第3話
帰宅してから俺は放心状態だった。
運転中も正気じゃなかったから、ヤバかった。
紺野に「好きだ」と言われたが、 俺はてっきり嫌われていると思っていた。
嫌われてなかったことには、安心した。
でも――
いきなり「好きだった」とか、「付き合ってほしい」とか……。
教員あるあるなのか?
大学の同期に聞くか……。
その時、スマホにショートメッセージが届いた。
知らない番号。
『先生、今日は突然すみませんでした。返事は急いでないので、ちゃんと考えてくれると嬉しいです。紺野雪』
……どうしたものか。
俺は紺野とまともに話したことがない。
どんな奴なのかよくわからない。
判断材料がない。
ただ、俺は教師で、あいつはついこの前まで生徒だった。
──アウトだろ……。
卒業してはいるが。
でも、俺は紺野のことを知りたいと思ってしまった。
しかしどうやって?
答えのない迷路の中を彷徨ううちに眠くなり、そのまま寝てしまった。
夢の中に制服を着た紺野が出てきて、俺に近づいてくる。
あの笑顔で。
「先生、好きです」
……そう言って、消えていった。
アラームで目が覚めて、スマホのメッセージを見てみた。
やはり夢ではかった。
とりあえず、今は仕事のことを考えよう。
すぐにシャワーを浴びて学校に向かった。
学校に着いて職員室に入ると、男の先輩教諭が近づいてきた。
「夏生先生、昨日校門に紺野雪が居ましたよ。先生、担任でしたよね?」
「は、はい……」
まずい。見られたか……?
「あの子、すごい美人ですよね。夏生先生が羨ましかった……なんてね」
その教員は自席についた。
紺野は確かに美人だ。
きっと高校の時はモテただろう。
……なんで俺を好きなんだ。
いくらでもいるだろう。男なんて。
きっと、大人の男に憧れているのかもしれない。
もしかしたら、そのうち目が覚めるかもしれない。
朝礼が終わって教室に行く。
いつものように、朝の会を始める。
今は一年の担任だ。
この前まで中学生だったやつらだ。
それを目の当たりにすると――
とても恋人と呼べるような存在ではないことを、思い知らされた。




