第三十七話 試験結果
訓練場での実技試験を終えたリノは、こもれび亭に一度戻り、夕方まで休むことにした。
夕焼けに染まる頃、再びギルドへ向かう。
入口には仕事帰りの冒険者が多く、いつもより賑わっていた。
受付へ行き、試験の結果を聞きに行く。
(……ドキドキする)
「Cランク推薦試験の件で来ました」
「試験の結果ですね!少々お待ちください」
受付嬢が合否の紙を持ってきた。
そして、その目に飛び込んできたのは--
《Cランク推薦試験 合格》
自分の名前の横にしっかりとその文字が刻まれていた。
「……っ!」
胸の奥が一気に熱くなる。
最近までただのFランクだった自分が、今日、ここで正式に実力のある冒険者として認められた--
その実感がじわじわとわいてきた。
「おい、リノ!」
振り向くと、グレイ教官が腕を組んで立っていた。
「合格、おめでとう」
「ありがとうございます!本当に……!」
「ま、当然の結果だな。特に魔力制御と判断力が優秀だった。これならCランク依頼でも足を引っ張らないだろう」
「リノく〜ん!合格おめでと〜!!」
突然、雑談好きの受付嬢が全力で抱きついてきた。
リノは「わっ」と小さく声を上げ、軽く受け止める。
「すごいわよ!Fからほぼ一気にCなんて、滅多にないんだからね!?新人ちゃんのなかでも話題になってるわよ!」
「そ、そんなにですか……?」
(広まってるんだ……)
少し恥ずかしさと誇らしさが入り混じる。
受付嬢はこっそり声を潜める。
「でもね、リノくん。強いのはいい事なんだけど……あんまり一気に目立ちすぎると、変な人も寄ってくるから気をつけてね?」
「えっ……変な人……?」
「うん……"スカウト"とか"勧誘"とか"派閥"とかね。Cランクになると色々あるから〜。教官にその辺教えてもらうといいよ?」
グレイは苦笑しながら頷いた。
「確かに、お前ほど若くして強いと、声をかけてくる奴は増えるだろう。だが、全部断ってもいい。お前のペースでやればいいんだ」
「……はい!」
リノは笑顔で答えた。
グレイは言った。
「今日のうちにやるのはここまでだ。正式なランク変動は明日の午前中に登録される。今夜はゆっくり休んで、明日ギルドカードを取りに来るといい。明日に備えておけよ」
受付嬢も頷く。
「うんうん!こういう大事な日の後は、無理しないのが一番!」
リノは小さく頭を下げた。
「ありがとうございます。じゃあ、今日は宿に戻ります」
ギルドを出ると夜風が心地よかった。
試験が終わった開放感と、結果の喜びが全身に駆け巡る。
(明日から……本当に、Cランク冒険者なんだ)
こもれび亭に戻りながら、リノはそっと微笑んだ。
こもれび亭へ戻る頃には、街はすっかり夜の空気に包まれていた。
扉を押して中へ入り、今日の宿泊費を払い食事を終え、部屋へ戻る。
ベッドに腰掛けると、疲労と安堵がゆっくりと解けていく。
明日の午前、ランク変更が正式にされる。
その後は、新しい依頼の幅も一気に広がる。
(……本当に、ここから"始まり"なんだな)
フッと笑みが漏れた。
そのまま眠るには感情が高ぶりすぎていた。
寝支度を整えてから、リノは手をかざし、魔力をほんの少し集める。
「ウォーターボール」
手のひらの上に直径10cmほどの水球がふわりと浮かぶ。
今日は試験で魔力を多く使ったから、
無理をしないように、あくまで"軽い調整"だけ。
水球を細く延ばし、ゆっくり輪を描くように形を変え、次は薄い板状にしてみる。
(ふふ……このくらいなら、疲れないや)
床が濡れないように、最後はそっと消す。
静かな街の音を聞きながら、リノはベッドに寝転ぶ。
まぶたが落ちていき、意識がふわりと沈む。
--こうして、試験を終えた夜は静かに更けていく。




