第19話
今日も、教師の仮面を被って仕事をする。
生徒に誇れることはない。
波風を立てずに生きていく。
……そう言い聞かせている。
でも、数ヶ月前まで教え子だった女子生徒と、中途半端な関係を続けている。
紺野は成人してても、まだ十代。
そこまで年齢が離れているというわけではない。
ただ、この立場が、紺野との距離を難しくする。
紺野が二十歳くらいになったら、紺野の後輩も卒業する。
……そしたら、俺は堂々とあいつと恋人としていられるのか?
結局自分の立場を守ることだけを考えている。
あと二年、この中途半端な関係を続けることを紺野はどう思うのか。
俺もそれに耐えられるのか。
窓の外の入道雲を見ながら考える。
でも、この仕事をしていたから俺は紺野と出会えた。
俺はやっぱりこの道を進む。
ちゃんと紺野に話そう。
今はただ、紺野に会いたかった。
* * *
──金曜の夜
紺野と会う約束をした。
仕事が終わってから、紺野の家に行った。
着いて連絡をすると、紺野は足早に後部座席に入った。
「先生、何のお話ですか……?」
紺野が恐る恐る聞いた。
「ちょっとね」
車で遠くまで走った。
誰も俺たちのことを知らない場所へ。
海と夜景が見える場所に着いた。
そこで二人で降りた。
生暖かい潮風が吹く。
「あのさ……俺はこれからも教師を続ける。だから、お前と堂々と付き合うことはできない」
紺野は不安そうな顔をしていた。
「それはどういうことでしょうか」
「あと二年、待ってくれないか?」
紺野が今度は不思議そうな顔をしてる。
「なんで二年なんですか……?」
「お前が二十歳になって、お前の後輩が卒業してからがいいんだ。ちゃんと付き合うなら」
紺野は俯いている。
「ごめん、俺の願望を押し付けて。俺は自分の教師の道も、紺野との関係も続けていきたい」
「……二年間、会えないんですか?」
「いや、会えなくはないんだけど……なるべく俺たちを知ってる人が少ない場所とかになってしまう。紺野は二年もその状況、耐えられるか?」
紺野の表情を恐る恐る見た。
紺野は少し微笑んでいた。
「先生が私とのこと、真剣に考えてくれていて嬉しいです。大丈夫です。会えないわけではないので安心しました」
胸を撫でおろした。
「先生の話、受け入れます。だから、私のわがまま聞いてくれますか?」
なんだ?
「何?」
「先生のお家に行きたいです!」
「ダメだ」
「酷いです……。私、二年間我慢するのに……」
「……」
……結局、折れてしまった。
「一時間だけだからな」
「はい!」
俺は気持ちを引き締めた。
二年間――長いけど、なんとか頑張ろう。
この関係を守ろうと、心に誓った。




