マリーと実技試験 ~オーガ戦~
オーガはあと数歩でマリーに手が届きそうな所で止まる。
その場で体を捻るように腕を引いた。
なにしてるんだろ?
オーガの体の周りに、赤いモヤのようなものが見える。
あれは魔力……とはちょっと違うような?
オーガがマリーを見て、ニヤリと不気味な笑みを浮かべると……
マリーに向かって飛び跳ねた!
まだ離れていると思ってたのに、一気に間合いを詰められる!?
天井近くまで高く飛んだオーガは、そのまま赤いモヤを纏った腕を振り下ろしてくる!
マリーは予想していたのか、タイミング良く後ろへ飛び避ける。
マリーの目の前で、地面が抉れた。
オーガの一撃で巨大なクレーターが出来上がる。
飛んできた石礫がマリーにぶつかり、頬から血が流れ出た。
マリー!?
マリーにケガさせちゃった!
こいつ……許さない!!
(殺れ……殺せ……)
殺ろう、こいつを。
生かしておけない。
「ウル、待って!」
「……え? なに?」
「ウルから変な感じがしたから。私はまだ大丈夫だよ? 落ち着いて」
「あいつは僕が殺るよ。マリーに傷を付けたの許さない」
「ウル……やっぱりウルは優しいね。でも本当に大丈夫だから。もうちょっと私にやらせてくれないかな?」
「マリー……」
落ち着こう。
落ち着かなきゃ。
あの感情に支配される所だった……
大丈夫。マリーは大丈夫。
僕も……うん、もう大丈夫。
「ごめん、マリー。僕も大丈夫。マリーを見守ってるからやっちゃって!」
「うん!」
僕達が話している間に、オーガはまた赤いモヤを纏っていた。
あのモヤのせいでオーガの攻撃の威力があがってるのかな。
僕の考えがまとまる前に、オーガはまた飛び跳ねてマリーに拳を振るう!
マリーは今度は横に飛ぶ。
避けてすぐにオーガへ斬りかかろうとするけど、石礫にジャマされて近付けない!
今の攻撃で出来たクレーターのような穴も、オーガに近付く為にはジャマになる。
オーガが穴から飛び出てくる。
赤いモヤを纏うと強くなるなら……赤いモヤが出る前に倒せばいい!
マリーも同じことを考えたのか、穴から出てきたオーガに向かって走り出す。
それでも……
オーガが力を溜めるほうが早かった。
石礫のせいで距離が離れちゃったから、近付くのに時間がかかっちゃったんだ。
マリーの射程に入る前に、オーガの腕はもう赤いモヤを纏っている。
マリーはそんなオーガの姿を見て一瞬だけど、足を止めちゃった。
こんな近くまで来ちゃったら、もう避けられない。
それならオーガが攻撃してくる前になんとか近付いて、先に攻撃しなきゃいけなかったのに……!
オーガは動きの鈍くなったマリーに、容赦なく拳を振り下ろしてくる。
このままじゃ……マリーがやられちゃう!!
「“ファイアーボール”!!」




