捕えられた男
魔王が立ち上がり、付いてこいと言って部屋を出て行く。
魔王とゴブリンキングに挟まれて、グリュエールは無言で魔王の後を追う。
歩きながらグリュエールは耳を触ってる。あれはグリュエールの考えるときに出るクセだよね。
歩きながら考えているんだ……
どうすればいいのか。どうすればここから抜け出せるのか……
魔王の家を出てから、この集落の外れまで連れて行かれて、一軒の家の前で立ち止まった。
昨日グリュエールが入れられた牢屋とは別の場所だけど、形は同じだからきっとこれも牢屋なのかな。
「この中にいる奴を倒せたら、帰してやるよ」
魔王がニヤニヤしながらグリュエールに向かって、そう言ってくる。
さっきの話だと、中にいるのは冒険者だよね?
テッド村から逃げ出してきた冒険者……村長のミドが言っていた人達かな。ゴブリンが強いってわかったらすぐに逃げ出しちゃったって人達。
そんな人なら、きっとそんなに強くないだろうし……
グリュエールなら勝てるんじゃないかな!
「俺の『領域』はそのままだ。魔法を使えないエルフがどこまで戦えるのか、見せてもらおうか」
魔法なし!?
でも……それでも、グリュエールには棒術もあるし、大丈夫だよね……?
「ここでやるのかい?」
「そうだ。中にいる奴、会話できないくらい狂っちまってるんだよ。剣を抜いたら暴れ出してな。一緒に捕まえてきた奴らは全員そいつに殺されてた」
「呪われた魔剣……だね」
「ああ? なんか知ってるのか?」
「いや……何も」
呪われた魔剣!? 王都で聞いたやつだ!
王都の冒険者ギルドでギルド長をやっているイリーシスが言ってた。
僕をその呪われた魔剣なんじゃないかって疑ってたんだよね。
僕と一緒で刀身が真っ黒だからって……
「まあいい。そいつは視界に人が映ると襲うみたいでな。近くにだれもいなければ大人しいんだよ。今は静かだろ?」
「……そうだね」
「その牢屋の中で戦え。中はそれなりに広いから剣を振るうのも問題ないだろ」
中には呪われた魔剣を持ってる人が……
グリュエールは魔法使えないし、建物の中で戦わされたら逃げることも出来ないかも……
「おい、ビビってんのか? さっさと中に入って戦って来いよ。勝てば帰してやるって言ってんだからよ」
「……わかったよ」
ゴブリンキングが扉にかかっていた鍵を外して待っている。
グリュエールは扉に近付き、少しだけ開けて中の様子を確認する。
「さっさと入れって言ってんだよ!」
うわっ!
魔王が扉を開け放って、グリュエールの背中を蹴ってきた!
「うっ……」
グリュエールは蹴られた勢いで扉の内側に倒れ込んだ!
すぐに扉は閉められて、鍵も掛けられたような音もした……
グリュエールはすぐに立ちあがって、背負っていた杖を構える!
部屋を見回すと、部屋の奥……隅のほうに壁の方を見ながら座り込んでいる男がいた……




