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第三十三話 Dランク昇格試験~書類審査~

翌朝。

こもれび亭の窓から柔らかい光が差し込み、リノは深く息を吸った。

「……今日、ついに試験かぁ……短かったなぁ」

緊張とも期待ともつかない感情を胸に、身支度を整えるとギルドへ向かう。

ギルドは朝から活気に満ちていた。

依頼掲示板の前で仲間と相談する冒険者、新たな依頼を受ける新米たち、受付嬢たちの声……いつもの光景だが、今日のリノの背筋は自然と引き締まっていた。

とはいえ今日は、他に昇格試験を受ける者はおらず、受験者はリノただ一人。

受付で名前を告げると、受付嬢はにこやかに案内した。

「リノさん、Dランク昇格試験ですね。書類審査は二階の応接室で行います。緊張なさらずにどうぞ」

軽く頭を下げ、リノは階段を上がる。

ギルドの二階は、普段は依頼者との相談や交渉のために使われる落ち着いたフロアだ。

薄い木の匂いが漂い、冒険者の喧騒とは別世界の静けさがある。

案内された扉には小さく「応接室・特別使用中」と札が掛けられていた。


ノックして入ると--


丸いテーブルとソファが置かれた、こじんまりとした部屋。

試験官は一人、落ち着いた雰囲気の男性が資料を広げて待っていた。

「どうぞ、リノさん。そこへお座り下さい。試験官のラックと申します」

リノは緊張を押し隠しながらソファに腰を下ろす。

試験官は名乗った後、手元の書類とギルドカードの読み取り装置を用意し、穏やかに言った。

「では、Dランク昇格のための書類審査を始めます。本日受験はあなただけですので、ゆっくりで構いません」

リノはギルドカードを手渡すと、試験官は装置に読み込ませ、表示された情報を丁寧に確認していく。

「……ふむ。依頼達成数、十分。達成率も高く、報告内容に不備なし。違反歴・トラブルはゼロ」

ページをめくる手が止まり、試験官がチラリとリノを見る。

「Fランクでまだ日が浅いのに、この依頼数や討伐履歴……よく頑張りましたね」

「ありがとうございます」

(魔法のおかげ、だけど……また言うと怒られちゃうかな……)

試験官は淡々と評価を続ける。

「安全管理能力……新人訓練での記録も良好」

そして、最後のチェック欄に印をつけると、ゆっくり顔を上げた。

「--問題ありません。書類審査は合格です」

温かい声音だった。リノは胸をなで下ろす。

「では、このまま面談に移ります。応接室の隣の小部屋をご案内しますので、着いてきてください」

扉のドアノブに手をかけてきたリノは、次の試験へと歩み出した。

小さな不安と、大きな期待を胸に抱えながら。

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