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死語が禁呪の異世界で、家庭の口癖だけで世界救った件

作者: 桜井芳乃
掲載日:2026/08/12

桜井ことはは、少し変わった家庭で育った。

家族は“死語”を日常語として使う。

ことはにとっては、それが普通の会話だった。


朝、父は伸びをしながら

「ガチョーン!」 と叫ぶ。


夕飯を出す母は、

「今日の出来はバッチグーよ」 と胸を張る。


学校で使うと友達に笑われるが、ことはは本気で意味が分からない。

「なんでみんな驚くの?うちでは普通なのに……」


そんなある日。

父の書斎で古びた辞典を見つけた。

表紙には金文字で《死語辞典》。


ページを開いた瞬間、光が弾け、視界が真っ白になった。

  ◆

【異世界、雷鳴の谷】


気づくと、そこは荒れた大地だった。

紫の雷雲が空を覆い、鎧を着た戦士たちが慌てて走り回っている。


「魔獣が来るぞ!言語魔法で応戦しろ!」


巨大な黒い獣が村へ迫っていた。

ことはは混乱しながら後ずさる。

魔獣が跳びかかる。 反射的に、ことはは叫んだ。


「ガチョーン!!」


ドカン、と白い雷が地面を走り、道化のような雷精霊が現れた。

精霊の放った電撃により、魔獣は目を回してドサリと倒れ込む。


戦士たちは凍りついた。

「か、古代雷族の禁呪……ガチョーンを使った……!」

「まさか、失われた古代語を操る本物の巫女……?」


ことはは本気で困惑した。


「え、いや……うちの家で普通に使ってるだけなんだけど……?」

 ◆

【死語召喚、連発】


だが、魔獣の群れがさらに迫る。

《死語辞典》が勝手にめくれ、光る文字が浮かび上がった。


「シェッー!」


バチバチバチ! と細い白雷が高速で走り、魔獣の脚を鮮やかに切り裂く。


「ナウい!」


カァン! と、ことはの身体が雷速化し、跳び回るように敵の攻撃を回避していく。


「ホワイトキック!」


ドガァァン!凄まじい白雷脚が発動し、迫る魔獣を一撃で吹き飛ばした。

ことはは(あ、これ、お母さんがパート先でスベった時に『あ〜今のホワイトキック(しらける)だわ〜』って言ってたやつだ……)と心の中で冷静にツッコミを入れながら、迫る魔獣を蹴り飛ばしていた。


戦士たちは恐怖で震えた。


「雷族の奥義を連発するなど……ありえん……!」

「この少女、古代語を完全に使いこなしている……!」


ことはは肩で息をしながら、ツッコミを入れる。


「いや、ほんとに……ただの実家の言葉なんだけど……?」

 ◆

【雷族の王、アジャ=パー】


最後に、山のような巨大魔獣が現れた。

このままでは村が壊滅しかける。


辞典が強く光り、最後のページが開く。

そこには、父がピンチの時によく使っていた言葉が書かれていた。

――《アジャパー》

ことはは全力で叫んだ。


「アジャパーーーー!!」


バリバリバリバリ!!!

雷鳴が世界を割り、天から巨大な白雷の王が降臨した。

王は一撃のもとに、巨大魔獣を塵一つ残さず消し飛ばす。


戦士たちはその場に跪いた。


「古代雷族の王……アジャ=パー……!」

「畏れ多き巫女よ、どうか帰還の古代語を唱えるのだ……!」

辞典が再び光り始める。ことはは少し笑って、いつもの調子で手を振った。


「じゃ、バイビー」光に包まれ、ことはは消えた。

   ◆

【元の世界】

自宅のリビングに戻っていた。

何事もなかったかのように、父がテレビを見ながら言う。


「お、ことは。今日もバイビーな一日だったな!」


ことはは手元の辞典を見つめて、小さく苦笑した。


「……うちの家族、ほんとナウいんだけど」


(めでたし、めでたし)



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