第2話
……まずい。
これは、非常にまずい。
紺野はこの前まで教え子だったわけで。
今は卒業しているが、俺の中ではまだ“生徒”なんだ。
そして俺は、紺野のことをよくわかっていない。
なんて返事をしたらいい?
その気がないなら断ればいい話だが、 そう簡単に言えることでもない。
俺が目を泳がせて考えていた、その時――
「先生、彼女いるんですか……?」
「いや、いないけど……」
その瞬間、紺野の顔が、未だかつて一度も見たことのない笑顔になった。
期待に胸を膨らませているような――
「なら先生、私と付き合ってくれませんか?」
なんで、いきなりそこまで飛び越える……!
動揺してうまく言葉が出てこない。
でも、とにかく何か言わないと――
「ごめん、ちょっと……というか、かなり驚いて。なんて答えればいいかわからない……」
教員なのに。
自分のした返事に、情けなくなる。
紺野は少し考えた後、バッグからスマホを出した。
「先生、連絡先、交換してもいいですか……?」
連絡先を交換……。
ここで何か繋がるとまずい。
だけど、紺野の気持ちにちゃんと返事ができていない。
その時、遠くから他の教員の話し声が聞こえてきた。
見られたらまずい!
とりあえずこの場をどうにかしないと。
「わかった。俺の番号これだから」
スマホを出して紺野に電話番号を見せた。
「ごめん、時間がないから。とりあえずこれ、控えておいて」
紺野は、急いで俺の電話番号を入力していた。
嬉しそうに。
本当に、好きなんだな……。
「さっきの返事……しばらく、考えさせてほしい」
「はい! 待ってます……ずっと」
俺は、足早にその場を去った。
駐車場で車に乗った時、 心臓が早く脈打っていることに気がついた。




