第二十二話 いざ!図書館へ
翌朝。
こもれび亭の窓から差し込む柔らかな光で、リノはゆっくりと目を覚ました。
昨日の新人訓練での疲れが少し残っているが、それ以上に体内に流れる魔力の流れが昨日よりも僅かに把握しやすくなっている感覚があった。
伸びを一つし、身支度を整えると、宿の一階にある食堂へと降りていく。
朝のこもれび亭は静かで、少し香ばしいパンの匂いと温かなスープの湯気が漂っていた。
木のテーブルに腰を下ろすと、出された朝食は、
・黒パン
・野菜スープ
・軽いサラダ
・森蜜果が一つ
(この薄味にもだいぶ慣れてきた……)
食べ終えると、受付の女性に声をかける。
「もう一泊お願いします。……その、銀貨が1枚しかなくて」
女性は手馴れた仕草で帳面を確認し、
「銀貨1枚と銅貨10枚でいいですよ」と言ってくれた。
リノはカバンに手を突っ込んでアイテムボックスを開き、必要なお金を取り出す。
それを手に乗せて差し出すと、女性は受け取り柔らかく微笑み頷いた。
「はい、確かに。部屋は昨日と同じだよ。ゆっくりしていきな」
「ありがとうございます」
礼を述べたあと、リノは外へ出る。
今日の目的は--魔法の勉強だ。
街の中央あたりにある公共の図書館は、石造りの立派な建物だった。
入口で入館料の銅貨8枚を支払い、受付の女性から来館証明の木札を受け取った。
手持ちのお金は、銅貨と鉄貨だけが残っているので、いよいよ本格的に稼ぎ始めなければならない。
中に入ると、思っていたより広く、書棚が整然と並んでいた。
魔法・歴史・冒険・薬草--
魔法コーナーでリノは片っ端から魔法に関する書籍を手に取っていった。
だが、中級以上は取り扱いがないようだ。掲示板に本の貸し出しができない事と書き写すのはOKと書かれていた。
(じゃあ、初級から勉強しますか!)
何度も読み返しながら、雑貨屋で買った白紙の本に要点を書き写していく。
要点はこうだ。
1. 魔力の種類
体内魔力
•体に自然に宿る魔力
•使用すると疲労がたまる
•魔力量は努力や練習で増加可能
外部魔力
•魔石や魔法道具に蓄えられた魔力を利用
•体力消費が少なく長時間使用可能
2. 発動方法
詠唱
•言葉で魔法を発動
•発動が速く、初心者でも扱いやすい
•魔力消費は通常通り
魔法陣
•書いたり刻み込んだ陣から魔法を発動
•直接書く場合:発動は遅い、1回使用すると紙が燃える
•事前に紙や物に書き込んでおく場合:発動が速い
•ただし消耗が激しい
•魔石や魔道具に刻むと耐久性が高くなる
•魔法陣発動は、強力な魔法や精密魔法に向く
3. 魔力回路
•体内の魔力経路で、魔力の流れや制御に影響
•回路が整っているほど魔法の安定性・威力が高い
•回路を鍛錬することで、体内魔力の消費を抑えつつ威力向上が可能
•外部魔力を使用する場合も、回路を経由することで効率的に出力できる
4. 魔力量と成長
•魔力量は練習や魔法使用で増える
•高魔力量者は回路の鍛錬でより強力な魔法を扱える
•初級者は回路が未熟なので、魔法陣や高出力魔法の制御は難しい
•リノは宮廷魔術師並みの魔力量を持つため、訓練次第で中級・上級魔法も安全に扱える
◆魔力制御
1. 基本原則
•魔力は体内の回路を通して流れる
•回路の流れを整えるほど魔法の威力・精度が安定する
•魔力量が多くても制御が未熟だと暴発・失敗の危険がある
2. 体内魔力の制御
•魔法を詠唱で発動する場合、制御が簡単で安全
•魔力量が多い場合は、意識的に流量を絞ることで消耗を抑える
•回路の鍛錬や瞑想で魔力の流れを安定化できる
3. 外部魔力の制御
•魔石や魔道具の魔力は流量が強く不安定な場合がある
•魔力回路を経由して出力すると効率が良く、暴発リスクを減らせる
•魔法陣や刻印と組み合わせると魔力を長時間安定して使用可能
4. 魔法陣発動時の制御
•直接書いた紙に魔法陣を描く場合は発動遅め・1回使用で紙が燃える
•事前に紙や物に書き込む場合は発動速いが消耗が激しい
•魔石や魔道具に刻み込むと耐久が長くなるが、魔力消費はやや高め
5. 練習による成長
•魔力制御は経験と練習で向上
•初心者は魔力を抑えきれず、威力が不安定になりやすい
•高魔力量者は、鍛錬で体内魔力・外部魔力ともに精密制御が可能
•魔力量が増えれば、同じ努力でより強力な魔法を安全に使える
6. 制御失敗のリスク
•魔力の流れが乱れると暴発や魔法の失敗につながる
•過剰な出力や複数魔法同時使用は特に危険
7.基本属性と特殊属性
・基本属性:火、水、風、土の四属性。
・特殊属性:光、闇、氷、雷、草、無、聖の七属性。
そしていくつかの初級魔法も、頭の中で整理しながら書き写していった。リノはこの本を魔法研究用の本にするつもりだ。
一つ一つ丁寧に学び、手を止めない。
時折、館内の魔導時計が静かに刻む音が響き、窓の外の光が薄暗くなっていく。
閉館の鐘が鳴る少し前に、リノは手首を揉みながら本を閉じた。
図書館の女性に木札を返し、一礼して外へ出る。
借りることは出来ない。だからこそ、今日書き写した内容は貴重だ。
宿に戻ると、夜の風がほんのり冷たく感じられた。
食事を済ませ、部屋に入ったリノは、日課の魔力操作を実践する。
リノは静かにベッドの上に座り、正座する。
目を閉じ、意識をへその下に向け、魔力を循環させる。
リノは膨大な魔力をゆっくりと体内で魔力回路を意識しながら循環させる練習を始めた。
魔力が指先や足先に達する感覚を意識し、流れのムラがないか、暴走しそうになっていないかを確認する、繊細な作業だった。
額にうっすら汗が浮かぶ。魔法は使えば使うほど疲れるが、それでも続けなければ上達はない。
やがて眠気が訪れ、ベッドに体を沈めた。
--明日は、今日よりもうまく魔力操作が出来るように。
そう願いを抱きながら、静かに寝息を立てた。




