第20話
車で一時間かけて自宅に着いたが、だいぶ夜が深まってしまった。
「ちょっと今日はやめとこうか」
紺野の両親に疑われてしまう気がする。
「ダメです!」
……許したのが間違いだった。
でも許さなかったら、絶対帰らないとか言い出すだろう。
「大丈夫ですよ。友達の家に泊まるとか言えば済みますから」
……仕方ない。
自宅の駐車場に車を停めた。
「あ! あった!」
紺野が何かを持っている。
小さな袋に入ったもの。
「先生が、受験の時にクラスの受験組にくれた合格祈願のお守りです!」
あ……確か、そんなことをしていたな。
神社に行って、お参りもしてきた。
「この前落としたやつなんです。よかった、見つかって……。先生からもらったもの、これしかないですし」
もう受験なんてとっくに終わったのに、まだ持ってたのか。
「俺が先に家に入るから、時間空けてから来て」
コソコソと、二人で家に入った。
最低限のものしかない飾り気のない部屋に、紺野をあげた。
紺野は玄関で感動している。
「これが先生のお部屋……! お邪魔します!」
あちこち覗いてまわる紺野。
「あ、先生の好きな本がたくさん!」
こいつはなんで──
「なんで俺のことが好きなの……?」
ふと、声に出してしまった。
紺野は振り返って、じーっと俺を見た。
「先生が、“ えっち”だからです」
「は?」
何言ってるんだ、こいつ。
「先生を見てると変な気持ちになるんです。だからまともに話せなかったんです。高校の時」
話してくれなかったのって、それが理由なのか……?
ぱっと見清楚系なのに、ギャップがありすぎる。
「意味がわからない」
「つまり……本能で先生が欲しいって思っちゃったんです」
……そう言われると恥ずかしい。
その時、紺野が目の前に来た。
「先生。ここなら、誰にも見られないですよ」
紺野が見つめてくる。
目が、獲物を見つけたかのように鋭い。
「いや、もう今日はここまで。お前なんか怖い」
「先生が悪いんですよ。私を家に入れてしまったから、自業自得です」
「でもあそこで折れないと、お前帰らなかっただろ?」
「はい、そうです。先生はこうなるしかなかったんです」
……なんていうことだ。
なめていた。
俺がアホなだけか。
最初の時も突然出てきて、どんどん踏み込んできてたのに。
もう――逃げられない。
「いいよ。お前の好きにして」
二年間、俺の我儘で我慢させる。
今日は、受け入れよう。
「先生、観念しましたか?」
「ああ」
紺野は──
俺の匂いを嗅いだり。
指の感触を確かめたり。
俺の足に縋りついていた。
まさかこんなことをされるとは思っていなかった。
「お前、変な奴だな」
「いつかこうしてみたいと、先生を好きになった日から思ってたんです……」
「それはいつ?」
「秘密です」
高揚した紺野の行動は、だんだんエスカレートしていく。
だんだんと、こっちの理性も壊れていくのを感じる。
「戸惑う先生、かわいいです」
「“かわいい ”ってなんだ」
なんで俺だけ半裸なんだ。
でも、紺野に手を出すのは気が引ける。
これでもまだ理性を保てる俺はすごい。
誰か褒めてくれ……。
そのまま紺野の欲望に飲まれて、夜は過ぎ去った。




