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第二話 創造神との出会い

--気がつくと、真っ白な空間に立っていた。

一歩進むと足元に床が生まれ、広大な白い空間が広がっていた。

空も地面も曖昧に溶け合い、まるで雲の上にたっているようだった。


「……ここは?」

不意に、柔らかい声が響く。


「--よく来たね。黒川莉乃(くろかわりの)


驚いて振り返ると、そこに"人"が立っていた。

年齢は分からない。長い白銀の髪と、深い蒼を秘めた瞳。

人間のようで人間ではない。しかし、気品に満ちた存在。

その存在は、ふっと微笑んだ。

「ようこそ。私はゼルファ。この世界--いや、君からしたら別の世界を管理している創造神だ」

その姿は、言葉にできないほど荘厳(そうごん)だった。

「……創造神?」

あまりにも唐突で、脳が理解を拒んだ。

「待ってください……えっと……私、死んだんですよね?」

恐る恐る尋ねると、ゼルファは悲しげに目を伏せた。

「そうだ。君は二人の子供を助けようとして、車の前に飛び込んだ。勇気ある行動だった」

事実を淡々と述べるその声は、責めるでも哀れむでもなく、ただ真実を告げる響きだった。

「……あの子たちは、無事なんですか?」

震える声で聞くと、ゼルファは小さく頷いた。

「もちろん。君が守ったおかげで軽傷で済んだよ」

ほっと胸を撫で下ろす。だが、ゼルファは続けて静かに告げた。

「本来、あの二人の足元に魔法陣が現れ、異世界へ転移する運命だった」

「……え?」

「彼らは、"異世界の勇者"として選ばれていた。だからあの瞬間、足元に魔法陣が現れた。しかし……君が庇ったことで、その魔法陣に君も巻き込まれてしまった」

莉乃はゆっくり理解し、思わず頭を抱えた。

「えっ……じゃあ、私、余計なことを?つまり……私は事故で巻き込まれてここに?」

「いや、むしろ、善き行いだった。君は誇っていい。そして、本来なら君の魂は、そこで消えてしまっていたんだ」

ゼルファは一息置き、それから少し柔らかく微笑んだ。

「だが--私は君の勇気と行動を見ていた。だからひとつ、提案しようと思って」

「……提案?」

「新しい世界で、もう一度"生き直して"みないか?」

「望む身体、望む力を与えよう。君の人生は、まだ終わっていない」

一瞬、言葉が出なかった。

よくある"異世界転生"みたいじゃないか、と思ったけど……いや、現に目の前に神様がいるんだから、本物だ。

ゼルファはゆっくり手を差し出した。


「まず、望む肉体を教えて欲しい。君の魂は疲れている。無理に元の体に戻る必要は無い」

その言葉に、胸が酷く疼いた。


転職してから毎日終電、休日出勤、肌は荒れ、体力は落ち、鏡を見るのも嫌だった。

何より、若い子から「おばさん」と呼ばれた時の、あの妙な寂しさ。

だから私は、少し迷ってから言った。

「……若い、健康で動きやすい体が、欲しいです」

ゼルファは嬉しそうに微笑む。

「うん。良い願いだ。心身を削って働いていた者なら、相応しい。では次に--君に授けるスキルを決めよう」

光のパネルのようなものが空間にいくつも浮かび、スキル名がずらりと並ぶ。

"鑑定" "収納" "魔法適正" "言語理解"……本当にゲームみたいだ。

「そ、そんなにたくさん??」

「君の選択によって未来は変わるからね。遠慮なく選んでいい」

遠慮なく……と言われても。私は苦笑しながら、必要そうなものを慎重に選んだ。

「鑑定、アイテムボックス、言語理解……あと、料理と家事と計算は、出来ればそのまま使えるように--」

そこまで言うと、ゼルファは少し目を丸くした。

「控えめだね。ならば、君には"全属性魔法"を与えよう。それと"健康"と加護もだ」

「え、えええ!?全属性って……チートすぎませんか?」

「善き行いには、相応の報酬を。しかも君は、元の世界で随分と頑張ってきただろう?」

その言葉が、胸に深く刺さった。

「ありがとうございます」

素直にそう言うと、ゼルファは満足そうに頷いた。

「最後に、持ち物も用意しておいた。生きるための最低限だが」

アイテムボックスにお金と、動きやすい簡単な服、本、水袋、カバンが並ぶ。

莉乃は胸に手を当てて、深く頭を下げた。

「本当に……ありがとうございます。ゼルファ様」

「その感謝を忘れずに、これからを生きるといい。運命の女神フェルトゥーナも、君の新しい人生を祝福している」


ゼルファが手を軽く振ると、柔らかな風が吹き抜ける。

「では、行きなさい、黒川莉乃。新たな世界を恐れず歩むといい」

光が視界を覆い、足元がふわりと消えた。

最後に聞こえたのは、柔らかな声だった。

「今度こそ--君自身のために生きるのだよ--」


そして私の意識は、そっと闇に沈んでいった。



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