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第六話 森の三日目:出口へ

夜の森で何度も目を覚ましてしまったせいで、リノは朝日が差し込む前からぼんやりした意識のまま木の上で小さくあくびをした。

太い枝の上は安全を引き換えに、寝心地は最悪だった。身体が子供でなければ、きっと全身痛みだらけだっただろう。

それでも、今は--生きている。

その事実だけが、彼女を起こす力になった。

「今日こそは、森を出る!」

自分に言い聞かせながら、ゆっくり木を降りる。10歳の身体は軽く、枝から足を滑らせそうになってもすぐに体勢を立て直せた。

地面に降り立つと、周囲の空気がひんやりしている。朝の森は、霧が薄く漂っていた。

リノは軽く伸びをしてから〈鑑定〉で周囲の植物を確認し、食べられるものだけを少しだけ採取した。

フォレストウルフとの戦闘で魔力を使ってしまったが、一晩寝たことで魔力も大分回復していた。

--大丈夫。落ち着いて歩けば出口にたどりつける。

そう信じて歩き始めた。


しかし、森は広く、同じような景色が続く。

まるで緑色の迷路のようだった。

太い木々の間を抜け、日が差す方向を頼りに歩く。

時折、小動物が逃げていく音がする。そのたびにリノは身を固くし、警戒を怠らなかった。

昨日のフォレストウルフとの戦闘が、体に染み付いていた。

「……もう、あんなのに会いたくない」

小さな声でつぶやきながら、足元の根に気をつけて進む。

途中、ウォーターボールを水袋の中に入れ、水を口に含んで喉を潤し、深呼吸をした。

しばらく歩くと、霧が晴れ、木々の密度が少しずつ少なくなっていくのを感じる。

(……もしかして、出口が近い?)

期待が胸の奥で小さく灯る。

同時に、気持ちが急いて足取りが速くなってしまう。

しかしそこで、昨日の出来事を思い出し、足を止めた。

(焦ると危ない……ゆっくり、慎重に)

自分に言い聞かせながら歩くと、空気が変わったことに気づいた。

森の匂いに混じって、土が乾いたような、風が抜けて匂いが入ってくる。

--出口の匂いだ。


数十分後。

木々の隙間から、明らかに森とは違う明るさが差し込んでいた。

リノは胸の鼓動を抑えるように深呼吸し、しっかりと足を前に踏み出す。

そして--視界が開けた。

「……でた!!」

思わず声が震える。

そこには、草が広がる大地と、離れた位置に小さな村の影が見えた。

青空は森の中で見上げたものよりも、ずっと広くて明るい。

陽光が全身に降り注ぎ、冷たい森の空気が一気に吹き払われるようだった。

リノはその場に座り込み、胸に手を当てて、ゆっくり深呼吸する。

(よかった……ほんとによかった……)

涙が自然に溢れそうになる。

三日間、恐怖と緊張で押し潰されそうだった。

それでも諦めなかったから--ここに辿り着けた。

「……よし、行かなきゃ」

涙を拭い、立ち上がる。

村はここから少し歩いた先に見えた。

森の恐怖をようやく抜け出し、リノは初めての人の暮らす場所に向かって歩き出した。

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