第1話
高校教師と元生徒のラブストーリーです。
完結済みの短い作品です。
切なさと、甘酸っぱさがあるお話です。
最後まで夏生と雪の行く末を見て頂けると幸いです。
──その夏
高校の教員になって二年目の俺は、 暑さと疲労で項垂れていた。
夕方になって陽が落ちて、やっと涼しくなった。
やっと帰れる。
駐車場まで歩く途中、 校門に一人の女の子が立っていた。
黒いレースのワンピースを着ていて、 黒い日傘をさしている。
肌は、雪のように白い。
その子は、俺のことを見ている。
誰かを待っているのか?
軽く会釈をして、通り過ぎようとした時――
「夏生先生……」
その子が呟いた。
なんで俺の名前を知っている?
もう一度見た。
今度は、じっくり顔を見た。
俺はこの子を知っている。
いや、ずっと見ていた。一年間。
去年、俺が新卒で担任をした時の生徒。
紺野雪だった。
担任はしていたが、ほとんど会話をしなかった。
というか、 させてくれなかった。
いつも視線を逸らす。
話しかけてもすぐに終わる。
進路指導の時だけ、唯一まともに話した記憶がある。
あの時だけは、俺を見ていた。
卒業して四か月くらい経って、ちょうど教え子たちがどうしてるのか気にはなっていた。
「紺野……元気か? 大学は楽しいか?」
紺野は、確か近くの大学に通っている。
「いえ……別に」
紺野は目を伏せた。
「何か、学校に用事があるのか?」
教え子ではあるが、 どう思われているかわからず、今さらどう接すればいいかわからない。
「いえ、学校には特に……」
一体、何をしにここへ?
紺野は、俺を見た。
「先生に会いに来ました」
その目は、とても真剣だった。
「え?」
「私、先生が好きなんです」
──何も言葉が出なかった。




