第1話:理想と現実
俺の名前は梅桜椿、花の名前が並んでいて変わってる名前だが、何処にでもいる極普通の高校生だ。
そして、俺は世間で言う“リア充”でもある。
彼女「つぅーちゃん♪」
そう言って、学校の屋上で抱きついてくるこの美少女が、俺の彼女だ。
潤いに満ちた金色の髪に透き通るような青い瞳、吸い付くような滑らかな肌を持ち、プロポーションも性格も良い。
更に、一途に俺の事を愛し続けてくれる彼女。
こんな美少女が彼女だなんて、俺はなんて幸せ者なのだろう。
彼女「そう言えば、休み時間中に隣のクラスの女子と楽しそうに話してたよね?何話してたのぉ?」
そう言って、彼女はヤキモチを焼いている。
ほっぺたを膨らました顔も可愛らしい。
椿「俺の彼女は可愛いっていう自慢話だよ♪」
そう言うと、彼女は顔を赤くした。
彼女「もう、恥かしいよぉ」
照れてる顔もまた可愛いらしい。
これから、俺と彼女の熱く濃厚なラブストーリーが始まる・・・・・。
・・・・・・・・。
・・・・という夢を見た。
o ○ o 。o ○ o 。o ○ o 。o ○ o。o ○ o 。o ○ o 。o ○ o 。o ○ o。
俺の名前は梅桜椿、花の名前が並んでいて変わってる名前だが、何処にでもいる極普通の高校生だ。
そして、俺は世間で言う“下僕”だ。
彼女「つぅちゃん‼︎‼︎‼︎」
そう言って、学校の屋上で俺の胸倉を掴みながらフェンスに押し付けてくるこの美少女が、俺の彼女だ。
俺は、この彼女の身の回りの世話をしている。
例えば、潤いに満ちた金色の髪を保つ為に、洗髪前にブラッシングをして、ぬるま湯で余洗いをする。
地肌を傷つけない為に、爪を立てたり、ゴシゴシ洗うのではなく、指の腹を使って頭皮をマッサージする様に洗う。
清潔なタオルで地肌を優しく叩き水分を取り、温風と冷風をうまく使い分けてドライヤーをかけるなどして、彼女の髪の手入れをしている。
そして、透き通るような青い瞳を守る為に、スマホゲームやPCゲームが好きな彼女はブルーライトを浴び過ぎているから、ブルーカットメガネを買ってあげた。
そしてそして、吸い付くような滑らかな肌を守る為にお風呂上がりに保湿クリームを塗ってあげる。
そしそしてそして、彼女の完璧なプロポーションを崩さないように、糖質を摂りすぎない食事を作り、健康に気を使う。
そしてそしてそしてそして、利己主義な彼女は、些細な事でも気に喰わない奴がいれば問答無用で締め上げてしまう。
これはまずいと思った俺は、一般人には迷惑をかけないでくれと土下座して頼み続けた事により、少しは丸くなった。
俺の全身全霊を傾けて、彼女に尽くしている。
そのお返しに彼女は、一途に俺の事を束縛し続ける。
こんな愚少女が彼女だなんて、俺はなんて不幸者なのだろう。
彼女「休み時間中に隣のクラスの女子と楽しそうに話してたわよねぇ?何話してたのよ?」
そう言って、彼女はヤキモチを焼いている。
眉間にシワを寄せている顔もまた恐ろしい。
椿「いや、その・・・・料理の話してたら盛り上がっちゃって・・・・」
そう言うと、彼女は顔を赤くした。
彼女「はっ?いつも言ってるけど、私に許可なく他の女子と話してんじゃないわよ!今日だけ4回よ!仏の顔も3度までって言うけど、4回も許してる私は仏以上に温厚な性格だわ!いーい?これが本当に最後の忠告よ!次に勝手な真似したら・・・・」
そう言って、右拳で屋上フェンスを容易く殴り壊した。
椿「ひっ?!」
変な声を出してしまった・・・・。
こんな情けない声を彼氏が出していたら、普通の女子なら引いた目で見るだろう。
彼女「これで分かった?」
しかし、俺の彼女は引く事はない。
寧ろ押しが強すぎる。
椿「分かった分かった‼︎これからは許可取ってから話すから、落ち着いて!誰かに見られたら大変だから!」
と言いながら、俺は彼女に抱きついて背中をトントンと叩いて宥める。
器物破損で学校側から訴えられる事より、彼女の存在が公になる事の方が恐い。
何故なら、異世界と同様にこの世界でも彼女の独裁が始まってしまうからである。
