第8話
──月曜日の朝
あまり寝た気がしなかった。
スマホを見たら、メッセージが届いてた。
紺野からだった。
しかも写真付きだった。
『おはようございます!今日はこんなコーディネートです。お仕事頑張ってください!』
鏡に映った姿を自撮りした画像。
画像はやめてくれ。
心臓に悪い。
画像をトーク画面から消した。
そして。
『今週の土曜、会って話そう』
意を決して、送った。
気を取り直して準備して、車に乗って学校に向かう。
学校に着いて、職員玄関に向かって歩いていた時――
「夏生先生!」
後ろから聞こえた。
驚いて振り返ったら、三年の生徒だった。
女子が数人。
「おはようございま~す!」
そのまま女子生徒たちは、昇降口まで歩いていった。
紺野には、生徒の時はまともに挨拶もされなかったな。
つくづく、訳がわからなかった。
* * *
その日はトラブル対応で、かなり仕事が終わるのが遅くなった。
へとへとになって、職員玄関を出た。
その時、着信があった。
紺野からだった。
今度は何の用だ。
「どうした?」
『先生……助けてください』
……どういうことだ?
「何かあった?」
『変な人に追いかけられて、今近くにあった家の庭に隠れてるんです』
「俺じゃなくて警察に連絡しろよ。あと親御さんに……」
『先生に来てほしいんです』
紺野は、泣いていた。
「……そこで待ってろ」
とりあえず、紺野のいる場所に行こう。
紺野から、現在地が送られてきた。
結構ここから遠いな……。
約30分くらい運転して、やっと着いた。
紺野に着いたことをメッセージで伝えた。
紺野は、そーっと出てきた。
「先生、ありがとうございます。ごめんなさい」
「それはいい。親御さんに連絡した?」
紺野は、しばらく何も言わなかった。
「うちの両親は仕事が忙しくて、ほとんど家に居ないんです」
──そういえば。
紺野の親は、こいつが在学中、保護者面談の時に来なかった。
ほとんど電話も繋がらなかった。
一度も会ったことがない。
とりあえず、紺野を車に乗せて家まで送った。
紺野の家は、周囲の家と比べて突出して大きかった。
おそらく、相当裕福な家庭なんだろう。
ただ、家の電気は消えている。
誰もいないのか?
「先生、家まで送ってくれてありがとうございます」
紺野は車から降りて、自宅の玄関の前に立って、こちらを振り返った。
……見送ろうとしてるのか?
「危ないから、早く家に入れよ」
紺野は、なぜかこちらに近づいてきた。
そして、俺の耳元に顔を寄せた。
「先生、大好き」
それだけ言うと、急いで玄関の中に入っていった。
……現実が、俺の予定を狂わせていく。




