マリーと実技試験 ~六階層~②
モーティマはモンスターに囲まれながらも、自分の身長より長くてマリーの腕より太そうな棍棒を振りまわしてる。
あれに当たればさっきの部屋で倒れてたモンスターみたいに、頭くらいは簡単に潰れちゃいそう……
「モーティマさん! 助けは必要!?」
「あぁ!? おお、マリーか! スマン、助かる!」
マリーがモーティマに声を掛けると、すぐに助けを求める返事が来た。
でも、モーティマだけじゃなくて、部屋中のモンスターがマリーの存在に気付いちゃった!
声をかけなければ奇襲も出来たのに……
冒険者達のルールで、先に戦ってる人がいたら横取りしちゃいけないんだって。
もし危なそうだったとしても、声をかけてから。じゃないと面倒事が増えるだけだから。
人間って命を助けてもらっても怒るのかな。
そういえば、さっきのリンもそうだったし……
「ウル、行くよ!」
「あ、うん。魔法は必要?」
「……あんな凄い魔法を見られると後々騒ぎになっちゃいそうだから、危なくなりそうな時だけお願いできる?」
「わかった!」
モーティマに聞こえないように、小声でマリーと作戦会議。
方針が決まれば、後はやるだけ!
マリーが鞘から僕を抜く。
「んっ……!!」
「ウル? 大丈夫?」
頭の中が掻き回されてるようで、気持ち悪い……
またあの衝動が来た。
でも……
今までよりは全然マシ。これなら耐えられる!
「……大丈夫。あの衝動がきたけど、今までより弱いから。これなら問題ないよ」
「本当に大丈夫?」
「うん、安心して」
「おーい! まだか!?」
モーティマが助けを求めて叫んでる。
モンスターもモーティマに襲いかかってるグループと、マリーに狙いをつけたグループに分かれてる。
僕のことを心配してくれるのは嬉しいけど、マリーにだって余裕ないよ!
「やろう、マリー!」
「……わかった。無理ならちゃんと言ってね」
マリーは一度、心配そうな目で僕を見てから、モンスターへと目を向けた。
数えるのも大変な量のゴブリン。
数十体もいるオーク。
それと一体だけ。マリーやモーティマからは離れた場所で指揮をとってるオーガ。
オーガが腕を振るうと、ゴブリンとオークがマリーに向かって走ってきた。
(斬れ……殺せ……斬れ……)
頭の中にどす黒い思考が流れ込んでくる。
でも……大丈夫。僕はこんな感情には負けない!
ちゃんと冷静でいられてる……はず!
オークより先にゴブリンがマリーの元に辿りつく。
ゴブリンは我先にと走ってきたからか、隊列もなにもなくバラバラに襲いかかってきた。
マリーは自分の攻撃が当たる所まで引き付ける。
一撃で倒して行かないと、囲まれちゃうから狙いは急所!
ゴブリンの首を狙って僕を振るう。
十体くらい倒した所で、ゴブリンもこれではダメだと気付いたのか、足を止めてマリーを囲むように動き出した。
「気をつけろ! このゴブリン、魔法を使う奴がいるぞ!」
「うん、わかった!」
モーティマがそう叫んだ直後、マリーに向かって小さな火の玉が飛んできた。
マリーは飛んでくる火の玉の軌道を見極め、冷静に避ける。
ゴブリンが近くにいなかったから、避ける為の隙間がいっぱいあってよかった。乱戦の中だったら当たってたかも。
それにしても……モーティマ。そんな大事なことは先に言うべきなんじゃないかな!
(あいつも殺せ……あいつも斬れ……)
あいつって……モーティマのこと!?
僕がモーティマに文句言ったからそんな風に言うの?
(全部殺せ……人間殺せ……)
ダメだって!
そんなことしてたら平和な世界なんて出来ないよ!
(斬れ……切れ……斬れ……)
斬れ、殺せと囁いてくる……
違う。僕は殺したいんじゃない。守りたいんだ……
「きゃっ!!」
えっ!? マリー!?
ああっ!




