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黙って笑え。それ以外は望まない  作者: ほねのあるくらげ
第三章

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帰還

 滞在を終えて王宮に帰還したアーニャを襲ったのは、強い眠気とけだるさだった。遠出から帰ってきた事で安堵したのか、頭がぼうっとする。とにかく早く休みたい。ディウルスへの挨拶もそこそこにアーニャは私室へと戻り、寝台に倒れ込んで泥のように眠り込んだ。


*


 けだるさは翌朝になっても解消されなかった。それどころか頭がじくじくと痛む。そんなアーニャの様子に気づいたアリカが呼んだのは、リアレアの兄であり王家の侍医であるセトラ侯爵だった。彼とはディウルスの婚約披露のパーティーで一度会った事がある。その時は、常に口元にへらへらとした笑みを浮かべた、どこかつかみどころのない青年という印象だったが、今の患者(アーニャ)を見る眼差しは真剣そのものだ。


「疲労からくる風邪じゃろうなぁ。しばらく安静にしておれば治るじゃろうて。そう心配する事はあるまい」


 診察を終えたセトラ侯爵が微笑を浮かべると、傍に控えていたエバ達もほっと息を吐いた。自分ではあまり実感はなかったが、新しい環境に来た事で色々と大きな変化もあり、それに身体がついていけなかったのかもしれない。


「陛下には儂から連絡しておこう。もし見舞いにいらしたら、その時はどうか邪険にせんでくれ」


 そう言ったセトラ侯爵は、傍らの看護婦―アーニャの記憶が確かなら、彼女はセトラ侯爵夫人だったはずだ―に何か指示を出した。看護婦は小さく頷き、手元の紙に書き込みを始める。その後、二人は部屋を出ていった。

 

「……迷惑をかけてしまってごめんなさい」


 エバ達はぱたぱたと静かに動き回ってアーニャの看病のための準備を始める。そんな様子を見て、処方された疲労回復にいいという苦い薬をちびちびと舐めるように飲みながら、アーニャは蚊の鳴くような声で口にした。


「迷惑?」


 きょとんとした顔のアリカが一瞬手を止める。何を言われたのかわからない、といった素振りでアリカはリアレアを見るが、リアレアも困ったように首をかしげていた。他の侍女達も同様だ。その中で唯一、エバだけは痛ましげに眉根を寄せている。


「姫様、どうかそのような事はおっしゃらないでください」

「でも……」

「おやめください。姫様はただ、ゆっくりお休みになられてくださればいいんです」


 薬を飲むよう優しく急かされ、アーニャはなんとかグラスの中身を飲みほした。幼子を寝かしつけるようなエバの様子に辟易しながらも、そのままアーニャは再び眠りにつく。彼女が寝息を立てるころには、室内には甘い百合の香りが充満していた。


*


「ん……」


 どれだけ眠っていたのだろう。アーニャは目をこすりながら寝ぼけ眼のまま頭を動かす。寝台の横を見た瞬間、アーニャは小さく息を飲んだ。この顔を見たらすぐ騎士団に通報してくださいとでも但し書きがありそうな凶悪そのものの顔が目覚めると同時に目に飛び込んできたのだ。悲鳴のひとつも上げたくなるだろう。しかしその衝撃のおかげで徐々に頭がはっきりしてくる。傍にいたのはディウルスだった。申し訳なさに縮こまりながら起き上がると、アーニャの起床に気づいた侍女が夜心香を切ってくれた。


「陛下、いらしてくださったのですか?」

「ああ。……無茶をさせたようだ。悪かったな」

「そんな、陛下がお気になさるような事ではありませんよ。むしろ、謝るべきはわたしのほうかと……」


 もごもごと呟いた後半部分はディウルスの耳には届かなかったようだ。なんとも言えない気まずさに身をよじっていると、ディウルスが心配そうに手を伸ばしてくる。額に押し当てられた手はごつごつとしていた。


「そう簡単に熱は下がらない、か。……まあいい、時間はたっぷりある。たらふく食ってゆっくり寝ろ。そうすればそのうち治るだろう」

「そうさせていただきます。……あ、そういえば、ロゼル様のお家の夜会は……」

「気にしないでいいぞ。体調が悪いのに無理していく事はない。俺は行かねばならんがな」


 気を悪くしないでくれ、とすまなそうに言われても、何に気を悪くすればいいのかわからない。むしろその心配をするのはアーニャのほうだ。意図したものではないとはいえ、約束を反故にしてしまうなど。せっかく予定を入れてもらったのに、このせいでディウルスの名前にも傷がつかないか心配だ。ロゼルにも謝っておいたほうがいいだろう。


