表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者はサキュバスに恋してる  作者: 栄伊右衛門(えいえもん)
5/7

俺はイケメンが嫌いだ。

人は見た目が9割とよく言うが、全くもってその通りだ。


何故なら、イケメンなだけで女性にモテて、人が集まり、そこでコミュニケーション能力が上達し、そのコミュ力と顔を使って営業すれば、たちまち営業成績は上がり、高収入になる。

地位が高くなれば更に人は集まり、今度は優秀な人材、美女の群れがお待ちかね。

恋人選び放題、お金も使い放題、人生バラ色。


・・・・・はぁ。

全く腹が立ってしょうがないぜ!


前働いていたバイト先では、俺が下手こいた時にパートのおばさんにこっぴどく怒られたが、全く同じ失敗をしたイケメンにはドンマイで許されていた。

イケメンは勝ち組、そうじゃない人は来世に期待・・・・。

畜生ッ!!だから、俺はイケメンが嫌いなんだ。

いや、イケメンなんか大っ嫌いだ‼︎!


そして、今現在。

俺は、大っ嫌いなイケメンによって拉致され、この大っ嫌いなイケメンに尋問を受けている。


イケメン騎士「この世界には、お前ら魔物は存在しない。つまり、お前も異世界の扉を使って、こちらの世界に来たという事だ。この世界に来た目的は何だ⁈他に仲間はいるのか⁈言えっ!!」


俺の胸ぐらを掴み上げながら、問い詰めてくる。


椿「うぐっ・・・・⁈だから何度も言ってるだろ‼︎!俺は人間なんだって‼︎勇者が俺を魔物に変えたんだよ!!!」


何度言っても信じてもらえない。

まぁ、そりゃそうだろう。

異世界を救った勇者が、一般市民を魔物に変えたなんて・・・・。

俺も、勇者が魔法で家を木っ端微塵にする前まで、異世界で勇者やってるって聞いても信じられなかったもんな・・・・・。

それにしても、魔物を見ただけでこんな扱いするとはな。

異世界では、魔物は人間達に相当嫌われているみたいだ。


このイケメン騎士は、黒い髪に切れ長の目をしている。

左目は、透き通った青い瞳。

前髪に隠れた右目は角度によってチラチラと見えるが、黒い瞳をしている。

つまり、オッドアイだ。

身長は大体180cmくらいで、体格はアーマーを着ていて分かりにくいが、アーマー自体がそこまでゴツくないから、おそらく細マッチョだろうな。


なんか・・・・・・むかつく。


最初は騎士の格好をしたコスプレイヤーかと思ったが、俺を腕を掴んだと同時に、見知らぬ廃墟に瞬間移動し、あっという間に俺の両手両足を縛り上げた。

ほんの数秒の出来事だったが、これだけで確信した。

コイツは勇者と同じで異世界の人間だと。

手際の良さを見ると、異世界でもかなりの手練れなのだろう。


薄暗い部屋の中、唯一の光は、ひび割れた窓を通して差す日の光だけ。

外からは、人も声も車が通る音も聞こえない。

ここで大きな声で助けを呼んでも無駄だろうな。

仮に誰か来たとしても、また瞬間移動して別の場所に移動されるのがオチ・・・・。

ここは、勇者が助けに来てくれるので待つしかないな。

でも、あいつ、この場所分かるかな・・・・?


イケメン騎士「勇者様がそのような事をするはずがないだろう‼︎はっ⁈・・・・・まさか、お前・・・・勇者様がこの世界にいる事を知り、始末するつもりだったんだな⁈許せん‼︎ここで叩き斬ってやる‼︎‼︎」


騎士は、俺の首筋に先の鋭いナイフを突きつけた。

それは流石の俺もビビる!!


