第三十五話 Cランク推薦試験~魔力操作もテスト~
Dランク昇格の手続きが終わり、リノはギルド職員に案内されて訓練場へ向かった。
訓練場の中央に立っていたのは、教官の一人。
灰色の髪を後ろで束ね、飾り気のない革鎧をつけたBランク冒険者の女性だった。
「君がリノだな。私は今回の試験官"グレイ"。よろしく」
「よろしくお願いします……!」
グレイは短く頷き、試験内容を確認するように穏やかに告げる。
「では--まずは魔力操作テスト。実力を見るだけだから、力まず普段通りでいい」
(普段通り……できるかな)
「まず使える魔法はどのくらいある?」
「えっと……ウォーターボール、ウォーターカッター、ウィンドカッター、身体強化、探知、ライト、ファイアーボール、ストーンバレットです」
「じゃあ最初は《ライト》。球を一つ、なるべく揺らさずに維持してみせて」
リノは深く息を吸い、手のひらを上にむけた。
「ライト」
手のひらに淡い光の球が生まれる。光もぶれず、形も滑らか。
「光が綺麗に安定しているな。魔力の流量が一定だ。では次、《ストーンバレット》を三連続あの的に撃て。威力は抑えて」
「はい!ストーンバレット!」
リノは魔力を練り、拳大ほどの小石を三つ、間を空けず放つ。
バッ、バッ、バッ!
すべてが狙った場所に突き刺さる。
「おぉ……連発の精度は十分。癖も少ない、優秀だ」
(ほっ……)
「次は連続して魔法を使う。《ウォーターボール》から《ウォーターカッター》へ切り替えて的に撃ってくれ。切り替え時の魔力の乱れだけを見る」
リノは首を縦に振り、前方に向けて魔力を集中させた。
「ウォーターボール」
直径30cmほどの水球がふわりと浮かぶ。
--そこで、呼吸を一つ。
「ウォーターカッター!」
形を保ったまま、球が細い刃へと変化し、風を切る。
シュッ!
的に浅い線が走った。
グレイは感心したように腕を組む。
「魔力の"質"と"方向"の切り替えが滑らかだ。暴発の可能性は低いだろう。この部分は、Cランクとしてはかなり高評価だ」
(よかった……毎日の日課の成果だ!!)
「さて--最後に《ウィンドカッター》を小規模で連続で三本。幅は2cm。距離は10m先の的だ」
「が、頑張ります……!」
リノは何度か魔力を調整しながら狙う。
「ウィンドカッター!」
風の刃が細く走り、的を正確に切り裂いた。
二本目、三本目も--
ピシッ、ピシッ。
すべて中心に近い位置に命中した。
グレイの表情が緩む。
「……見事。これならCランク帯の戦闘で魔法が暴走する心配はない。基礎操作は合格ラインを十分突破している」
「ほ、本当ですか……!」
「本当だ。あとで総評するが--少なくとも"基礎操作で落ちる"ことはもうないよ」
気持ちがふわっと軽くなる。
(おそらく次は、教官との一対一の戦闘……)
しかし、今の結果が少しだけ自信を灯してくれた。
「では、少し休んだら次へ行くぞ。次は基本戦闘テスト。私を相手に、魔法を撃ちながら動けるかどうかを見せてもらう」
リノは気を引き締め、拳を握った。
「お願いします!」
訓練場の空気が、少しずつ戦闘特有のものへと変わっていく。




