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第二十七話 市場での再開

朝日が昇り始め、石畳の通りに淡い金色が差していく。

リノはまだ、人のまばらな街路を歩きながら、こもれび亭から市場へ向かった。

屋台を並べる店主たちの声が次第に増え、焼きたてのパンと温かそうなスープの香りが風に混じる。

「……料理が微妙なのって、調味料の使い方を知らないだけだったりするのかな?」

小さく呟きながら、リノは色鮮やかな瓶や袋が並ぶ調味料専門店っぽい店の前で足を止めた。


そこには、瓶に詰められた調味料がズラリと並んでいる。

店に入って《鑑定》をし、この世界では名前が違うが、

塩、砂糖、胡椒、酢、油、乾燥ニンニク--醤油などがあった。

(醤油だ!!醤油がある!こういう所ではないかと思ってたんだけど……)

そう思いながら周りを見渡すが、客はほとんど居ない。

店主はカウンターに肘をつき、退屈そうに顔をポリポリとかいていた。

リノが棚を見つめていると、店主の男が気さくに声をかけてくる。

「坊主、料理をするのかい?珍しいなぁ。最近は冒険者も料理するやつが少なくてな。売れ残りばっかりだよ」

「そ、そうなんですか……?」

「俺がこれは調味料に使えそうだと思ったものを売ってはいるんだがなぁ……」

「だからユショの液とかがあるんですね!」

「だからまあ、塩と砂糖以外は売れなくて困ってんだ。気に入ったのがあれば、安くしとくぜ」

思いがけない言葉に、リノはカバンの紐をギュッと握りしめる。

(確かに……調味料の配合とか分からないって思ってたし、試してみよう)

いくつかの香草瓶を手に取り、鑑定をかける。

どれも悪くはない。むしろ質はいい。

「じゃあ……塩、砂糖、コショの実の粉、油、ユショの液、リミン液、パイスの液を小瓶8個ずつお願いします」

塩、砂糖、胡椒、油、醤油、みりん、酢の順で異世界バージョンの名前を読み上げる。

「はいよ、全部まとめて安くしとく。ほら」

提示された金額は、予想よりもずっと低かった。

リノは思わず目を丸くしたが、店主は肩をすくめる。

「売れるだけマシだからよ。使い方は……まあ、色々試して覚えな。代金は、銀貨2枚と銅貨8枚だよ」

「はい。ありがとうございます!いい買い物が出来ました~」

「そりゃよかったぜ!俺もこんなに買ってくれるとは思ってなかった。ありがとな」

カバンから出したお金を手渡し、店を出た。

(よし。これを自炊ですれば、食生活が劇的に改善するはず。しかも、醤油まで手に入るなんて!最高!!)


安く買えた調味料を普通にカバンの中に入れ、リノは市場の奥へと歩き出した。

屋台の間を抜けるたび、果実の甘い香りや焼き魚の匂いが漂ってくる。

鮮やかな果物の山が目に入り、リノは自然と足を止めた。

(この果物みたいなの……名前、なんだろう?鑑定してみようかな)

リノは黄色いトゲトゲした実を一つそっと手に取り、意識を集中させる。


--背後から賑やかな声が飛んできた。


「おう、リノじゃねぇか!こんなとこで何してんだ?」

驚いて振り返ると、そこには知った顔--オルソンの姿があった。

「こんにちは!オルソンさん。今さっき調味料のお店に行った後に、果物が沢山あって、見てたんです」

「はは、そうだろうな。アイゼルトの市場は国境沿いにしては品揃えがいいんだ。旅人も商人も通るからな。普通に買うなら午前、値切るなら夕方が狙い目だ」

オルソンはリノのカバンをちらりと見た。

「……調味料買ったのか?」

リノはカバンを押さえながら

「うん。料理をして、その時に色々試してみようと思いまして」

「偉いじゃねぇか。市場のスパイスは安いが質は悪くねぇ。上手く使えば美味くなりそうだな」

軽く笑いながら、オルソンはリノの帽子をポンと撫でた。

「そういえばリノ、冒険者ギルドはどうだった?」

聞かれたリノは、二、三日前の新人訓練や初めてカンルイの森に入り、魔法で魔物と戦ったことを語った。

「森の入口付近なら安全だと思ってたけど……結構魔物が出てきたんです。ファイアーボールは暴発しそうになるし、ストーンバレットは狙いがそれちゃうしでですね」

「それで無事に戻ってきたんだ、上出来だ。魔法は慣れだしな。お前、飲み込みが早そうだからすぐに上に上がれるぞ!それに期待の帽子を被った魔法少年って、リノだろ?」

少し照れくさいけど、嬉しかった。

「多分そうなんですけど、そんなに噂になってます?」

「あぁ!冒険者の間で噂になってるぜ!!噂と言えば……」

果物や野菜を見ながら並んで歩いていると、オルソンは声を落として話し始めた。

「そういや最近はな……マグナティア神都の辺りが不穏らしい」

「不穏?」

「冒険者の需要も上がってて、特に魔法使いが求められている。まぁ噂レベルだけどな」

その言葉にリノはゴクリと喉を鳴らした。

「じゃあこの先、危なくなるってこと?」

「国境じゃルシオン国とアレスタニア帝国の方が安定してるって話だ。こっちはちょっと……荒れそうだな」

オルソンの目は鋭く、周囲を見ていた。

「……実は俺、そろそろアイゼルトを離れるつもりなんだ」

「えっ?もう行っちゃうんですか?」

「商隊に合流する予定でな。なんなら護衛依頼、リノに出そうかって考えてる」

「でも私、まだFランクだよ?」

「知ってる。だから正式な依頼にできるかはギルド次第だが……お前、魔法の腕は聞く限り悪くはねぇ。人手も足りねぇ時期だ。鍛えりゃすぐCランクはいくさ」

リノは胸が温かくなるのを感じた。

「さて、俺は荷物を運ばにゃならん。また会おうぜリノ」

「はい!またねオルソンさん!」

オルソンと別れた後、リノはこもれび亭に戻り、受付の女性に「もう一泊します」

と伝え、料金を払った。

食事を終え、日課の魔力操作をし、今日は早めに眠りにつく。


現在の所持金 金貨3枚、銀貨2枚、銅貨16枚、鉄貨157枚。


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