第三話 森の一日目:目覚め
--湿った土の匂いと、かすかな草の香りが鼻をくすぐった。
「……ん、ぁ……?」
まぶたをゆっくり開くと、木々の隙間から差し込む柔らかな光が視界を満たした。
さっきまで確か……勢いよく走ってくる車、歩いていた男女の学生、そして自分は彼らを--
(……助けて、ひかれて……死んだ、はず……)
ぼうっとした頭で思う。体に痛みはない。むしろ驚くほど軽い。
莉乃いや、"今の自分"は、森の中に横たわっていた。
腕を起こした瞬間、違和感が全身を駆け抜ける。
「ぇ……ちっちゃ……」
腕は細く、白く、滑らかで、まるで10歳くらいの子供のよう。慌てて両手を胸に当てても、そこには確かにあるべき重さはない。
起き上がって自分の姿を確認する。
長すぎない柔らかい黒~濃い茶色の髪が肩にかかり、指先で触るとふわりと揺れた。
視界が不思議とはっきりしていて--眼鏡がなくてもよく見える。
「……嘘、若返ってる……?」
驚愕しながら立ち上がると、体が軽く、どこも痛まない。
気づけば心臓の鼓動も落ち着いていた。
これは、夢ではない。
死んだあと、創造神ゼルファと出会い、"若い身体が欲しい"と願ったことを、莉乃は思い出す。
(本当に……子供の身体で転移?転生?したんだ……)
まずは、落ち着くために深呼吸した。
呼吸は浅くも苦しくもない。
むしろよく通る肺に、少し戸惑ってしまうほど。
まずは状況の確認--と、社会人の癖で自然と考えてしまう。
「えっと……アイテムボックスって、どうやるんだっけ……?」
意識を集中すると、視界の横に小さなウィンドウのような存在が現れた。
そこを"開く"と想像するだけで、空間がゆらぎ、裂け目のようなものが目の前に広がる。
中には、神様から渡された物がきちんと揃っていた。
・金貨 5枚
・銀貨 10枚
・銅貨 30枚
・動きやすい服一式+布
・「初めての魔法の使い方」
・「初心者用・採取の手引き」
・丈夫な革のバッグ
・水の入った皮袋
「良かった。全部ある……」
莉乃は胸を撫で下ろす。もし何もなければ、子供の身体で森の中など到底生きていけない。
バッグを取り出し、肩にかけ、書物は手元に置いておくことにした。
次は、神様が言っていた"スキル"の確認だ。
「ステータス表示!」
……何も起きない。
「これじゃダメなのかな??……ステータスオープン!」
そう唱えると、淡い光の板が目の前に浮かび上がった。
名前:リノ・クロカワ
年齢:10歳
種族:人間
体力:200
魔力:1000
レベル:1
スキル:・鑑定 ・アイテムボックス ・言語理解 ・全属性魔法(1) ・健康(10)
・料理(10)・家事(10) ・計算(10)
加護:創造神の加護
「……ほんとに、全部ついてる」
"創造神の加護"の項目が胸をじんと熱くする。
(ありがとう。絶対、無駄にはしないから)




