第三十八話 正式昇格-新しいCランク冒険者
翌朝。
こもれび亭の窓から差し込む柔らかな光で、リノは目を覚ました。
(今日は……正式にランクが変わる日だ)
朝食を済ませ、髪を整え、身じたくを終えると、リノはこもれび亭を出て、冒険者ギルドへと向かった。
朝のギルドは活気があった。依頼を選ぶ冒険者、受付に列を作る人々、鍛冶屋に出す装備を抱えた人など、さまざまな声が飛び交っている。
リノは受付に行くと、受付嬢に「応接室へ行ってください」と言われた。
二階に上がり、応接室の扉を開く。そこには--
昨日、試験をしてくれたグレイ教官が立っていた。
「来たか、リノ。そこに座るといい」
教官は柔らかい表情をしていた。
リノが席に着くと、教官は机に置かれた書類と新しいギルドカードを手に取り、簡単な確認をし始める。
「昨日の試験内容は正式にギルドへ提出済みだ……お前のランクは今日から--」
カードに魔法印を押し、光が走る。
「正式にCランクだ。おめでとう」
差し出されたカードにはしっかりと《Cランク》の文字が刻まれていた。
リノはしばらくその文字を見つめ、ゆっくり顔を上げた。
「……ありがとうございます」
声が震えていた。
教官は腕をくみ、満足気に頷く。
「胸を張れ。これは"運"ではなく"実力"で勝ち取ったものだ」
リノは胸が熱くなった。
「Cランクになると、扱う依頼の危険度も跳ね上がる。無茶をしないこと。パーティーを組むなら相性を見ろ。あと--」
教官はリノをじっと見て言う。
「お前は魔力が規格外だ。逆に言えば、"扱い方を誤れば味方を巻き込む可能性"もある」
リノは真剣に聞き、深く頷いた。
「はい。気をつけます」
「よし」
厳しくも温かい声だった。
前のギルドカードを返却し、手続きを終えて部屋を出ると--
待ってましたと言わんばかりに、昨日の雑談好きの受付嬢が走ってきた。
「リノくんっ!Cランクおめでとう〜!!」
両手をブンブン振りながら笑顔で言う。
「凄かったんだから!試験の記録ね、ギルド内で回覧板みたいに共有されるんだけど……めっちゃ評価高かったわよ!」
「えっ、そんな風に……?」
「もちろん!魔法の安定性、判断力、危険察知……どれも"新人離れ"ってコメント付き!」
嬉しいけど少し恥ずかしい。
「Cランクになったから、無茶しない程度に依頼を選んでね?討伐でも、採取でも、護衛でも、自由がグッと増えるから!」
リノは素直に頷いた。
リノが出口へ向かっていると、見知らぬ冒険者たちが噂話をしていた。
「あの子が……昨日Cランク推薦通ったって噂の?」
「新人で、しかも魔法使いだろ?すげぇな」
「見た目は普通の子なのに……」
そんな視線と小声がちらほら聞こえる。
リノは背筋を伸ばし、出口へと歩く。
(負けないようにしないと……この評価に、実力がついていけるように)
ギルドを出ると、街の空気がどこか違って感じられた。
空は晴れ渡り、太陽は眩しいほど明るい。
リノは胸に手を当てて、小さく笑った。
(ここからもっと強くなる。立派な冒険者になる)
風が静かに、しかし確かに吹き抜けた。
--新しい冒険が、ここから始まる。そんな予感を胸に歩き出す。




