第14話 ある週末
残暑も去り、
日増しに秋の気配が深まってきた、
とある週末。
私と歌川、
そして小鳥遊小鳥
の3人は、
朝から歌川の運転する車に乗り込み、
『Hangover』の常連客である
大烏亜門
が所有している朝臣市にある別荘へと
向かっていた。
一泊二日の小旅行だった。
大烏は店に来る時は
いつも高そうなスーツに身を包み、
英国紳士を気取った
ボーラーハットを被っていた。
口髭を付ければ、
まるで往年のコメディアンのようだった。
身長は160cmの私よりも低かったが、
その堂々とした立ち居振る舞いからして
どことなく貫禄があった。
てっきり
歌川と同年代とばかり思っていたが、
実際は30歳だと知って
私は大いに驚いたものだ。
仕事は探偵業を生業としているらしいが、
引き受けるのは
専ら自分の気に入った案件のみ。
そんな凡そ商売っ気のない方針のせいか、
いつも暇を持て余している
というのが本人の弁だった。
歌川が以前、
羨ましそうに話していたが、
大烏は莫大な遺産を相続しており、
お金には不自由していないらしい。
傲慢でどこか他人を見下している、
癖の強い男だった。
しかし。
狭義のフェミニストで、
女性の前では紳士だった。
後部座席で心地好い振動に揺られながら
私は助手席の小鳥遊の方に目を向けた。
彼女も『Hangover』の客だった。
黒髪のボブカットに、
くるりと丸い二重の目。
小さな鼻と伏月型の薄い唇。
20歳の大学生だったが、
化粧っ気のないその顔は
私の目にも幼く見えた。
今日の小鳥遊は
麹色のワンピースを着ていた。
歳も近くお淑やかで大人しい小鳥遊に
親しみを感じていた私は、
彼女には18歳であることを
伝えていた。