「さて、俺はそろそろ帰るとするか。いいか、姫。余計な事を考えず、今は身体を休める事に集中するんだ。お前は細かい事を気にしすぎるきらいがある。いちいち気に病んでいては治るものも治らないぞ」


 まるでアーニャの心の内を見透かしたようなディウルスの指摘に、アーニャは小さな声で返事をする事しかできなかった。


*


「もう戻っていらしたのですか?」


 執務室に戻ると、書類を抱えたリットが驚いた顔をした。ディウルスがアーニャの見舞いに行っている間に来たらしいが、執務室で待たせていたアッシュやヴィンダールと談笑していたようなので特に時間を浪費させたという事もないだろう。


「ちょうど姫が起きたからな。人の気配で眠りが浅くなっていたのかもしれんだろう」

「ルルクさんの夜心香があるんですから、そんな心配はいらないと思いますがね。アーニャ様が目覚めたのは偶然でしょう」


 リットから書類を受け取ってざっと目を通す。署名をするためペンに手を伸ばしたディウルスは、そこではたと手を止めた。


「リット、ハルトラスを呼んできてくれ。いつでもいいが、姫が倒れている間に頼む。心配事は知らぬうちに片付いていたほうがいいだろう」

「ハルトラスというと、ベーフ伯爵家の嫡男ですか?」

「そうだ。奴がロゼルに付きまとっているという話を姫がしていてな。個人の問題に王として口を挟むのはどうかと思うが、その……こ、婚約者の友人が困っていて、その事で婚約者も胸を痛めているんだ、少しぐらいは力になりたいだろう」


 ディウルスの意識にわずかな変化が起きた気づき、リットはわずかに目を見張った。ディウルス本人に自覚があるのかは知らないが、いい兆候ではあるだろう。しかしハルトラスに関する噂を思い出したリットは、ディウルスが動くまでもないと苦笑を浮かべた。

  

「ハルトラスなら、ベーフ伯爵に自宅謹慎を言い渡されているそうですよ。なんでも、ヘイシェルアール公爵がそうなるよう圧力をかけたとか。……最近のハルトラスの振る舞いは目に余るものがありましたから、それも仕方ない事かと」

「何? それはそんなに有名な話だったのか? 俺の耳にはちっとも入ってこなかったが」

「陛下は貴族同士のもめ事にはまったく関心を示してくださいませんからね。もちろん、ハルトラスはうまく立ち回っていましたし、ヘイシェルアール家が身内の問題を晒さないよう手を回していたというのもありますが」


 ベーフ家はヘイシェルアール家の分家ですからね、とリットは笑う。アライベル国内の貴族は基本的に五つの派閥にわかれていて、自分の派閥外の貴族とはそれほど密な繋がりがあるわけではなかった。とはいえ、派閥自体は五公と呼ばれる家を中心にまとまったもので、明確な区分やしっかりした関係があるわけでもないのだが。

 しかし、これが分家になるとまた別だった。親戚筋なら、派閥内のただの貴族より優遇したり圧力をかけたりする必要もあるからだ。リットの家も五公のうちの一つだが、王家や他の派閥の者に知られたくない分家の痴態や醜態はいくつかある。その辺りの問題は話が外に漏れる前に父や祖父が潰してきたし、次期当主であるリットもそうするつもりなので、ヘイシェルアール公爵が身内の問題を内々で解決しようとする事に理解はあった。もっとも今回はハルトラスのフットワークの軽さやヘイシェルアール家の目の届かない場所での振る舞いも多かったという事で、完全に隠す事ができなかったという事に同情してしまうが。


「今は自宅謹慎で済まされていますが、近いうちにヘイシェルアール家の領土にある辺境の街に兵士として飛ばされるそうですよ。いくらヘイシェルアール公爵夫人の実家でも、次期当主がそのありさまではベーフ家の繁栄は絶望的といったところでしょうね。ベーフ伯爵は別の分家から養子を取る事も視野に入れているらしいですが、本家との関係の修復は難しいかと」

「そうか。それでは無理に王宮に呼び出すわけにもいかないな。……まあ、これに懲りたハルトラスが自分の愚行を反省して更生する事を祈っておくか」

 

 ヘイシェルアール公爵がきっちり落とし前をつけたのなら自分の出る幕はない。執務机の端に置かれた間近に迫ったヘイシェルアール家の夜会の招待状をちらりと見て、ディウルスはそう結論づけた。