椿「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待った‼︎嘘なんかついてないし、勇者の事を殺そうなんてしていない‼︎それに、俺は勇者の恋人なんだって‼︎」


イケメン騎士の動きが止まった。


イケメン騎士「お前、馬鹿か?勇者様は、大の魔物嫌いだぞ。嘘を付くならもっとマシな嘘を付け」


椿「嘘なんかついてねぇよ‼︎だいたい俺は魔物じゃねぇし‼︎・・・・・・そうだ‼︎尻尾を引っ張ってくれ!そうすれば、俺が人間だって証明できる‼︎」


俺は自分の尻尾をピンッと伸ばして、イケメン騎士に見せつけた。


イケメン騎士「・・・・尻尾?魔物の尻尾なんか触りたくない‼︎汚らわしいし、うねうねしてて気持ち悪いし・・・・」


俺の尻尾は、ミミズかナメクジか?


椿「くっ、女々しい野郎だな!良いから引っ張れよ‼︎この分からず屋が‼︎‼︎」


少し、癇に障ったのだろう。

イケメン騎士は眉をひそめる。


イケメン騎士「口の悪い魔物め・・・・変な真似したら、その場で切り刻むからな‼︎」


イケメン騎士は、ナイフを鞘に戻し、俺の尻尾を力強く引っ張る。


ドロンッ


イケメン騎士は、元の姿に戻った俺を見て、無言のまま驚いた表情をしている。


椿「いってぇ‼︎‼︎・・・・強く引っ張りすぎだろ!!!!・・・・でも、これで分かっただろ?正真正銘の人間だ‼︎・・・・・って何してんだよ?」


俺は渾身のドヤ顔を決めたというのに、イケメン騎士は俺の胸を揉んでいた。


イケメン騎士「・・・・あの胸はどこいったんだ⁈・・・・・まさか、お前・・・・いったい何枚入れてたんだ?⁈!」


椿「パットちゃうわ‼︎!」


変化に気づいたの、胸だけかい‼︎

それに、異世界にもパットあるんだな!


「うーむ・・・・魔物とはいえ、女でこれだけ小さいと流石に可哀想だな」


イケメン騎士は俺の肩を、ポンッポンッと叩いた。


椿「俺は男だ‼︎‼︎!それと、全国の貧乳に謝れ‼︎っていうか、さっきの痴漢だろ!俺が本当に女だったら完全にアウトだぞ‼︎イケメンだからって何やっても許されると思うなよ‼︎」


本来の姿を見れば、流石に堅物イケメン騎士にも誤解が解けたかと思えたが・・・・。


イケメン騎士「ふむ、成る程。人間に化ける魔物もいるのか」


椿「違うわ‼︎逆だ‼︎逆‼︎」


信じてもらえなかった。


イケメン騎士「ふふふふふっ、お前の化け術は疎かだな!ほら見ろ‼︎尻尾は残ったまんまだぞ‼︎」


さっきまで触りたくないと言っていたくせに、嬉しそうに俺の尻尾を握り続けている。


椿「あぁもう、話にならん‼︎ファレンに連絡させろ‼︎本人に聞けば良いだろ⁉︎」


イケメン騎士「無礼者‼︎魔物ごときが、気安く勇者様の名前を呼ぶな‼︎」


うっわ、めんどくせー・・・。

こいつも勇者の信者の1人なんだな・・・・。

残念すぎるイケメンだ。

もしや、こいつが残念なのは、勇者のせいなのか・・・・?


椿「良いか?ここに連れて来られてから、何十回も同じ話しをしているが、冷静になって聞いてくれ。俺はこの世界の人間で、勇者の恋人だ。そして、ゲームで忙しい勇者にパシられて、行列ができるパン屋さんのメロンパンを買いに行ってたんだよ。拉致ってくれたお陰で、もう売り切れだろうけどなっ‼︎!・・・・・・はぁ。勇者にメロンパン買えなかったって連絡したいから、ズボンのポッケにあるスマホを取ってくれ」


