶりどころか初めてだ」
「そうなんだ! だから緊張してるの?」
「っ!!」
あ、図星だったみたい。
モーティマが顔を赤くして恥ずかしそう。
「ぷっ……あははは! モーティマ、緊張してたのかい!」
「うるせえ! 俺と一緒に旅しようなんて変わり者が今までに誰もいなかったんだよ! ずっとソロでやってたしな!」
「そうかい、そうかい! でも今から緊張してたら体もたないよ」
「わかってんだよ!
……なあ、マリーもソロでやってたんだろ? 一緒に旅なんて緊張しねえのか?」
「うーん……私は護衛依頼を受けながら王都へ来たし、その時にいろんな冒険者と一緒だったから緊張はないかな」
「そうか……俺だけか……」
「大丈夫だよ、モーティマ! 僕はドキドキしてるよ」
「剣と一緒かよ!」
この人達となら楽しい旅になりそう!
魔族の皆のことは気になるけど、魔族がいたかもしれない村はもう無人だって話だし……
焦る必要はないもんね!
せっかくだから、楽しみながら旅をしていきたいな!




