41/76
第41話 『BreadBlood』
森の中にポツンと建っているその店は
西洋のお城を小さくしたような
お洒落な外観をしていた。
オレンジ色の屋根と白い外壁。
店の前に建てられた木の看板には
『BreadBlood』
の文字が深い紅色で刻まれていた。
時刻は14時50分を過ぎていた。
私が中へ入ると奥から
ウェーブのかかった長い漆黒の髪の
女が出てきた。
見たところ30歳を超えていると思われた。
落ち着いた雰囲気と大人の色気があった。
「すみません。
もうほとんど売れてしまって。
そちらにあるバゲットしか
残ってないのですが・・」
女が申し訳なさそうに言った。
私は残った3本のバゲットを買った。
店を出ようとしたその時、
奥から男がチラリと顔を出すのが見えた。
黒く艶のある髪をオールバックに整えた
痩せぎすな男だった。
女よりも10歳以上は年上に見えたが、
どことなく若々しかった。
女に向けて微笑んだその口元からは
鋭い八重歯が覗いていた。
その笑顔は妙に妖しく、
ゾクッとするほど魅力的だった。
それは。
笠原とはまったく異なる種類の
笑顔だった。




