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勇者はサキュバスに恋してる  作者: 栄伊右衛門(えいえもん)
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勇者と学校

勇者の見た目は16〜18歳だが、実年齢は25歳だ。

勇者曰く、不老不死の魔女に呪いをかけられて、永遠に見た目は17歳という呪いをかけられたそうだ。

しかし、俺は勇者の言葉を信じない。

何故なら・・・


勇者「私は状態異常完全無効化するから、河豚の毒なんて屁でもないわ♪」


と、河豚の内臓を唐揚げにして平らげていたし、怖いもの見たさで、勇者と一緒にホラー映画を見ていた時にも・・・・


勇者「私だったら、こんな呪い効かないわ。逆にこの幽霊を呪ってやるわよ♪」


と、震える俺の横で、何とも頼もしいことを言っていた。

あくまでこれは俺の予想だが、勇者の若さの秘訣は、勇者のチート級の魔法かなんかで若さを保っているのであろう・・・・。


この見た目の若さを使って、勇者は俺と同じ学校に通っている。

しかも、同じクラスで隣の席だ。

この国の住民票すら持ってない異世界の人間が、どうやってこの学校の生徒になれたのかは謎だが、俺をサキュバスに変えてしまうほどの力を持っているのだから、この程度の理不尽な事を起こすなど、勇者にとって容易かろう。


勇者が転校して来た初日、学校中の男子生徒達が勇者を見に集まって来た。

美少女がこの学校にやって来たと話題になっていたのだ。

校門前で待機している男子生徒達は、勇者の為に道を開け、花道ができていた。


椿「ど、どうしてお前が学校に・・・・?!」


勇者が学校に来るとは聞かされてない俺は、案の定驚いた。


勇者「サプライズよ!つぅーちゃん嬉しいでしょ?どう?私の制服姿♪」


学校にいる時だけが、唯一勇者から離れられる救いの時間だったのだが、これで24時間勇者の監視下に置かれることとなった・・・・・。


勇者によって魔物にされてからは、尻尾をベルト代わりにしていている。

お世辞にもセンスのあるベルトとは言えないが、そうじゃないと、仕舞う場所がなく、ズボンに後ろ側に入れると大きい方を漏らした人、前の方だと年中ムラムラしている人と、周りからそう見られる危険性があるからだ。

ただ、いつも勇者は俺のベルトを馬鹿にする。

人前で尻尾と言わないだけ良いのだが、勇者のせいでこうなったのだから、少しは気を使って欲しい。

というか、元の体に戻して欲しい。


俺がサキュバスに変身してしまうことと、勇者は異世界の人間である事は誰にも教えていない。

二人だけの秘密だ。


勇者「バレてもどうって事はないでしょ?変なの来たら私がぶっ飛ばすだけよ?」


勇者はこう言うが、俺は面倒ごとは嫌なのだ。

この間のように、イケメン騎士に拉致されるなんて事は、二度と御免だ。


不幸中の幸いと言っていいのか、授業中に悪魔の尻尾が紫紺色と白色の交互に点滅し始め、サキュバスに変身してしまいそうになっても勇者がすぐに手を握り 、白聖エネルギーを与えてくれる。


ただ今日はいつもと何かが違う。

触れるだけで良いのに、恋人つなぎをさせられ体も寄せてきた。

俺達の席が窓側で1番後ろであり、他の生徒に見られる心配が少ないからなのか、ツンデレ属性でもある勇者にしては大胆な行動である。

しかし、教室内でこの行動に気づく位置にいる人物がいる。

それは、先生だ。

当然、授業中にイチャついてる学生がいれば、先生は注意をするのが普通だが、勇者が先生を睨むと恐怖に慄き、見て見ぬ振りをして授業を再開する。


勇者「私がいれば大丈夫よ!」


勇者は俺にガッツポーズを見せ、微笑みかけた。


全て、勇者せいなのだが・・・・・。


俺の悩みは勇者だけでなく、他にも悩みがある。

それは自分の体の事だ。

元の姿に戻っても、多少はサキュバスの力が残っているらしく、普段連んでいる同じクラスの男子生徒でさえ、俺と話す時はいつも顔を赤くする。


友人A「ヤバイ、梅桜が可愛く見える・・・・?」


友人B「俺も・・・・あいつ見てるとなんか・・・・」


と、遠くでヒソヒソ話している。

地獄耳になったのもサキュバスの力のせいなのか・・・・?

