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VISION  作者: Mr.M
四章 殺人未遂事件

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36/66

第36話 その辺の事情

その後。

バーベキューは何の問題もなく進んだ。

歌川と鈴木がバーベキューコンロの前で

肉を焼いていた。

その傍らで笠原が肉を頬張っていた。

コンロの前の3人から少し離れて、

大烏とヒカルが長方形のテーブルで

肩を並べて楽しげに談笑していた。

私と小鳥遊は、

皆から距離を置き、

中庭の対角に置かれた丸テーブルに

座っていた。

テーブルの上には

肉の載った紙皿と

缶ビールの空き缶が2つ。

そして。

飲みかけの

缶ビールと缶チューハイがあった。

「どうしたの?

 私の顔に何かついてる?」

そう言って私の方を見た小鳥遊の目は、

若干据わっていた。

「う、ううん。

 小鳥さんがそんなに飲んでる姿を

 初めて見たから・・」

「ふふん。

 実は私って結構お酒は強いのよ」

小鳥遊の視線は

向こうで缶ビールを手に

歌川と談笑している笠原を捉えていた。

小鳥遊は紙皿に手を伸ばすと、

骨付きカルビに噛み付いた。


鳶が「ピーヒョロロ」と啼いていた。


「さあ。

 焼きたての肉だ。

 どんどん食べてくれ」

歌川が大きな紙皿を抱えてやってきた。

「2人で何の話をしてるんだい?」

歌川は紙皿をテーブルに置くと

私の隣の椅子に腰を下ろした。

「おいおい。

 随分飲んでるじゃないか。

 飲みすぎじゃないか?」

それからテーブルの上の空き缶を見て

目を丸くした。

「小鳥ちゃんはともかく、

 お前は未成年だろ。

 無茶な飲み方はするなよ」

そして私に釘を刺した。

「心配しないで下さい、歌川さん。

 それは全部私が飲んだんですから」

「うへぇ。

 小鳥ちゃんは結構飲めるんだね」

「今日は飲みたい気分なんです」

そう言って小鳥遊は缶ビールを呷った。

それから溜息を吐いた。

「・・少し酔ったみたい。

 部屋で少し休んできますね」

小鳥遊は立ち上がると、

少し覚束ない足取りで歩いていった。


「実際のところ・・どうなんだ?」

小鳥遊の後姿を見送りながら

歌川が口を開いた。

「どうって・・何がですか?」

「小鳥ちゃんと笠原くんのことだよ。

 知ってたのか?」

「そんなわけないでしょ?

 私だってついさっき知ったんですよ」

「うーん。

 参ったな。

 その辺の事情を知らない大烏くんが、

 笠原くんを誘ったんだろうけど。

 何事もなければいいんだけどなぁ。

 痴情の縺れで殺人・・。

 とかドラマでよくあるだろ?」

歌川の言葉に私はハッと息を呑んだ。

「そ、それより、マスター。

 鈴木さんってどういう人ですか?

 さっき話してたでしょ?」

私は話題を変えた。

「それが聞いて驚くなよ。

 あの鈴木商事の社長さんなんだとさ」

そう言われても、

私はいまひとつピンとこなかった。

それでも。

社会的に地位のある人物

ということはわかった。

人は見かけによらないものだ。

しかし。

謎はさらに深まった。

なぜそんな人物が

私と笠原の命を狙っているのか。

「・・鈴木さんと笠原さんは

 面識があるんですか?」

「いやあ。

 そんなことはないと思うね。

 さっきお互いに

 『はじめまして』

 って挨拶をしてたからな」

歌川は2人の関係には

まったく興味のない様子で、

肉を頬張っていた。

私は改めて缶チューハイに口をつけた。

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