第16話 渇き
激しい動悸と共に私は目を覚ました。
全身から汗が噴き出して、
喉が焼けるように熱かった。
「おや。
お姫様のお目覚めか」
ミラー越しに笑っている歌川の顔が見えた。
「もうすぐ着くみたい」
助手席の小鳥遊が振り返った。
「そ、そう・・なんだ」
私は額に浮かぶ汗を手の甲でそっと拭った。
体が小さく震えていた。
私は何度か深呼吸をして心を落ち着かせた。
今ミた夢は間違いなく『ビジョン』だった。
灯りの点いた部屋の様子から考えて
あれは晩餐会・・か。
ここにいる3人に加えて大烏、
どういうわけか笠原までもがいた。
女は初めて見る顔だった。
そして私に毒入りワインを飲ませた男。
あの病的な男にも心当たりがなかった。
そこまで考えて私はハッと息を呑んだ。
『ビジョン』がミせた光景は、
今向かっている別荘で起こる
出来事なのだろうか。
「マスター?
今日は私達以外にも
招待されてる人はいるんですか?」
「・・うん?
大烏くんには何も聞いてないぞ?
それよりも。
中庭でバーベキューをするらしいぞ。
良い肉を用意してあるらしい。
いやあ、楽しみだな」
「そ、そうですか・・」
私は窓の外に目を向けた。
どこにでもある山道の景色が見えた。
私は大きく息を吸った。
なぜ私が見ず知らずの男に
殺されなければならないのか。
それに。
なぜ毒が・・。
「毒」
そうあれは間違いなく毒だった。
『ビジョン』は私に告げていた。
「お前は毒入りワインを飲んで死ぬ」
と。
ふいに私は喉の渇きを感じた。




