第9話
無事に紺野を家まで送り届けられ、家に帰って床に座り込んだ。
段々と逃げ場がなくなっていく。
さっきのは偶然にしても、タイミングが悪い。
あくまで“教師と教え子”という立場で接しているが、紺野はそれを飛び越えてくる。
俺はバカだ。
連絡なんて無視すればいい。
でも、俺はあいつが卒業したからといって、他人のようには扱えないんだよ。
何が正しいかなんて、わからない。
着替えようと立ち上がった時、本棚にある卒業アルバムが目に入った。
手にとって、恐る恐る開いた。
自分のクラスの部分までページをめくると、俺が知らない紺野が居た。
修学旅行で、他の女子生徒とふざけて笑っている写真。
文化祭の準備で、ジャージでペンキを板に塗ってる姿。
体育祭で、応援してる姿。
紺野はあの一年、ちゃんと青春していたんだな。
俺が一年目でいっぱいいっぱいの中。
集合写真を見ると、感じる。
お前は、特別な存在なんだと突きつけられた気がした。
* * *
毎日はあっという間に過ぎて、とうとう金曜の夜になった。
明日、ここからかなり離れた駅で紺野と会う約束をした。
もちろん、人に見られないために。
紺野はよくわかっていないから、楽しみにしている。
毎日毎日メッセージを送ってきて、朝は自撮り写真、夜はその日何があったか書いてある。
そして寝る前に、『好きです』と送ってくる。
俺は、何一つ返信していない。
罪悪感だけが、増すばかりだった。
その時、また紺野からメッセージがきた。
『明日楽しみです!おやすみなさい』
紺野が明日、俺が言った言葉でどんな表情をするのか考えると、少し怖くなった。




