第二十五話 カンルイの森:討伐と採取依頼
《探知》を展開したままで魔法練習を終えた。
--まだ精度は甘いが、反応があった。一体いるようだ。
草むらが揺れ、ツノがついたウサギが飛び出してきた。
リノは小声で詠唱した。
「探知は一旦解除。--身体強化」
魔力を腕と脚に巡らせ、飛びかかってくるホーンラビットの軌道を読み、手のひらに魔力を集める。
「ストーンバレット!」
空中で石弾が形成--射出。
だが速度が甘く、ホーンラビットの脇を抉るだけで致命傷にならない。
「っ、まだ倒れないの!」
ホーンラビットが向きを変え再突進。リノは横に飛び、距離を取ると再び手に魔力を集めた。
今度は深呼吸し、一点集中。
「……ストーンバレット!」
石弾はホーンラビットの胸を貫き、そのまま転がり動かなくなる。
戦慄も興奮も同時に湧き上がる。
リノは急いでホーンラビットをアイテムボックスに入れた。
森の奥で唸り声。周囲を気にしつつ
「探知」
魔力の波紋が広がり、背後には反応がない。前方に反応あり。
一匹のフォレストウルフがホーンラビットを追って来たみたいだ。
「……来た。ちょっと怖いけど、距離をとるなら魔法の練度を試すいい機会だよね」
--狼の足が地面を蹴る瞬間、同時に詠唱。
「ウォーターカッター!」
水刃が走る。
だが狼は紙一重で回避し、左肩に浅く切り傷が。
(速い……次はタイミングを合わせる!)
飛びかかる狼--リノは滑るように回避し、至近距離で魔力を圧縮。手のひらの前で蒸気が震え、熱が生まれる。
「ファイアーボール!」
拳大の火球が狼の腹に命中、爆ぜるように燃え上がり狼は転がる。
そのまま息絶えたのを鑑定で確認し、アイテムボックスへ収納する。
少し森を歩いていると木の影に、糸が光った。
木の横幅ほどの巨大蜘蛛--毒袋を持つ危険種だ。
リノは即座に光を作り出す。
「ライト!」
明かりが灯り、影が消え、蜘蛛の位置がはっきりしてくる。
糸が唸り飛ぶ。
身体強化した足脚で跳躍し、木の根元へ転がりながら魔力の形を変えた。
「ストーンバレット!」
高速弾が蜘蛛の脚を貫くが、動きを止めない。
毒液が飛び散り、距離が詰まる。
(なら、切り裂こう)
左手に水の力を集中し、手刀の形で空を切る。
「--ウォーターカッター!」
狙いは胴の中心。
水刃は音もなく蜘蛛を断ち裂き、巨体が地面に崩れ落ちた。
リノは肩で息をしながら、それを鑑定。
《フォレストスパイダー ランクD 死亡》
毒袋も糸も損傷は軽い。回収可能だと知り安心した。
せっせとアイテムボックスに収納する。
魔力が身体の隅々で熱く脈打っている。
訓練はしてきたが、実践は別物。
恐怖、判断、詠唱、狙い、躊躇--その全てが試される。
けれど確かに、魔法は通じた。
リノは自分の手を見つめ、小さく息を吐く。
「……まだ怖いけど、やれる」
魔物との戦闘を一旦やめて、採取依頼へ移る。
探知で魔物の反応を探り、草を見つける度に鑑定して種類を確認。
青葉草、森ベリー、ひんやり草……
一つずつ慎重に採取し、依頼の数を満たすまで採取する。
途中、探知に反応があり、ワイルドチキンに襲われ、ストーンバレットを撃つが威力が足りず距離を詰められる。
焦るリノは身体強化で飛び退き、
「ファイアーボール!」と圧縮版を放つ。
熱に怯えたチキンの首元へ、
練習で精度を上げたストーンバレットを撃ち、動きを止めた。
また一体討伐。
鑑定をして《ワイルドチキン ランクD 死亡》と確認をし、そのままアイテムボックスへ。
その後も、
・探知で魔物を察知
・練習した魔法で試しながら撃破
・採取対象を確認→鑑定→丁寧に採る
というサイクルを繰り返し、日が傾く頃には依頼品の数も揃っていた。
帰り道、身体強化を解除すると膝が笑い、自分はまだ体がついていっていないのだと実感する。
「でも……魔法、前より扱えるようになってる」
リノは小さく笑い、アイテムボックスを確認して森を後にした。




