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第三十二話 必要な物の買い足し

ギルドで報酬を受け取ったリノは、街の市場へ向かった。

店先では商人たちの威勢の良い声が飛び交う。

(今日の目的は……料理用の作業机と、採取用のハサミ、そしてナイフ。どれもこれから必要だし、長く使える良い物がいいな)

市場の奥にある木工職人の店は、木の香りで満ちていた。壁には棚やまな板、スプーンなどが飾られている。

店主の大柄な男性が気さくに声をかけてきた。

「いらっしゃい。何をお探しかな?」

「外で料理や作業ができる机が欲しくて……」

「お、じゃあ3種類見せよう。値段と質は違うから、好きに選びな」

店主が案内してくれた机は三つ。


①一番安い"標準机"

 素材:一般木材

 特徴:軽い・持ち運びしやすい・耐久は並

 価格:銀貨12枚

表面は少しザラついているが、普通に使う分には十分。


②少し良い"上質な机"

 素材:硬めの広葉樹

 特徴:頑丈・焦げにくい・表面が滑らか

 価格:銀貨18枚

触ると手に吸い付くような滑らかさがあり、調理も作業もやりやすそう。


③高級"トレント材の作業机"

 素材:魔物トレントの木材

 特徴:魔力耐性あり・腐りにくい・非常に頑丈・見た目が落ち着いて高級感あり

 価格:金貨2枚、銀貨6枚


店主が胸を張る。

「これはちょっと高いが、一生モンだ。魔力を扱う作業なら特に相性がいい」

リノは三つの机を順番に触ってみる。

(外で長く使うし……値段とのバランスを考えると……)

しばらく悩んだ末、リノは言った。

「このトレントの机にします!」

値段は高いが、使いやすそうで頑丈そうなこの机が一番しっくりきた。

「まいどあり!」

お金を払ってアイテムボックスに机をしまい、次の店に向かった。


次に向かったのは道具専門の小さなお店。

店内には、釘、ノコギリ、ハサミなどが整然と並んでいる。

女性の店主が声をかけてきた。

「どういった物をお探し?」

「採取に使うので、小さくて丈夫なものが欲しいです」

「なら、これが一番人気」

差し出されたのは、刃が細めでよく研がれた、実用性重視のハサミ。

切れ味は確かで、耐久も高そうだ。

「値段は銀貨4枚。壊れにくいし水にも強いよ」

「これにします!」

「は〜い。ありがとね」

カバンにハサミをしまい、お店を出て次の目的地へ歩く。


最後に寄ったのは武器屋。

店内に入ると、太い腕の男性店主がリノを見て眉を上げる。

「いらっしゃい。何を買いに来た?」

「刃物が欲しくて……。戦闘用というより、採取やちょっとした調理、ロープ切りなどに使える"実用性のあるナイフ"が欲しいんです」

店主は顎に手を当て、ニヤリと笑った。

「なら、短剣でもない"冒険者用多目的ナイフ"がいいだろうな。初心者から上級者まで愛用している定番品がある」

店主がカウンター下から取り出したのは、光沢を抑えた銀色の刃を持つ小さなナイフ。

「派手じゃねぇが、仕事は確実にこなす。魔法を使うタイプにも会うはずだ」

リノは手に取ってみる。

重すぎず軽すぎず、手にしっかり馴染む。

(これなら……採取も料理にも使えそう)

「これ、ください」

「まいど!銀貨8枚だ。ちゃんと鞘もつけておくぞ」

店主は丁寧に革の鞘に収め、リノに手渡した。

ナイフをカバンにしまった。

道中、買ったハサミとナイフをカバンからアイテムボックスへ収納し、こもれび亭へ戻る。


こもれび亭の宿泊費を払い、少し遅めの昼食を食堂で取る。もう夕食に近い。

部屋に戻り、魔力操作を兼ねて水魔法で形を作る。

昨日よりも明らかに制御が安定している。前回のようにリノは魔力を送って球体を細い糸のように伸ばす。

水はキラキラと光の反射を帯びながら細長く伸び、そのまま形を変えて、小さな輪へ。さらに花の形へ。

花弁を六枚に増やし、微妙な角度まで再現する。

(……ここまで形を変えても崩れない)

次は複数の形を一度に維持できるか試す。

水の花を維持しながら、もう片方の手で再び水球を作る。小さく、やさしく、魔力を分配する……。

二つの水が空中に浮かび、片方は花のまま、もう片方は星型へ。

(できた……!)

少し息が弾む。魔力操作は確実に成長している。

明日の試験が不安ではなく、むしろ楽しみに思えるほどに。

水の形をゆっくり崩し、魔法を解除した。

ベッドに腰を下ろし、昨日のギルドでの出来事を思い返す。

(……もっと、強くなりたい)

そんな静かな決意を胸に、リノは深く息を吸った。

明日への準備はもう整っている。


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