* * *


 精霊と会えない事を除けば、安心できる場所だったはずの我が家に知らない人がたくさんいる。派手な事や楽しい事が好きな姉達のためにと父が定期的に催す夜会はいつだってロゼルの心を暗くさせた。

 家にいる時は精霊と会話する事もできない。幼いころ精霊と会話していた時、母に気持ち悪いと吐き捨てられた事がロゼルの心に大きな傷を残していたからだ。精霊も空気を読んでいるのか、母の目の届く場所ではロゼルの前に現れようとはしなかった。もっとも、母は自分がロゼルの精霊を視る才能とロゼルの不可視の友人達を否定した事など覚えていないだろうが。

 本音を言えば大勢の招待客がいる大広間になどいかずに部屋に引きこもっていたいのだが、そんな事を家族が許してくれるはずもない。主催者の家族の一人としていやいや参加したロゼルは、踊る事も喋る事もせず仏頂面で佇んでいた。招待客の相手は華やかで美しい二人の姉が頼まなくてもしてくれる。ちらちらと無遠慮な視線を投げてくる者はいても、愛想の欠片もない痩せぎすの少女に声をかける奇特な者などいない。姉の存在はロゼルにとって劣等感の象徴ではあったが、こういう時だけはありがたかった。

 精霊と会話する事もできず、無理やり大勢の人がいる空間に連れだされた苛立ちと不安から、勧められたゼクトのグラスをやけになって受け取る。給仕していたのは見慣れない使用人だったが、きっと新しく雇ったのだろう。

 酒など飲んだ事もないが、この機会に飲んでみよう。もう自分も十七歳になったし、咎められはしないはずだ。しかし、いざ飲んでみようと思うとどうしてもその踏ん切りがつかずにためらってしまう。つんと鼻をつく酒の臭いに恐怖をかきたてられ、何度も震える手でグラスを口に運ぼうとしても失敗してしまった。

 そうやって葛藤を繰り返しているロゼルがふとグラスから顔を上げた時に目に入ったのは、知らない令嬢と談笑しているルルクの姿だった。息が詰まって胸が苦しくなる。

 まさか視線に気づいたわけではないだろうが、一瞬だけルルクがこちらを見た気がした。しかし彼の紫の瞳はすぐに興味を失ったようにロゼルからそらされる。次の瞬間には、そのなごやかな微笑みは見知らぬ令嬢にだけ向けられていた。だが、それで落胆するほど彼に夢を抱いていない。ルルクが自分を女として見ていない事など、はじめからわかっていたのだから。

 この胸の痛みにも、すっかり慣れてしまった。昔からそうだ。そのたびにアンドレアスをはじめとした友人達に慰めてもらって、その事でルルクにからかわれて。いつまで経ってもその関係を変えられない、彼に意識してもらえない。ただそれだけの話だった。

 ロゼルは小さくため息をつく。人も派手な催しも苦手だ。こういう場にいると嫌な事ばかりを思い出す。いっそこっそり抜け出してしまおうか。


(……みんなに会いたい)


 アンドレアスとぺトルスはロゼルの部屋にいるはずだ。アントーンとエヴァ、それからラインホルトとハイジは庭にいるだろう。ピウスとアブラハムは屋根裏かもしれない。一応最低限の挨拶は済ませたし、さっさと大広間を出て夜会が終わるまで彼らと過ごしていよう。そう決めたロゼルは、結局一度も口をつける事のなかったゼクトのグラスを片付けてもらおうと給仕を探した。


「やあ、ロゼル。……へえ、ずいぶんいいものを持ってるじゃないか。でも、君にはこっちのほうがお似合いだよ」

「!」


 しかし給仕に預けるまでもなくグラスが奪われる。代わりに押しつけられたのはオレンジジュースだった。奪ったグラスを片手にルルクがにやにやと笑っている。とっさの事に驚きながらも、ロゼルはその動揺を悟られぬよう彼を睨みつけた。


「……何の用?」

「まだ君に挨拶してなかった事を思い出したからね。そしたら、君が飲めもしないものを持ってるじゃないか。いくらここが自分の家だからって、悪酔いするのはよくないと思うな」


 保護者じみたその言動が気に食わない。手のかかる妹分扱いはもううんざりだ。向こうのほうが数年早く生まれただけだというのに、それだけの差がどれほど大きいというのだろうか。

 女性を伴わずに自分のもとに来てくれたのが嬉しくないわけではないが、恋愛対象として見られていないような振る舞いは嫌だ。どうしても素直に従いたくない。だからロゼルはルルクを睨みつけたまま、不機嫌そうに吐き捨てた。


