第10話
──土曜。
昼過ぎ。
俺は待ち合わせ時間よりかなり早く駅にいた。
家の中にずっといるのが、耐えられなかった。
ただ、カフェで何も考えずに、通り過ぎる人の流れを見ていた。
「先生!」
かなり早く来たにもかかわらず、紺野が来た。
紺野は、とても18歳だとは思えないような、大人の服装をしていた。
似合っていないわけではない。
ただ、少し背伸びをしている感じはあった。
「先生がこんなに早く来るとは思ってませんでした!」
とても嬉しそうな笑顔が、突き刺さる。
「今日は何があるんですか??」
キラキラした瞳で、紺野が聞く。
「いや、別に、そんな特別なことじゃない……」
まともに、紺野の顔が見られなかった。
「先生、もしできれば……なんですけど、映画見ませんか?これなんですけど」
紺野がスマホで見せてきた映画は、俺が好きな小説が元になった作品だった。
俺も、時間があったら見に行こうとしていた。
「先生、この作家さん好きですよね?」
……何で知っている。
誰にも話したことがないのに。
「実は私、先生が行く本屋によく行ってて、参考書買いに行ったりしてる時によく見かけました」
紺野はちゃんと見ているんだな。俺を。
「紺野、とりあえずその映画の話は置いといて、移動しよう。先に話したいことがある」
俺が立ち上がった時、紺野に腕を掴まれた。
「先生、わかってますよ。先生が今日何をしようとしてるか」
──え?
紺野は、微笑みながらも、苦しそうな表情をしていた。
「だから、この映画だけは、どうか一緒に見させてください」
紺野の手は震えていた。




