表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/44

第九話 男装して宿を出る

朝の宿は、まだ薄い霧のような冷気が漂っていた。

小さな窓から差し込む光が、淡い金色に揺れている。

リノはゆっくりと身を起こし、軽く伸びをした。

「……よし。今日は、街まで歩くぞ!」

昨日のうちに汲んでもらった水で顔を洗い、身体を軽く拭く。

それだけでも、ぐっと目が覚めていく。


部屋の端に畳んでおいていた"ゼルファから授かった服一式"を手に取る。

その服はとても軽く、手触りは柔らかいのに、しっかりした生地だった。

地味な灰青色のズボンタイプで、クリーム色のシャツには、脱ぎ着しやすいボタンがつき、帽子も同素材でセットになっている。

「これ……やっぱりすごく着やすい。普通の服じゃないよね」

着てみると、サイズがぴたりと合う。

シャツを整え、前を閉じた。鏡代わりの分厚い窓ガラスに映る自分を見て、リノは少しだけ笑った。

長い髪は後ろでまとめ、帽子の中にすっぽりと押し込んだ。

どこからどう見ても"細い少年"にしか見えなくなる。

「うん。これなら、あまり怪しまれないはず」

目元にかかる前髪を指で直し、中性的で幼い顔立ちがさらに少年らしくなる。


次に--昨夜売らなかった森の果実を数個、袋から取り出す。

丸くて柔らかいオレンジ色の果実--"森蜜果(もりみつか)"と呼ばれるみかんの見た目の果実だ。

ひと口かじると、少しの蜂蜜と蜜柑を混ぜたような、とろりとした甘味が口の中に広がる。

「この蜜柑みたいなの、美味しい!あまーい!!」

宿の朝食は高そうだし、量も少ないそうだ。

こうした森の果実の方がよほど助かる。

軽く腹を満たし、バッグを確認し、ベルトを整え部屋を出る。


受付の女性が、朝から帳簿をつけていた。

「あら、坊や。もう出発するの?」

「はい。街まで行こうと思います。ありがとうございました」

子供らしい丁寧な礼に、女性は微笑む。

「気をつけるんだよ。一人で旅をするなんて大したもんだ。立派な冒険者になれるよ、きっと」

「はい」

その言葉に胸が温かくなる。軽く会釈をし、宿の扉を開けた。

カラン……と鈴が鳴り、朝の空気が流れ込む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