「だからって、人のグラスを勝手に取ってもいいと思ってるのかしら」

「年長者として当然の事をしたまでだけど? 子供の飲酒は大人が監督しなきゃ、ね?」

「……ふぅん。でも、本当は貴方だって飲めないんじゃないの?」

「え?」

「だってわたくし、貴方が夜会でお酒を飲んでいるところを見た事がないわ」


 ロゼルは煽るように口角をわずかに吊り上げる。本当は彼女も、ルルクが酒好きな事を知っていた。しかし彼は絶対に夜会で酒を飲まない。酒は好きだが、酔わない自信があると断言できるほど強くないと自覚しているからなのだろう。

 酔っていた事を理由に身に覚えのない既成事実を押しつけられるのが嫌だからか、あるいは本当に酔った勢いで女性に手を出してしまう事を恐れているのか。理由のほどは定かではないが、私的な時間でないときのルルクは必ずノンアルコールのものしか口にしない。ずっとルルクの事を見てきたのだ、ロゼルはその事だって知っている。だが、どうしても一言言わなければ気が済まなかった。


「わたくしからお酒を奪ったんだから、その責任を取ってくださらないと。……ねえ、証明してみせてよ。ルルク、貴方はわたくしを子供扱いできるほど大人なの?」


 挑発の言葉を口にしたところでルルクが飲むはずがない。あれこれと理由をつけられて言い負かされるのは目に見えていた。

 ゼクトの一杯程度で酔いは回らないかもしれないが、一杯飲んでしまえば歯止めが効かなくなるものだ。一杯が二杯になり、二杯が三杯になり、下手をすれば明日の朝日を見るまでの記憶が飛んでいる事態に陥る事だってありえる。それはルルクだって避けたいだろう。素面ですら女癖の悪い彼が、泥酔しているときに犯す失態などたやすく想像できるのだから。だからこれは、少しルルクを困らせたいだけのささやかな反抗で終わるはずだった。


「仕方ないなぁ。今日だけだよ? もしこれで酔っちゃったら……まあ、大丈夫だとは思うけどね? 僕、君が思ってるより()()だから」

「え?」


 だが、ルルクの行動はロゼルの予想を反していた。苦笑したルルクはグラスを傾ける。シャンデリアの光を反射して煌めくゼクトを、彼はなんなく飲みほした。


「こういうところでお酒を飲むのはいつぶりだろうね。いつも――」


 ぽかんとするロゼルに対し、ルルクは勝ち誇ったようににやりと笑った。だが、余裕の表情はすぐにこわばる。


「……はッ、ぅ……くッ……」

「ル、ルルク? ちょっ……だ、大丈夫!?」


 苦しげに顔を歪めてうめき声を上げ、ルルクは激しく咳き込み始めた。ロゼルは慌てて駆け寄り、彼の背中をさすりながらその顔を覗き込んだ。


「……ぁは。びっくり、した?」


 ルルクは右手で口元を覆っているため、今の彼がどんな顔をしているかはわからない。だが、目は笑うように細められていた。きっとその隠された口元も笑みの形を作っているのだろう。まず安堵が押し寄せたが、それすら覆すほどの怒りが湧いてきてロゼルの頬がかぁっと熱くなる。


「ふざけないでよ! そういう悪ふざ――ッ!?」


 しかしその瞬間、ガラスが砕ける音が響いた。ルルクの握っていたグラスが床に落ち、割れてしまった音だ。

 ルルクは左手で胸元を握りしめながら膝から崩れ落ち、再び苦しげな咳を激しく繰り返す。息も絶え絶えになりながら、彼はロゼルに向けて何かを言った。本人は「大丈夫だから心配しないで」と言ったつもりのようだが、荒い息遣いとかすれた声のせいでかなり聞き取りづらい。


「な、なによ……それ……?」


 いやな汗が彼の頬を伝っていた。かすかに震える指の隙間からは唾液と血が混ざりあった粘ついたものが垂れている。


「嘘……いや……そんな……!」


 異変に気づいた周囲の客がざわめきだす。遠くからディウルスが、リットが、アッシュが駆けてくるのがロゼルにも見えた。だが、今はもう何も考えられない。

 ルルクの身体から力が抜ける。あらわになった口元は真っ赤に染まっていた。彼はそのまま大理石の床に倒れ伏して。その瞬間、ロゼルは絹を裂くような悲鳴を上げた。

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