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VISION  作者: Mr.M
四章 殺人未遂事件

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第46話 仮説

部屋に戻った私は

シャワーを浴びてから

ベッドに腰を下ろした。

殺風景ながらも広い部屋だったが、

窓がないせいか、

酷く息苦しく感じられた。

そして。

ついさっき小鳥遊にミた

『ビジョン』を思い出すと、

心臓が早鐘を打ち、

自然と体が熱くなるのを感じた。

私はそっと下腹部に触れた。

僅かに濡れていた。


私は何度か深呼吸をしてから

立ち上がった。

それからドアに近づいて、

改めてそれを観察した。

一般的なドアに比べて

明らかに分厚かった。

『この建物は

 すべての部屋が防音になってるんだぜ』

『ビジョン』の中の笠原の言葉が

頭をよぎった。

部屋に案内された時から感じていた

違和感の正体がようやくわかった。

建物の中が、

不自然なほど静かだった理由も。

何から何まで変な建物だった。

いや。

異常だと思った。

大烏は何のために

こんな建物を造ったのか。


部屋を出ると、

廊下には誰もいなかった。

私は窓に近づいた。

窓を開けると、

やや肌寒い空気が流れ込んできた。

真っ暗な空に丸い月が浮かんでいた。

私は窓から顔を出して、

大きく息を吸い込んだ。

その時。

中庭の森の暗がりの中から

人影が出てくるのが見えた。

その人影は中庭の扉の方へ歩いていった。

扉が開かれた瞬間、

室内の明かりがその人物の輪郭を

浮かび上がらせた。

江藤だった。

江藤は私に気付くことなく

そのまま建物内へ姿を消した。

こんな時間にあんな場所で、

彼女は何をしていたのだろう。

その瞬間。

私は何の前触れもなく

江藤にミた『ビジョン』を思い出した。

そして。

彼女とまったく同じ光景を、

笠原の2度目の『ビジョン』にも

ミたことも。

ふいに私の頭に1つの仮説が浮かんだ。


本来であれば。

笠原の人生はあのバーベキューの時、

シャンパンを飲んだ時点で

終わるはずだった。

それが笠原の運命だった。

もしかすると。

『ビジョン』の中では、

笠原は死者として

扱われているのではないか。

つまり。

あの白い世界は死後の世界を表している。

死の運命を回避した人間にだけ

ミえる『ビジョン』ではないか。

きっと。

江藤も過去のどこかの地点で、

死の運命から逃れたのではないか。


そこに考えが至った瞬間。

私は恐ろしいことに気付いた。

私自身、

つい先ほど夕食の席で、

自らの死の運命から逃れたばかりである。

もしこの仮説が正しければ。

私は今後。

自分の『ビジョン』をミることが

できないのではないか。

つまり。

私は今後、

自分の未来に待ち受ける障害を

回避することができないのではないか。


私は仮説を確かめるべく、

階段を駆け下りた。

誰もいない左棟の廊下を走り抜けて、

そのまま玄関の前を通り過ぎた。

右棟の廊下を曲がったところで

私は歩調を落とした。

乱れた息を整えながら、

江藤の部屋のドアの前に立った。

私はもう一度深呼吸をしてから、

防音設備が施されているドアを

ノックした。

当然のように返事はなかった。

私は恐る恐るドアを開けた。

意外にも部屋の中は真っ暗だった。

「江藤さん?

 三ノ宮です。

 少しお話が・・」

私は照明のスイッチを探して

壁に手を這わせた。

明りが点くと部屋の全貌が見えた。

それは私の部屋と

全く同じ造りになっていた。

「江藤さん・・?」

私は名前を呼びつつ足を踏み入れた。

部屋の奥に机と椅子が見えた。

その机の上に様々な小物が

乱雑に置かれていた。

男物の腕時計。

小鳥のデザインのイヤリング。

アレキサンドライトのネックレス。

サングラス。

高級ブランドの女性用の財布。

それらの中に見覚えのある物が

いくつかあった。

腕時計は歌川の物だ。

小鳥のイヤリングは

小鳥遊が身に付けているのを見た。


「三ノ宮様」

ふいに背後から声を掛けられて、

私は文字通り飛び上がった。

恐る恐る振り向くと、

開け放たれたドアの前に

江藤が立っていた。

江藤の切れ長の鋭い目が

私をじっと見つめていた。

「あっ・・。

 勝手に入って・・ご、ごめんなさい。

 江藤さんに聞きたいことがあって・・」

私は平静を装いつつ言葉を絞り出した。

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