イケメン騎士「・・・・メロンパン?スマホ?」


イケメン騎士は首を傾げている。


こいつ、こっちの世界のことは何も知らないのか⁈


椿「良いからポッケにあるのを出してくれ‼︎勇者に連絡するから‼︎」


イケメン騎士「お前、勇者様に連絡するフリをして、仲間を呼ぶつもりだな⁈そうはさせんぞ‼︎」


再び、ナイフを突きつけられた。


椿「だから違うっつうの‼︎」


イケメン騎士の目は血走っている。

もうダメだと思ったその時、戦士の後ろに人影が見えた。


勇者「つぅちゃん‼︎‼︎」


下着姿で仁王立ちしている勇者がそこにいた。


イケメン騎士「勇者様⁈どうしてここに⁉︎」


イケメン騎士は慌てふためいている。


椿「お前、服着ろよ‼︎‼︎」


俺は違う意味で慌てふためいている。


勇者「つぅちゃん、何で縛られてるの?それに・・・・あんた誰よ?」


イケメン騎士「ちょっと待ってくださいよ⁈‼︎私ですよ‼︎ルドベキアです‼︎あなたの1番弟子ですよ⁉︎」


勇者は、必死に訴えるイケメン騎士を下からガンつけるように覗き込む。


勇者「あぁ〜ん?・・・・・あっ、あぁー・・・・あんただったのね。お久しぶりね・・・・それで、私の彼氏をなんで縛ってるの?」


イケメン騎士「彼氏⁈この魔物がですか⁉︎」


勇者「そうよ、私の彼氏よ。でも、つぅちゃんは魔物じゃないわ。こっちの世界の人間よ」


勇者は俺に抱きつき、それを見た戦士は崩れるように膝をついた。

この戦士は俺の話を全く聞かなかったが、勇者の話だけはちゃんと聞くようだ。


イケメン騎士「そ、そんな・・・・あの勇者様が魔物なんかと・・・」


いや、聞いてないな。


勇者「じゃあ、帰るわよ」


パチンっ


勇者が指を鳴らすと、縄が瞬時に解け、俺は自由の身となった。


椿「イテテテテッ、あぁもう、何時間も同じ体勢だったから体が痛い」


勇者「本当に心配してたのよ!!つぅちゃんに何かあったんじゃないかって。おかげ、でお昼寝もできなかったわ‼︎」


俺は勇者の口元に指を差し。


椿「おいっ、よだれ痕」


ゴシゴシ・・・・


勇者は、手の甲でよだれ痕を拭いた。


勇者「・・・・・・本当に心配してたのよ‼︎つぅちゃんに何かあったんじゃないかって。おかげで、お昼寝もできなかったわ‼︎」


コイツッッ‼︎!


イケメン騎士「あの勇者が魔物なんかと、あの勇者様が・・・・」


イケメン騎士は、まだブツクサ言ってる。

このイケメン騎士は、勇者を追ってここまで来たんだよな。捜し回っていたそうだし・・・・放置したまま帰るのは、なんか少しかわいそう気が・・・・・・。


椿「なぁ、この人ほっといて良いのか⁇ファレンの弟子なんだろ?誤解が解けようだし、うちでゆっくり話しとか・・・・」


イケメン騎士「ファッ⁈・・・・・もしや、勇者様は、あの魔物に洗脳されているのか?」


椿「ファレン、帰ろう」


俺は直ぐに勇者の手を握った。


勇者「それじゃ行くわよ・・・・テレポ‼︎!」


勇者が唱えると、目を開けられないほどの白い光が2人を包んだ。

目を開けると、俺達は我が家に瞬間移動した。


椿「うぅ・・・・、何度も経験してるけど、慣れないな。瞬間移動ってのは・・・・まるで、車酔いしたみたいな感じだ。」


勇者「お帰り、つぅちゃん。今日は災難だったわね。あっ、まだログインボーナス取ってなかっわ」


勇者はベットの上に座り、スマホをいじり始めた。


椿「あぁ、メロンパン買えなかったしな」


勇者「それは今度で良いわよ。つぅちゃんが無事に帰ってきてくれただけで私は満足だわ」


・・・・たまに勇者は、嬉しい事をさらっと言う。

が、今回の出来事は、俺を魔物に変えた勇者のせいでもある。


椿「そう言えば、どうして俺が廃墟にいるって分かったんだ?」


勇者は立ち上がり、スマホ画面を俺に見せてきた。


勇者「GPS(愛の力)よ」


勇者は満面の笑みである。


椿「・・・・いつの間に」


勇者に救われたが、最も怖い存在は勇者だと改めて思った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