彼女「うるさい!!私に指図するな!!!!」
と言いながら、彼女は歌舞伎の毛振りをする様に、体を大きく振る。
彼女に抱きついている俺はロデオマシン以上に振り回されている。
今この状態で彼女から手を離せば、学校の屋上からダイブする事になるだろう。
椿「ホントごめん!!!!全部俺がいけなかったから!!!俺はお前しか見てないから!!お前のことしか愛してないから!!だから怒らないでくださーーああああぁーーー!!!!」
彼女はピタッと動きを止め、怒り狂った時の獅子の毛の如く逆立っていた彼女の髪の毛が、少しずつ落ち着き始めた。
彼女「・・・・そうよ。分かれば良いのよ」
彼女の頬は少し赤くなっている。
意外に彼女はチョロいのだ。
しかし、俺の顔は青ざめている。
椿「そろそろ授業が始まるから教室に戻ろう?」
腑に落ちない事は沢山あるが、これ以上ヒステリックを起こされたら、俺の体がもたない。
彼女「そうね。でも、お前って呼ばないで。その呼ばれ方好きじゃないわ」
大多数の女子は、お前って言われるの嫌いだよな。
異世界出身のこいつも、そういうとこあるのか。
椿「あぁ、ごめん。次から気をつけるよ」
振り回されてクシャクシャにされた身だしなみを整えながら謝った。
彼女「ふふっ、私だけを見てるって、本当につぅちゃんは私の事が好きね・・・・・・・んっ?何か落としたわよ?」
ズボンを叩いている最中にポッケから手紙を落としてしまった。
彼女「手紙?・・・・・・・・女の匂いがするわ!!誰からよ?!」
まずい、これはラウンド2の予感が・・・・。
というか、どんだけ鼻が良いんだよ!!お前は犬か⁉︎
椿「それは、さっき言ってた隣のクラスの女子から教えてもらったレシピッ!!疚しいもんじゃない!!!」
俺は彼女を再び宥める。
彼女「どんな内容だろうが、女からの手紙よ‼︎どうして、私に報告しなかったのよ!!??ぶっ飛ばすわよ!!!!!」
しかし、効果はなかった。
女から手紙を受け取ったら報告しろなんて言われてなかったぞ。
椿「ぶっ飛ばすって・・・・・、そんなに怒らなくても・・・・」
それを聞いた彼女の眉間のシワが濃くなっていく。
彼女「はぁ?何言ってるの?つぅちゃんが、私の言う事をいつも聞いていれば、私は怒らずに済むのよ」
椿「えっと・・・・、もう少し優しくしてほし・・・・」
彼女「うるさい!!!黙れ!!私に指図するな!!ぶん殴るわよ!!!?」
彼女の髪の毛がまたもや逆立った。
・・・・これはまずい、黙っていよう。
椿「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
彼女「何?だんまり?何か言いなさいよ!!」
黙れば良いのか、喋って良いのか、どっちなんだ・・・・?
先程と同様に、すぐにごめんなさいと言えば、このような話は早く終了するのだが、何だろう・・・・、謝る気が失せた。
理不尽が多すぎて許せないというのもあるが、反抗心なのか好奇心なのか分からないけど、彼女にいつもと違う自分を見せつけたくなった。
それと、その後の彼女の反応が気になる。
驚いて黙るのか、逆上するのか、少しは反省するのか、はたまた俺の死が待っているのか・・・・ただ1つ言える事は、彼女が俺に惚れ直す事はないって事だけは分かる。
椿「すぅ・・・・・・」
肺に空気を溜め、柄でもないが怒鳴ってみることにした。
椿「うるせーのはお前だよ!!!!!いつもいつも気に食わないことあると屋上に連れてくんじゃねぇよ!!!何でお前は男子と普通に話してるのに、俺は女子と会話しちゃいけねぇんだよ?!何で女子を見るだけで肋を殴ってくるんだよ?!痛ぇーんだよ‼︎お前と付き合ってから何でこんなに息苦しい生活していかないといけないんだ??!!言っとくけどな、お前と付き合って良かったと思った事なんて、これっぽっちもないからな!!ふざけんなよ、この・・・・」
これから俺に彼女の熱く強烈なストレートパンチが飛び始まる・・・・・。
っという現実を見た・・・・。
この出来事は、俺がサキュバスにされる前の話である。