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猫とワルツを  作者: ピジョン
第4章 猫とワルツを
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第14話 ラスト・ワルツ2

 ニーダーサクソンの首都『サクソン』の東西南北の四ケ所から火の手が上がった。

 悲鳴を上げ逃げ惑う人々を、馬で蹴散らし、サクソン中央にある宮殿を目指すアキラだが、全身に不穏な気配を感じている。

 火の回りが早い。

 異常な速度で燃え広がるそれは、アキラの想像を遥かに超えている。

 首都サクソンの造りは、城下町である『上サクソン』と貧民の住まう『下サクソン』に別れている。

 アキラは、自らの侵入路に選択した『下サクソン』――オールドシティと呼ばれるそこでは放火を行う指示は出していない。

 古い木造の建築物が多いオールドシティで放火を行うのは、彼女自身の身の危険を呼び込むため、これを避けたのだが、侵入時、既にオールドシティは炎上を開始していた。


 誰かが、サクソンを攻めている!


 アキラは、己以外の存在で、このような凶行を犯しそうな人物に、一人だけ心覚えがある。



 ――のためなら、世界を焼き尽くす覚悟がある!



 狂気の笑みに青い瞳を輝かせ、そう言い切ったエルフの女を思い出す。


「くっそぉ! エルめ! しくじったなぁ!?」


 苛立ちを吐き出しながら、馬に鞭を振るうアキラの騎影を追うように、一塊の炎が追走して来る。

 アキラの背後から迫る炎の塊は、徐々に人型を象って行く――それは、


「性悪女!」


 イザベラ・フォン・バックハウスだ!


 アキラの背筋が総毛立つ。

 炎に包まれたイザベラ・フォン・バックハウスの纏う空気は、生者のそれではない。


「おい、性悪女! ボクを追って来るんじゃない!」


 死してなお、この決戦の地に駆けつけるとは、どういうことだ?

 『呪術師』イザベラ・フォン・バックハウスは、どれだけの怨念を持って、この怪奇を可能にしたのだ?

 それらの疑問に、イザベラは答えない。

 オールドシティの石畳みの道を、駆け抜けながら、馬上でアキラは激しく舌打ちする。


「おまえもか! おまえも、やつが欲しいのか!?」


 その問いに応じるように、イザベラを象る炎が激しく、妖しく揺らめき立つ。


「なんてたちの悪いエルフだ! これだから、ボクはエルフが嫌いなんだ!」


 悲鳴混じりのアキラの嘆息をあざ笑うように、炎の化身と化したイザベラから炎弾が飛び出して、周囲に新しい火種を生み出して行く。

 ぱっちりとした少し吊り上がり気味のアキラの瞳に、涙の筋が浮かぶ。


「くっそぉ……やっぱりだ……ボクだけだって言ったのに……ボクだけだって言ったのに……!」



 ……一緒に食事をしたり、話し込んだりするような仲ではないです。



 あっけらかんと言ったレオの顔を思い出した時、アキラの怒りは頂点に達した。

 殴らねば気が済まない。

 記憶を失っているらしいが、そうしてやれば、きっと具合がよくなるだろう。


「うすらとんかちの浮気者……行くから、逃げるなよぉっ!」


 燃えるニーダーサクソンに、アキラの呪詛が響き渡った。


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苛烈に生きる弟の話を……
『アスクラピアの子』
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