第4話
仕事が終わって、家に帰る前に本屋に寄った。
今日は、俺の好きな作家の小説の発売日だった。
売り場に行って、本を取ろうとした時――
「先生」
この声は……。
振り返ると紺野がいた。
「先生、お疲れ様です」
紺野は微笑んだ。
──なぜここにいる。
「偶然……だね」
まともに目が合わせられない。
「先生、この作家さん好きなんですね。私も好きなんです」
紺野も手に同じ本を持っていた。
紺野も読んでるのか……。
「先生、他にどんな本を読むんですか?」
「色々……」
誰かに見られたらやばい。
早く帰らねば。
「じゃあ……」
紺野を置いて、レジに向かって列に並んだ。
「先生……背中になんかついてますよ?」
紺野が後ろにいて驚いた。
「あ、シールでした!」
紺野の指に、仕事中に使っていたシールが付いている。
「ありがとう……」
紺野はニコニコしてとても嬉しそうだ。
俺はハラハラして落ち着かない。
二人とも会計が終わって、帰ろうとしたら――
「あ、次のバスまで30分……」
紺野がスマホを見ながら呟いた。
そして俺を見た。
これはそういう流れに持っていく気か。
「駅まで送って行くよ……」
「ありがとうございます!」
仕方ない。どうしようもない。
駐車場に着いたら、紺野は助手席を開いた。
「待て待て!後部座席に座って!」
「なんでですか……?」
「誰かに見られるかもしれないだろ」
「見られたら何かまずいんですか?」
「……とにかく後ろに乗って」
紺野は仕方なく後部座席に乗った。
駅までの間、会話はなかった。
駅のロータリーに着いて紺野を下ろした。
「じゃあ、気をつけて」
俺はすぐに出発した。
紺野の顔を見ることもなく。
確かに、何も悪いことはしてない。
ただ――
俺の立場も体裁も、説明する気もなかった。
とにかく、もう関わらなければいい。
紺野には悪いけど、どう考えても――
お前と恋愛するのは、色々と都合が悪い。
お前は悪くない。
俺が選んだ道だから、そうするしかないんだよ。




