早朝の呼び出し
緋桜学園にある特待生専用の寮のとある一室、そこはどこまでも続く漆黒の闇に包まれている
この暗闇の中で一人、青年が自身の腕を枕代わりにして眠っている
眠る青年の周囲に、青年を囲むこうな形で巨大な生物が数匹眠っている。
巨大な生物たちは、時折訪れる扉の向こうに気配を感じてはその気配が去るとまた、眠りに就く
この行動が幾度か続き、部屋の外では日が昇り始めようとしていた、そのとき
RiRiRiRiRiRiRiRiRiRiRiRi
部屋の隅に置いてあった携帯に呼び鈴がかかった
携帯がなると大きな(厳密には一軒家ぐらいの大きさ)白い狼のような獣が携帯の方へと歩き出し、携帯を咥えて戻ってくると、青年に頭を擦り付けるようにして起こし始めた。
青年は億劫そうに瞼を開け、白い狼のような獣から携帯を受け取るとありがとうと呟いて通話ボタンを押した。
「……朝っぱらになんのようだ。」
「やぁ、おはよう。早速だが学園の方で問題が発生した。その処理を頼みたい。」
「・・はぁ、どうせ俺に拒否権はないんだろう?」
「その通りだ。まぁ、頑張ってくれたまえ‘伊集院`君」
青年、いや、伊集院は電話が切れるとんーと背伸びをして立ち上がり、パッと身なりを整えると白い狼のような獣に話しかけた。
「八房、一緒に来てくれ。他の皆は向こうに戻っててくれ。」
伊集院の言葉で、八房と呼ばれた獣以外の生物たちはいつの間にか開いていた横穴の中へと帰って行った。
八房は伊集院の傍へ寄ると周囲の景色と同化するかのように姿を消した。
が、姿が見えずとも雷威には八房が自分の近くにいることが気配でわかってい
た。
部屋に実質自分と八房しかいないのを確かめ、伊集院は部屋を後にした。
学園長室、ここでは今この学園の学園長である緋桜刹那が書類整理をしていた。
書類整理と言ってもすでに秘書が目を通したものに判子を押すだけの簡単な作業なのだが、緋桜はここ二時間ほど机の上に盛られた書類の山と一人挌闘していた。
しかし一向に終わりが見えない、だがここで放棄してしまえば明日の朝にはこの部屋は書類で埋もれてしまうだろう。
仕方ない、と己を奮い立たせ、一番上に積まれた書類に手を伸ばした、その時
コンコン
誰かが学園長室を訪ねてきたらしい。
緋桜は入りなさいと言い、書類に目を移し書類整理を再開した。
キィと音を立てて扉が開き、一人の青年が入室してきた。
青年は来客者用のソファのドカッと腰かけると足と腕を組み、緋桜を睨みつけた。
しかし緋桜は青年が睨んでくることなどどこ吹く風で、相手にしようとしない。
緋桜が一向に自分の事を相手にする気がないとしると、何かを諦めたかのようにはぁ、と溜め息をついた。
「…おい刹那、人の事を呼びつけておいて無視はないんじゃないいか?」
「だって、仕方ないでしょう?入ってくるなり人の事をずっと睨んでくるんですから。」
「しゃーねぇだろ。こちとら朝っぱらから起こされて機嫌悪ぃんだよ。」
「それは・・まぁ、私も申し訳なく思っていますが、しかしこの件は早急に対処してもわらねばならないものでしてね。そこはご容赦頂きたい。」
青年は緋桜の話しから何か厄介なことに巻き込まれたことを悟り、はぁと溜息をついた。
「そんなに急ぐんだったら尚更さっさと言えっつーの。で?その火急の用件ってのは一体何なんだよ。」
緋桜は手に持っていた判を机に置き、青年の方を見据える。
「最近君達特待生についての噂が頻繁に飛び交っていましてね。えぇ、そんなことはよくあるんですよ。そんなことは・・・・・・。問題は、その噂が妙に信憑性が高いところです。」