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元魔王の剣  作者: 鵙来 蜜柑
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魔法

 さて、平和な世界にする! って決めたのはいいけど……

 さっそく大問題が発生。


「動けない……」


 ここにいるだけじゃ何も出来ない。

 誰でもいいから人に会いたい。

 でも……この魔王城にはもう数百年も人が来てない。

 勇者と一緒に人族の軍隊が来た後には、盗賊みたいな人達が何人も来てたけど、高価な物はほとんど軍隊の人達が持って行ったみたいですぐに誰も来なくなった。


 誰一人、僕には気付かない。

 まぁ普通は高価な物って、宝物庫や寝室くらいにしか置いてないだろうし。この部屋は謁見に使ったりしてたから、玉座やタペストリーはそれなりにいい物使ってるけど……そんな物を持ち帰る人もいないもんね。


 たぶん僕が誰にも見つからなかったのは偶然だと思う。

 偶然だと思うんだけど……魔王様の遺志のおかげだって夢みてもいいかな?

 魔王様が僕を生かしてくれたんだもんね。


「って、そうじゃないんだ! 魔王様の事考えるのはいいんだけど、まずはこれからどうするか考えなきゃ!」


 人に会うにはここから出ていかなきゃいけない。

 出て行きたくても僕は自分では動けない。

 動く為には誰かに運んでもらわなきゃいけない。

 誰かに会うにはここから出ていかなきゃいけない。

 ループ……


「だ……誰かいませんかーーー!!!」


 ……誰もいませんね。わかってます。

 どうしようかな。うーん……


 ところで、僕は何ができるんだろう。

 たぶん色々出来るようになってる気がする。

 さっきから意識しないでしゃべれてるし。口もないし声帯もないのにどうやってしゃべってるのかは自分でもわからないけど。でもしゃべれてるからいいや。

 他にも、魔王様の魔力に染まったおかげか、魔王様の使えた魔法は使えるような感じがする。

 試してみればいいかな。


「……“ファイアーボール”」


 出た! 火の玉出た!

 僕の剣先の方に魔力が動いて行ったのが分かった!

 僕が魔法を使えるようになるなんて考えてもなかったよ。

 ちゃんと僕の剣先の方に直径三十センチくらいの火の玉が出現して、まっすぐ飛んでった。

 壁に掛かってるボロボロのタペストリーに命中して見事に燃え上がってる。


 うん、燃えてるね。

 燃えてる……!!

 ……やばい! 燃えてるよ!!

 火事!? 火事になっちゃう!?


「えっと!? えっと……火だから……消すには……えっと……“アクアウォール”!!」


 良かった……床から天井まで届くような大きな水の壁が出来た。

 燃えてた辺りは全部水の中に入ったから、これで大丈夫!

 魔法使う時はちゃんと考えて使わないと危ないね。


 魔法を使ってみて分かったことがある。

 僕の体の芯が魔王様の魔力で染まって魔鉱になってるんだ。

 魔法を使うと、芯を中心にして刀身に溜まってる魔力を魔法に変換してる。

 刀身に溜まってた魔力は魔法を使うと減った感じがした。でも空気中に漂ってる魔力をすぐに吸収して回復してる。


 僕の刀身に溜まってる魔力を使い果たしたら、回復するのを待たなきゃ魔法はきっと使えなくなる。そこまで試してみる気は無いけど…

 だってさっきの“ファイアーボール”を使った分の魔力なんてほんの少しだったから、発動した直後にはもう全回復してたし。

 魔力が空になるまでの魔法ってどれだけ使えばいいかわからないよ。


 自分の限界がわからないけど、魔法が使えるってわかったからいいよね。

 魔王様が使うことが出来た魔法は全部出来ると思う。魔法様が魔法を使う所なんてほとんど見たこと無いけど、魔力がおしえてくれる。

 攻撃する為の魔法から、生活に便利な魔法まで。

 だからこんなことも出来るんだ!


「“アイテムボックス”!」


 ふっふっふ……これは空間魔法!

 僕の目の前に出来た空間の裂け目。ここに入れればどんな重い物でも簡単に持ち運べる超便利魔法!

 でも僕は手が無いから中に物を入れることが出来ない!

 僕自身も動けないから中に入ることも出来ない!

 うん、無意味!!


 次はこれかな。


「“クリア”!」


 僕の全身に向けて魔法を使ってみた。

 体に付いてた埃とか全部洗い流せた。

 きっと刀身も綺麗ピカピカ!

 誰も見てくれる人いないんだけどね!!


 一人で突っ込むの寂しいな……

 でもこれで僕に出来る事はわかった。

 しゃべれる! 魔法使える! 以上!!


 それだけしか出来ないよ……

 だって剣だもん。

 人に使ってもらう物だもん。


 本当にどうしよう。

 とりあえずはこの柱から降りたいな。

 魔法使えるんだし、この柱を壊しちゃえばいいか。

 どんな魔法がいいんだろ? とりあえず、


「“ソニックブーム”!」


 あっ! 柱にヒビが入った!

 これなら壊せそう。

 もう一回!


「“ソニックブーム”!」


 柱がピシピシ言ってる……

 壊れるかな?壊れるかな?

 ……壊れた!


「うわーーーーっ!!」


 痛……くはないけど、ビックリした。

 あんな高い所から落ちたよ。

 そりゃ柱壊れたら落ちるんだけど……

 わかってたよ? わかってたんだけど、ビックリした。

 でもこれで柱から降りる事は出来た。落ちたんじゃ無いからね! 降りたんだからね!


 …………?

 ………………?

 なんか部屋中の柱がピシピシ鳴ってるような。

 えっ?

 なんで? えっ??


 あ、あっちの柱が折れた。

 あ、こっちの柱も折れた。


 ゴゴゴゴゴ……ってすごい音が聞こえるけど……なんだろね。

 あれ?


「て……天井が……落ちてくる……? うわ……うわっ……

 うわーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」


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