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第八話 村での初めての食事と違和感
店を出たリノは、通りにある小さな宿に入った。
木の看板には「旅人宿」とだけ書かれている。
「ひと部屋お願いできますか」
受付の女性が驚いたように目を丸くした。
「えっ、ひとり旅?本当に?……まぁ泊まれない訳じゃないけど。夕食込みで銅貨8枚だよ。夕食は部屋に運ぶからね」
へんな子供扱いされるが、村人の視線に慣れていた。
「お願いします」
通された部屋は簡素だが清潔だった。屋根があり、壁があり、鍵がかかる。
それだけで、涙が出そうなほど安心できた。
間もなく食事が運ばれてきた。
温かいスープとパン、煮込み野菜。
だが--味が薄く、わずかにクセがある。
(美味しくないわけじゃないけど……不思議な味がする)
ひと口ずつ丁寧に食べる。
異世界の味付けに慣れていないだけだと、自分を説得した。
残すのは申し訳ないので完食すると、次に体を拭く水を運んでもらった。
宿に風呂はない。湯浴みは貴族か上級冒険者の贅沢だという。
体を拭く作業に取り掛かった。服一式の中に入っていた布を水につけた。桶の中の水は冷たいが、埃と汗の匂いを落とせるだけで嬉しい。
「はぁ……スッキリした……」
清潔になっただけでも大きな安心だった。
そのままベッドへ倒れ込み、深く、深く眠った。




