第四十話 森で簡単なスープ作り
カンルイの森入口。
昼の光が木々の間から差し込み、地面にまだらな影を落としている。
森の中で小枝や木を拾って、入口から少し離れたところに移動した。
まず周囲を一度見渡し、危険がないことを確かめてから、アイテムボックスから必要なものを取り出す。
「よし……ここなら大丈夫そう」
折りたたみ式の五徳を広げ、少し離れたところに作業机を平らな地面に置く。
次に机の上に市場で買ってきた野菜を広げる。
人参、玉ねぎ、じゃがいも、それに少量のキャベツ。
「まずは下処理……」
人参は水魔法で泥を落とし、包丁で皮を薄く剥く。硬さを確かめながら輪切りにする。
じゃがいもは芽を丁寧に取り除き、皮を剥いて一口大に。水にさらす余裕はないが、すぐに使うなら問題ない。
玉ねぎは皮を剥き、半分に切り、繊維に沿って細めのくし切り。
目に染みる匂いに、思わず瞬きをする。
「し、しみるぅ〜」
キャベツは芯を外し、手で葉と芯をザクザクとちぎる。
火を通すと甘みが出る部分だ。
フォレストウルフの肉とホーンラビットの肉をアイテムボックスから少し取りだし、小さく刻む。そして、フライパンで焼き目をつける。
初めて魔物の肉を使うが、煮込めば十分な旨みになるだろう。
小さめのファイアーボールで火を起こし、枯れ枝を組んで火力を安定させる。
鍋をかけ、水が温まる前に肉を入れた。
「先に、焼いたお肉で出汁を取ろう」
弱火でじっくり。
やがて、湯の表面に細かい泡が浮かび始め、肉の香りが静かに広がる。
浮いてきた灰汁を木のスプーンで丁寧にすくい取る。
(これをやるかどうかで、全然違う)
まず、じゃがいもと人参を投入。鍋の中でポチャリ、と音を立てる。
少し遅れて玉ねぎ。
透明になってきた頃合いを見計らい、スコップで薪を減らして火を弱める。
「……もう少しで完成だ」
最後に、キャベツを加える。
鮮やかな緑が一瞬で色を変え、甘い香りが立ち上る。
塩胡椒をひとつまみ。多く入れない。野菜の味を邪魔しない量だけ。
「ほんとは、ここにコンソメを入れたいな……」
でも、無いものは仕方ない。
再び灰汁を取り除き、軽くかき混ぜる。
しばらくして火を止めると、
鍋の中には、透き通ったスープと、柔らかく煮えた野菜が揺れていた。
リノは木のスプーンですくい、息をふきかけてから口へ運び、味見する。
「……うん!」
人参の甘み、玉ねぎのコク、じゃがいものホクホク感。
派手さはないが、体に染みる味だった。
その時--
ぴちゃ。
小さな音がした。
顔を上げると、少し離れた木陰に、水色っぽい半透明の小さなスライムがいる。
(……スライム?)
淡い色の体をゆっくり揺らしながら、こちらを見つめてるような気がする。攻撃態勢を取るわけでもない。
リノは反射的に身構えかけ、すぐに力を抜いた--。




