第2章 天空の世界 第1話 幽霊船
第1章 天空の世界
第一話・・・幽霊船
眩しかった光を二人が通り抜けた先の世界は空に浮く不思議な浮遊大陸の世界だった。
あたり一面自然が広がっており、陸の端にはフェンスが続いていた。
「なんか不思議な世界ね。」
ハースは目の前に広がる浮遊大陸を見つめながら言った。
「空の上の世界か・・・。雲が普段と近く感じるな。」
ファートは空の上を覆いかぶさっている雲を見上げた。空の上だから呼吸ができるか心配だったがこの世界では陸地と同じように人間が生活できるようになっている。
「見て、すぐ近くに町があるわよ。」
ハースは指差した方には町のような集まりが見える。
「行ってみようぜ。」
ファートが言うと二人は町に向けて歩き出した。
「ねえ、この世界にちゃんとした人間が住んでるのかな?モンスターだけが暮らしている世界があるって聞いたけど。」
「そんな世界があるんだ!?知らなかった。」
ファートはびっくりした様子で聞いた。
「この世界は大丈夫なんじゃない?人間が住める環境だしね。」
「あ・・・、そうかも。」
ハースはちょっと落ち着いた様子で言った。もしモンスターだけの世界に行ったら即襲われるだろう。二人はまだモンスターをもっていなっかたし知識も豊富なほうでは無かった。
二人が歩き出して20分が経過し目的の町の門に着いた。
「すいません、入国検査をしています。あなた方はどこの出身で目的はなんですか?」
門の前の警察らしき人が問いかけた。
「私たちはコンヤフの出身です。旅をしているのでこの町に入りたいんですが。」
「コンヤフか!俺もコンヤフの出身なんだ。じゃあお前さんたちは15歳かい?」
「はい15歳です。今日から旅を始めてこの世界が最初に訪れた世界なんです。」
ハースが答えると警察官は納得したような様子で言った。
「最近モンスターが人間に化けて入国し町を襲ったり盗難等の事件が多発しているんだ。君たちももし町でモンスターを見つけたら我々にすぐに伝えてくれたまえ。」
「はい、分かりました。入国ってことはこの町は国なんですか?。」
ファートが話に入り聞いた。
「ここはこの世界の王様が治めている城の城下町なんだ。いわゆる首都ってやつだ。首都だから警備も限界体制なんだよ。じゃあキミ達は入国したまえ。検査に引っ掛からなかったからね。」
そういうと警察官がボタンを押し、でかい門が開いた。門が開いて中に入るとレンガの建物にたくさんの人たちで賑わっていた。
「すごい人の数ね。」
ハースは驚いた様子を隠しきれずに言った。
「まず泊まれる宿屋を探そうぜ。」
ファートはそう言いながら周りを調べ始めた。周りの店の大半が喫茶店などで宿屋は見当たらない。二人は町の奥まで足を運べた。
「あれ宿屋じゃない?」
ハースが指差す方向には小さな宿屋らしき建物が建っている。二人はこの宿屋以外にこの町に無いと思い建物の中へ入った。
「いらっしゃい。お二人かね?」
中に入ると威勢のいい男性の声が聞こえる。
「二人です。2泊で一番安い部屋をお願いします。」
ファートの「一番安い」にハースは少し不満を持っていたが金銭面を考え何も言わなかった。
「一番安い部屋はここから一番左奥の部屋だ。ベットだけどいいか?」
「その部屋でお願いします。」
「ほら、その部屋の鍵だ。ぐれぐれも失くすなよ。」
そういって男性は部屋の鍵をファートたちに渡した。
「ありがとうございます。」
ハースが軽く頭を下げて言った。
「夕食は6〜9時までで、風呂が5〜7時までだ。時間が過ぎたら入れないから気をつけろよ。」
そういって男性は奥の部屋に戻り仕事の続きを始めた。
部屋に入り、風呂に入ったファートはハースが上がるのをロビーで待っていた。
「また例の幽霊船が出たらしいぜ。」
「またかよ。最近多いよな。毎日のように目撃情報が入ってくる。」
ファートの後ろで話していた二人の旅人の話が耳に入る。
「いい加減成仏してもらいたいぜ。地上の人間に被害が出そうで恐いんだよな。」
幽霊船?この世界は海なんかあったっけ?ファートが一人で考えているとハースが上がってきた。
「おまたせ。あれ、何か考え事?」
ハースが聞くとファートが幽霊船のことを話した。
「・・・、ちょっと恐いかも。でもファートが言った通りこの世界に海なんかないわよね。」
二人が考えているとファートと同い年ぐらいの青年が寄ってきた。
「キミたち、この世界に来たばかりかい?」
「えっ、何でわかったの?」
「この世界で幽霊船の噂を知らない人は旅人ぐらいだけだよ。あそうそう、自己紹介をしてなかったね。僕はマイク。いろんな世界を回りある情報を集めているんだ。」
マイクがそう言うとファートもすぐに自己紹介を軽くした。
「マイクは幽霊船の事を知っているの?知ってたら教えてほしいんだ。」
ファートが言うとマイクはいいよと言い、話を始めた。
「10年ほど前に空の上の盗賊と言われるグループがいたんだ。あちこちから宝などを盗み空の上の大型船で旅をしていた。しかしあるとき大事な宝を盗まれた科学者が魔法で天気をずらしその盗賊たちの大型船に雷を命中させ盗賊を捕らえようとしたんだ。しかし空の上で大型船は崩れたはずなのに何日経っても地上に落ちてこない。それからずっと待っていたけどいつになっても姿を現さずに2年が経過した。ある日突然宝箱が空から降ってきてその中を開けた人が中に入っていた爆弾の爆発に巻き込まれるという事件が起こったんだ。たくさんの研究者達が降ってきたと思われる地域を飛行機で調べに行くが今度は行った研究者達が帰ってこないんだ。一人だけボロボロになりながら帰ってきた人が言うには、雲の中に死んだはずの盗賊たちが大型船があったらしい。それからということ毎日のように飛行機やヘリコプターが幽霊船を目撃しているだ。それで地上の人は幽霊船がいつか地上に降りてきて災いを起こすと言う様になったんだ。」
「その大事な宝ってなんだろうな。」
話を聞いた後にファートが言う。
「それはまだ誰も分からないんだ。」
ハースは少し足が震えている。そういえば恐いもの苦手だっけ。ハースは口が開けないようだ。
「それじゃあ僕は今日でこの宿屋を出るんだ。またどこかの世界で会えるといいね。それじゃあまた。」
「話ありがとう。気をつけてな。」
ファートがそういうとマイクは振り返らずに宿屋のドアを出た。
「幽霊船・・・。なんか厄介なことに関わりそうね。」
震えているハースが言った。
「あぁ、そうかもな。」
そういうと二人の間に夜の寂しい風がゆっくりと通おり過ぎた。