グリュエールの決断
「……最後にもう一度だけ聞いてやる。俺の仲間になれ」
「……あんた、聞いてやるって言っといて命令しているじゃないか。もうちょっと言葉を勉強してから誘ってきなよ」
「てめえ……こんな敵地のど真ん中で、本当いい度胸してるな」
「敵地って言っても、あんたたちしかいないんだろう? あとはゴブリンくらいかい? それくらいならなんとかなるだろうしね」
戦闘になったら、僕だって協力するもんね!
魔王とゴブリンキングがどれくらい強いのかわからないけど、グリュエールと一緒ならなんとかなるよ!
「……エルフって魔法が得意なんだよな?」
「……そうだね」
「こんな状況でも落ち着いていられるほど凄え魔法が使えるのか?」
「さて、どうだろうね」
「まあいい、それなら……『領域』!」
魔王がなにかしたみたい!?
青白い光が円形に拡がっていったように見えたけど……
グリュエールも、魔王のいきなりの行動に、立ち上がって身構えてる。
「なにをしたんだい?」
「俺の『領域』を展開しただけだ。これの範囲内では俺の決めたルールが絶対になる。ルールにも制限があるが、今回は……そうだな。こいつに魔法を撃ってみろ。そしたらわかる」
魔王はそう言って、ゴブリンキングを指さす。
「魔王様、問題ないのは分かっておりますが、さすがにそれは……」
「おまえは黙ってろ」
「……はい」
「ほら、撃たねえのか? 今なら反撃もしないって言ってんだぞ?」
魔王がグリュエールを挑発してくる。
魔法を撃っていいって……撃たれても大丈夫だって自信があるってこと?
グリュエールがどんな魔法を使えるかもわからないのに?
さっきの『領域』ってスキルだよね?
前に王都でギルド長のイリーシスから教えてもらったけど、レアスキルっていうのもあるらしいし……
この『領域』もレアスキルの一つなのかな。
「……“ウインド”!」
あれ? なんで“ウインド”なんだろ。もっと強い魔法じゃないとさすがに当たっても倒せないんじゃ……
……あれ?
グリュエールは魔法を使ったはずなのに……
“ウインド”が……風の刃が出てきてない?
「ふーん……なるほどね。魔法を使えなくしたのかい?」
魔法が使えない!?
僕は……? 僕も使えなくなっちゃってるのかな!?
グリュエールは耳の先っぽを触りながら考え事をしてる……
「まあそんなところだな。さあどうする? 得意の魔法を封じられて。今なら許してやるぞ?」
魔王の問いに、耳から手を離したグリュエールはニヤリと笑ってから答える。
「あんたの物になるくらいなら、死んだ方がマシだね」
……グリュエール!
カッコいいけど、こんな状況で魔王にケンカ売って大丈夫なの!?
「……そうかよ。もういい、わかった。
ゴキ、こいつらを牢屋に連れて行くぞ」
「牢屋ですか? また閉じ込めておくと?」
「違えよ。あの剣を抜いて気が狂った奴のところへ連れて行くんだよ」
剣?
気が狂った奴?
「剣とは……あれですか!? 魔族の村にあったあの剣!?」
「そうだよ。それそれ」
「あれを誰かに渡したのですか?」
「ああ、おまえらがテッド村を襲ったあとにこの森へ冒険者が逃げてきたからな。そいつらをラーウルフに捕まえさせて、色々聞きだしたあとに渡してみたんだよ。
礼だって言って渡したら、喜んで受け取ってたぞ。その剣を抜いた後に気が狂ったみたいだけどな」
魔族の村にあった剣!?
でも剣を抜いただけで気が狂っちゃうって……?