俺は、勇者によって自由だけでなく友達も失いそうだ・・・・。

数少ない友人ですら、顔を赤くしながら避けられるようになり、休み時間に話す人がいなくなってしまった。

更に、体育の授業で自由に2人組をつくってと先生が言えば、必ず余るのは俺。

学校で1番可愛い人ランキングは、2位に俺。

彼女にしたいランキング2位に俺だが、彼氏にしたいランキングは圏外。

嫌われているのか、好かれているのか・・・・・。

昼休み、今日も教室でぼっち。

自分で作った弁当を黙々と食べていた。


勇者「梅桜くんは、随分嫌われてるのね」


俺に、ほくそ笑んだ顔を見せる勇者の周りには、数十人の女子達が囲んでいる。

みんな勇者とおんなじ顔で俺のことを見ている。


椿「ああ、全部お前のせいでな・・・・」


皮肉った言い方だが、事実である。


女子生徒A「何、自分がぼっちなのを彼女のせいにしてるの?マジありえない」


女子生徒B「サイテー、ファレンちゃん可愛そー」


女子生徒C「こんな可愛い彼女と釣り合ってないんだから、付き合ってもらえてるだけ感謝しろよ。自分の立場を理解しろってーの」


女子生徒D〜K「「「「「そーよ!そーよ!」」」」」


思わぬ女子生徒らの同調圧力に俺は尻込みした。


椿「うっ・・・・・・随分、人気者だな」


勇者「みんな、ありがとう!でも、私がいけないの。梅桜くんは何も悪くないわ。だって、私にはみんながいるけど、梅桜くんは、いつも1人ぼっちだから、羨ましいのよ。それと、私を独占したいけど、お昼休み一緒にご飯食べようって言い出せないだけなのよ」


そう言いながら、勇者は勝ち誇った顔をし、金色の長い髪をかきあげる。


女子生徒A「ファレンちゃんに僻んでるって事かぁ。男の癖に情けない」


女子生徒B「冴えない顔して意外にツンデレなんだねー」


女子生徒C「女々しい奴。キッショ。てっいうか、ベルトセンスねぇんだよ」


このように、勇者は男子だけでなく、女子にもモテる。

因みに、可愛いランキングと彼女にしたいランキングの1位は、勇者だ。


キンコンカンコーン♪


勇者「みんな授業始まるから、席に戻りましょう。はい、撤収〜」


女子生徒D〜K「「「「「はぁーい!」」」」」


勇者は手を叩くと、女子生徒達は各自自分の席に着いた。


勇者は、この学校の生徒を完全に飼い慣らしている・・・・。


午後の授業開始。


先生「授業始める前に、前回やったテスト返すぞ〜じゃあ、まず梅桜から」


まずまずの点数だ。

俺の答案用紙を見た勇者が、またもや勝ち誇った顔をしている。


勇者「あっ、落としちゃったわ♪」


ワザとらしく、俺の机の上に満点の答案用紙を落とした。


椿「・・・・・何だ?嫌味か?」


勇者の答案用紙に鼻くそをつけてやった。


勇者「あっ⁈なんて事するのよ‼︎私は褒めて欲しいだけよ‼︎もう、そんな汚い紙なんていらない!!!」


勇者は頬を膨らませ、そっぽを向く。


先生「今回のテストは、100点は1人だけだった。赤点嫌なら、みんなもっと頑張れよー。それじゃあ、授業始めるから席に座れー」


勇者は、生徒から人気があるだけでなく、成績優秀、運動神経抜群であるため、先生からも一目置かれている。


勇者「あら、こんな簡単なテスト、みんな100点取ってるかと思ってたわ。私1人って事は、私が優秀過ぎるって事よね?まぁ、私が高スペックなのは、全ての能力値がカンストしてるからよ♪」


と、聞いてもないのに、俺にだけ説明してくる。


見た目は17歳の美少女でも、中身は25歳のいい大人が、高校生の俺に威張っている・・・・。


椿「四捨五入で30・・・ガハッ⁈‼︎」


俺がボソッと皮肉を言いかけると、自分の肋骨が砕ける音がした。


その後の事は、あまりよく覚えていない。

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